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2006.11 No.155  発行 2006年11月19日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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10月のニュースから

■ソニー電池から火花、使用者やけど/富士通製パソコン、国内のメーカー初

 富士通は27日、自主回収と無償交換を進めているソニー製リチウムイオン電池を搭載したノートパソコンから火花が出て、使用者がやけどする事故が1件発生したと発表しました。富士通はソニー製電池の不具合が原因と説明しています。

 ソニー製電池を搭載した国内メーカーのパソコンで、発煙・発火事故が明らかになったのは初めてで、国内ではこれまで米デル製が2件、米アップルコンピュータ製が1件と公表されており、今回で4件目となります。けが人が出たのはアップルに次ぎ2件目で、ソニーの中川裕副社長は24日に記者会見し「(電池問題は)これで終わりにしたい」と“安全宣言”をしたばかりで、同社の信頼度低下は必至でしょう。

 事故は24日夜に発生、パソコンの電源を切って充電している途中に、電池部分が異常に過熱しバチバチと火花が上がったものです。このため使用者は火花を消そうとして、手に軽いやけどを負ったといいます。

 富士通は20日から「FMVビブロ・ルークス」と「FMVライフブック」の2機種、約33万8000台を対象に回収・交換の受け付けを始めたばかりですが、今回事故のあった機種はこの2機種のいずれかに当たるとみられています。同社では電池交換を急ぐとともに、電池パックをはずすなど注意して使用するよう呼び掛けました。

 富士通は、ソニーとの共同調査で、電池が事故原因との認識で一致したと発表、詳しい原因は調査中です。
当初は国内メーカーの回収はないようなことをいっていたソニーですが、バッテリー単体での問題とパソコンとの組み合わせによる原因が特定できない段階での発言でした。しかし回収を急がなかった結果このような事故が起きるということでは、同社の技術的な検証力の低さが見えるようです。
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日立「電圧切替式」ドライヤー回収/コンデンサー不良で発煙、発火の恐れ

 日立製作所は23日,九州日立マクセルが2004年11月から2006年9月までに製造した「マイナスイオンドライヤー HD-N1260DU」に不具合があったと発表しました。

 一部製品の電源回路不良が原因で、雑音防止用コンデンサに耐電圧不足品が混入、電源からの高いサージ電圧を受けた場合にコンデンサが破壊し、ハンドル部から発煙、発火に至る可能性があるといいます。

 同社によると、9月下旬までに京都や岩手、島根の三府県でドライヤーの持ち手部分が溶けて穴があくなどの事故が計3件発生したとのことです。このため同社では事故防止の観点から製品の使用中止を要請、対象製品の製品交換を無料で行うことになりました。

 コンデンサーの耐圧不良ということですが、部品メーカーの管理上の問題だけではなく、日立の製造工場での部品受け入れ検査で今まで何も問題がなかったのでしょうか。受け入れ検査標準や抜き取り検査基準が当初から甘かったのではないかなど、いろいろと疑問点が出てきます。大メーカー日立でも品質官理の問題があるということです。

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ジューサー、部品破損で事故/ツインバード工業、無料で交換

 小型家電製品メーカーのツインバード工業は20日、ジューサーのフィルター部品が使用中に破損、破片で利用者が口を切るなどの事故が4件生じたため、2万3215台について23日からフィルターを無料で交換すると発表しました。

 交換の対象製品は2004年10月から2006年5月まで製造した自社ブランドの「KC-4633」の、1万9953台です。またテレビ通販大手のプライムに対し、2004年10月から12月にかけてOEM供給した「PKC-101」も、3262台が対象となります。

 同社のホームページを見ますと、野菜や果物の絞りかすを取り除くフィルターの一部に強度不足のものがあり、亀裂が入るようです。そしてそのまま使用すると、フィルター及びフタが破損してジュースに混入、口の中を傷付ける事故が発生したとのことです。

 製造上の問題でのフィルター強度不足とは考えにくいので、使用頻度の高いお客さんで破損事故が起きたと思われます。したがってフィルターの設計上の問題が大きいと考えられますが、耐久試験などが適正に行われていたのかについても疑問が残ります。

 最近は家電製品・工業製品の事故が多く発生していますが、製造上の問題だけではない設計上の問題も多く、企業の品質システムの根幹に問題があるようで気になります。

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洗濯機の脱水槽への巻き込まれに注意/国民生活センター

 国民生活センターでは、洗濯機の脱水槽への巻き込まれ事故につて10月、利用者に注意を促しました。
同センターに寄せられた巻き込まれ事故は7月中旬に発生、全自動洗濯機を使用中のとき、脱水完了間近にふたを開けて右手を入れたところ、洗濯物が指にからまって右手薬指の第一関節からねじ切られてしまったというものです。

 洗濯機は10年ほど使用していたものでしたが、事故後にメーカー立ち会いの下で検証したところ、ふたを開けても脱水槽がすぐに停止しないことが分かりました。その後のメーカーによる調査の結果、脱水槽に採用されているブレーキ部品の消耗が認められ、洗濯物を入れた状態でふたを開けた場合、ブレーキがかかっても70秒ほど脱水槽が回転し続けることが確認されました。

脱水槽での同種事故に対するメーカーの安全対策として、
1. 動作中はふたにロックがかかり、脱水槽の回転が停止してからロックが解除されるタイプ
2. 動作中にふたを開けた場合に一定時間以内にブレーキ機構等によって脱水槽の回転を停止させるタイプ
があり、これらは脱水槽の運動エネルギーまたは回転速度によってJISに規定されています。

 当該品は一定時間内に脱水槽が停止するタイプで、メーカーに確認したところ、正常であれば社内規定により4秒以内に停止する構造であるとのことでした。

 当該品の全自動機能で洗濯を行った場合、脱水終了時に脱水槽モーターへの通電が切れ(脱水槽は惰性で回転)、その70秒後に終了ブザーと同時に脱水槽にブレーキがかかります。事故品のように脱水槽のブレーキに故障が生じた場合には、ブザーで洗濯が終了したと思ってふたを開けても、脱水槽の回転が止まっていない可能性があるとも考えられます。

 センターでは事故の未然防止のために、脱水槽が完全に停止していることを確認してから作業することを注意しています。

 また市販されている洗濯機には、脱水槽の回転が停止するまでふたがロックされて開けられないタイプと、ロックはなく脱水中にふたを開けた場合に規定時間内に脱水槽が停止するタイプがあります。同センターで平成13年に公表した全自動洗濯機の比較テスト結果では、脱水中にふたを開けることが可能なタイプ4銘柄において、停止までに0.6〜4.8秒を要したといいます。また、当該事故のように脱水槽のブレーキ部に故障が発生している場合でも、特に故障状態であることを示す表示はないため、使用者が目視で確認する必要があります。

 その他の事故として、「脱水中にふたを開け、回転が遅くなったので手を入れたところ、布にからまり右手薬指が第一関節から欠損した」、今回の事例と同様に「早く洗濯を終えようとして脱水を一時停止させ、洗濯物を取り出そうとしたところ洗濯物に巻き込まれて右手薬指を第一関節部分から切断した」など、電気洗濯機での切断事故事例が6件見られることから、ふたを開けた時には脱水槽が完全に停止していることを確認してから作業するなどの注意が必要だとしています。

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E型肝炎、4人が同時感染/北海道、豚内臓食べ発症か

 北海道東部に住む50−70代の男女4人が2−3月、豚やイノシシの体内に存在するE型肝炎ウイルス(HEV)に相次いで感染し発症、1人が重い劇症肝炎で3カ月以上入院していたことが25日、分かりました。患者らは同一飲食店や自宅で十分に加熱していない豚の内臓を食べたとのことです。

 厚生労働省や北海道は「感染経路が特定できていない」として事実を公表せず、地元保健所は養豚場の検査もしていなかったと言うではありませんか。まったく消費者の食の安全を軽視した行政の無頓着さには呆れるばかりです。

 北海道北見市では2004年8月、焼き肉店で豚レバーなどを食べた6人がHEVに感染し、1人が死亡、今回感染した4人からも2004年とほぼ同じウイルスが検出されたことから、解析した専門家は「近隣の養豚場などにウイルスが潜伏し続け、出荷された豚を通じて広がっている可能性がある」と話しています。

 厚労省などによると、劇症肝炎になったのは50代の男性で、2月初めに知人の50代男性とともにホルモン料理店で食事をし、3月初めに発熱、劇症肝炎と診断され、知人も重度の急性肝炎で約1カ月間入院しました。

 同じ料理店では、半月後に食事をした別の50代の男性にも3月下旬に黄疸が現れ、軽度の急性肝炎と診断されています。

 このほか、自宅で豚のレバニラいためやホルモン焼きを食べた70代の女性が3月上旬に重度の急性肝炎と診断されたことも判明しました。

 男性3人と女性との関連は不明ですが、4人の血液からはいずれもHEVを検出も専門家による遺伝子解析の結果、塩基配列が一致しました。このウイルスは2004年に北見市で見つかったものとも塩基配列がほぼ同じで、同一ウイルスが自然変異したと考えられるといいます。

 E型肝炎はここ数年、北海道をはじめ国内各地で豚や野生のイノシシ、シカなどの肉や内臓を食べた人の感染例が散発的に報告されるようになり、輸血による感染も数例明らかになっていますが、厚労省は肉や内臓を食べる際には、十分加熱をするよう呼び掛けています。

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■パロマ側を損害提訴へ/1億5000万円、全国で初めて

 パロマ工業製の瞬間湯沸かし器で相次いだ一酸化炭素中毒(CO)事故をめぐり、愛知県内で発生した死亡事故の遺族が欠陥製品を製造・放置したことが原因で死亡したなどとして、同社を相手に1億5000万円の損害賠償を求める訴訟を週内にも起こすことが15日、関係者の話で分かりました。

 今年7月の事故公表後、パロマ側の責任を追及する訴訟は全国で初めてといいます。

 訴訟の準備を進めているのは、愛知県内で約15年前に死亡した少年(当時17)と少女(同16)のそれぞれの両親です。少年は一人暮らしをしていた賃貸アパートで友人の少女とともに遺体で発見され、愛知県警は2人の死因についてCO中毒と判断しているとのことです。

 アパートの室内には、パロマ工業が1989年に製造した湯沸かし器が設置されていて、遺体発見時には湯が出たままの状態だったといいます。

 遺族側は現場の状況などから「事故はパロマ側が製品の安全管理を怠り、抜本的な対策を講じなかったことが原因」などと主張しています。

 また北海道の弁護団が、12月にはパロマに対する損害賠償請求訴訟を提起することを決めていますので、今後被害者からの訴訟が増えてくることだと思います。

 このような企業リスクは「改造が原因だ」と一方的に決めつけた同社の責任逃れの考えに固執した結果であり、被害者・消費者の安全を確保するために何をしなければならないか、という視点が欠落していたことが招いたものでしょう。

 不必要な発言などで大きな代償を払う企業は多いのですが、当初訴訟のリスク負担まで予期していなかったかも知れません。しかし事故が始めて明るみになったとき、企業の責任者による言動は非常に重要であり、今後起こり得るあらゆるリスクを想定しなければなりません。

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電気ストーブの塗装を規制/健康被害の恐れ、経産省

 経済産業省は17日までに、電気ストーブの塗装面から有害物質が発生し、健康被害につながる恐れがあるとして、ストーブの前面など高温になる部分に塗装を施した製品を販売しないよう、電気用品安全法の技術基準を改正することを決めました。

 電気ストーブをめぐっては、台湾製品を使用中に化学物質過敏症になったとして、都内の男性が販売業者を訴えた訴訟で東京高裁が8月、ストーブから発生した化学物質と健康被害との因果関係を認定しました。経産省はこの結果から、ヒーター部分に近い塗装面が高温となり、ホルムアルデヒドなど有害物質発生の恐れがあることが分かったようです。

 判決を受け、経産省は電気ストーブの実態調査と安全基準見直しに着手、高温になる部分が塗装された国産の電気ストーブはないとみられていますが、同省は今後、新たな規制について世界貿易機関(WTO)加盟国に通知するなど、海外からの輸入品を中心に安全対策を強化することになりました。

 裁判所で健康被害との因果関係が認められたから「有害物質発生の恐れがあることがわかった」とする経産省ですが、そのようなことは素人でもおよそ気になるものです。人の健康被害や安全に対して、同省が適正な仕事をしているのかどうか、少々疑問を感じます。

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エレベーター安全委新設/国交省方針ね保守業者に選定基準

 東京都港区のエレベーター死亡事故を受け、国土交通省は、安全対策を具体化するための「エレベーター安全対策検討委員会(仮称)」を近く新設することを決めました。3つの専門家による作業部会を設け、技術的な安全対策や、建物所有者に必要な情報を伝える仕組みを詰め、年度内に中間まとめをして来年度以降、順次実施するとしています。

 作業部会が検討を予定しているのは、
  1. エレベーターの安全基準新設
  2.  定期検査の実施方法見直し
  3.  建物所有者への情報整備
 の3分野で、うち「情報整備」では、エレベーターを点検できる保守管理業者の検査資格者の人数や交換用部品の在庫数、緊急時に現場に到着できる時間など、建物所有者が保守管理業者を選定する時に判断材料となる基準を作成することになります。また各部品の不具合の修理に必要な基本データがメーカーから所有者や保守管理業者に十分に伝えられない状況を改善し、取扱説明書などに必要な情報が記載されるよう、書式を標準化します。

 月1回程度の保守点検の際、保守管理業者が直した不具合を所有者に伝えないため、年1回の法定点検時に所有者から「不具合ゼロ」と各自治体に報告される現状も改め、不具合の履歴が自治体に報告され国が集約するシステムに変えます。

 安全基準の新設では、専門知識が必要な安全制御装置などは第三者の専門家が審査、認証する制度の創設を検討し、「定期検査の見直し」では、制御盤の中など目に見えない部品の検査手法の確立も目指すとしています。

 新設される委員会は、学識経験者や弁護士、建築物の所有者や維持管理団体、メーカー・保守管理団体、消費者、各自治体の建築関係団体など十数人、作業部会はそれぞれ十人程度で構成する予定で、これとは別に、エレベーターの検査資格者の講習内容の見直しを既存の別の委員会で検討してもらうことになります。

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喫煙者は役員にせず、社内禁煙徹底へ新内規/タクシー大手の日本交通

 タクシー大手の日本交通は幹部社員の登用で、タバコを吸わない人を優遇する社内規 定を導入しました。全2800台のタクシー乗務員に社内禁煙を徹底させるため,役員が模範を示すもので、社長以下11人の現役員は規定導入に従い喫煙者は禁煙することになります。営業所長など37人の幹部社員にも禁煙を奨励、職場から灰皿を外して勤務時間中の喫煙を防ぎますが、禁煙の奨励金や違反した場合の罰則金はありません。

 同社では禁煙で社員の健康状態が改善すれば,乗務員の人手不足や健康保険組合の財政悪化 にも一定の効果があると見ています。

 タクシー内では喫煙であっても、運転手が喫煙していると衣服からタバコの匂いが出てきていやな思いをすることがあるので、タバコを吸わない利用者からは歓迎されることでしょう。

 また、外部に対する評価を狙ったものだけでないのならば、具体的な成果が出ればぜひ公表してもらいたいものです。

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