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2006.9 No.153  発行 2006年9月20日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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8月のニュースから

■小2女児吸い込まれ死亡/埼玉、プールの吸水口

 31日午後1時50分ごろ、埼玉県ふじみ野市大井武蔵野、市営ふじみ野市大井プールで、所沢市立小手指小学校2年の戸丸瑛梨香さんが流水プールの吸水口に吸い込まれました。瑛梨香さんは約4時間後に吸水口から約5メートル奥の吸水管内で見つかり、病院へ搬送されましたたが死亡したものです。

  吸水口はプールの流れを作るため壁面にあり、ボルトで固定されていた格子状のアルミ製ふた(約60センチ四方)2枚のうち1枚が外れ、すき間から吸い込まれたといいます。

 監視員が事故の直前、ふたが外れていることに気付き、吸水口に近づかないよう注意を呼び掛けていましたが事故を防ぐことはできませんでした。

 これが最初のニュースでしたが、その後の展開で、多くのことが分かってきました。
2日、事故が起きたふじみ野市のプールでは、6、7年前から外れたフタを針金で固定するようになったことが判明、女児が吸い込まれた給水口のふた1枚は四隅が全て針金で固定され、確実な固定ではなかったことも分かりました。

 また4日になると、同プールのふたは、ボルトの取り付け穴の位置がふたによって不ぞろいだったことが判明、施行業者が位置を計らずにふたに穴を開けていたことが原因でしたが、掃除などのときにふたが入れ替わったためにボルトが合わなくなり、針金での固定が始まったと見られています。

 施行業者のいい加減な作業は問題ですが、それを検査で確認できなかったふじみ野市も問題でしょう。清掃作業時にふたが合わなくなったときに何をしなければならないか、それはまずその原因を調べることです。それさえ行えば、各々のふたに違った場所の取り付け穴があることが確認できたはずです。

 そして間違い防止のための対策として排水口とふたに同じ数字やアルファベットを表示することなどが自然に思い描かれるものです。

 これら一連の作業に結びつかなかったのは、今自分がクリアしなければならない現実問題の思いしかなかったのでしょう。それは後行程や利用者への安全・品質など全く眼中に無い自己中心的な考え方で、あえて言えばセルフホリックともいうべき“中毒症状”におかされているようです。

 その後10日になると、全国の公立学校や教育委員会所管の公営施設で、吸排水口の安全対策に不備があるプールは2339個所に上ることが判明しています。

 厚労省では今年5月末に、ふたの固定と吸い込み防止金具の「二重の防止策」を徹底するよう通知したばかりですが、実体はそんな通知には目もくれない職員が、身体を動かさない仕事振りを徹底させていただけのようです。

 ふじみ野市事故を受けて文部科学省が実施した学校プールの安全調査で、仙台市教育委員会がプール吸排水口の吸い込み防止金具の有無を調べずに「問題なし」と解答していたことが、16日分かりました。市教委は吸水口のふたの固定だけを確認、防止金具の網については実際には確認せず、1999年の調査などを元に推測、報告したというのですから呆れてしまいます。公務員というのは本当に自分で動こうとしない、そんな人種のようです。

 21日には、富山県の外郭団体が運営する同県国際健康プラザの屋内にある流水プールが、給水口のふたを固定するボルトの一部が抜けていることを知りながら、営業を続けていたことが判明しました。死亡事故が起きて世間の注目を集めている時期に、全く信じがたいことです。

 同プラザによると、7月末のふじみ野市の事故直後に行った自主点検で、ボルトの欠落を確認したものの、強度に問題ないと判断、県にも「ふたはきちんと固定されていた」と報告したというのです。ここでの問題は強度に問題ないという判断が素人により行われたこと、そして虚偽の報告を県に行っていたというものです。
いずれにしても今回の女児死亡事故は明らかな人災であり、事故後も「対岸の火事」程度としか見ていない市町村も多い、ということがよく分かります。望まれる行政品質に照らし合わせて住民が積極的に役所などに意見をいってこなかったところほど、ずさんな対応をしているのではないでしょうか。市民が造る行政、そして政治、ということの必要性を感じます。
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シュレッダーで幼児の指切断2件/経産省注意

 紙を裁断する業務用シュレッダーに2歳の幼児が指を巻き込まれて切断する事故が、今年3月と7月に相次いで発生していたことが分かりました。メーカーから報告を受けた経済産業省は「家庭でシュレッダーを使う機会が増えており、同種事故が続く可能性がある」として、29日に事故を公表するとともに、シュレッダーに幼児を近づけないようにするなどの注意を呼び掛けることを決めました。メーカーは再発防止策を同省に報告、要望がある場合は無償で対応する措置を取ることになります。

 3月の事故は、大手生活用品会社「アイリスオーヤマ」製の業務用シュレッダー「SCA-410D」(高さ約60センチ)で、同10日、静岡市内の女児(2)が、両親が経営する事務所内で、電源が入っていたシュレッダーの紙投入口に誤って指を入れ、両手の指を9本切断したものです。

 シュレッダーはA4用紙約10枚の処理が可能で、1度に処理できる枚数を増やすため、紙投入口の幅が約8ミリもあり、事故後、同社は紙投入口を約3ミリに縮小していました。

 一方、7月の事故は、「カール事務器」社製の同「DS-4000」(高さ55センチ)で、同15日、東京都板橋区の自宅で、男児(2)の左手が同様に、シュレッダーに巻き込まれ、指を2本切断したものです。

 このシュレッダーはA4用紙4枚を裁断できるもので、紙投入口の幅は4〜4.5ミリでしたが、今後2.5〜3ミリに狭くするとしています。

 これが報道での最初のニュースでしたが、その後相次ぐ事故報告に国民はあぜんとしたことでしょう。
特にアイリスオーヤマ社長が行った23日の会見で、事故報告が遅れたことについて飛び出た言葉に、「まれな事故との認識だった」というのがありました。

 しかし企業としては、家庭内もしくは同様の環境で使われる製品で、幼児がいることは十分予測できなければなりません。また8ミリの開口部であれば指がくわえられて切断、ということも予測できることです。

 電気製品には各国の安全規格があり、それぞれの国で「テストフィンガー」と呼ばれる試験具があります。国によって先端の細さは異なりますが、同社はこれらの規格を考慮していなかったのかもしれません。園芸用の各種製品が多く目に付く同社ですが、電気製品に関する安全対策が適正に行われていたのか疑問が生じます。

 カナダの安全規格では先端がとても細いテストフィンガーが要求されていますが、幼児などの柔らかい指が押されて、あるいは引き込まれて機器内部に入り危険な状態となることを考えると、妥当な規格だと思います。

 もちろん実際の指のようなソフトフィンガーでの客観的基準で評価されることが一番だとは思いますが…。
また男性のネクタイが開口部に入り引き込まれて危ない思いをした人もいるようです。

 これもネックレスが製品内に入り感電の危険がないかを考慮する安全規格があります。それら各国の安全規格を参考にして、日常生活上起こり得る危険要素を考えれば今回の事故は起きなかったと思われます。
このことからも、各企業は今回の事故が明らかなPL事故として、ことの重大さを認識してもらいたいものです。

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シュレッダーや湯沸かし器事故、メーカーに報告義務/対処製品幅広く、経産省方針

 シュレッダーで子どもが指を切断する事故が相次いでいる問題を巡り、経済産業省の北畑隆生事務次官は24日の記者会見で、従来メーカーの任意で行われている事故報告を義務化する方針を明らかにしました。ガス湯沸かし器の一酸化炭素中毒事故も踏まえ、電気・ガス製品など幅広い分野が対象になる見通しです。

 経産省は電気製品による事故は発生から1週間以内に報告するよう指導していますが、強制力がなく、シュレッダー事故ではほとんど報告がありませんでした。ガス用品でもメーカーからの報告は義務化されてなく、パロマ工業製ガス湯沸かし器事故の情報把握が不十分でした。

 このため経産省は事故情報を早期に把握し、被害拡大を防ぐ態勢を整備する必要があると判断、事故報告を法的に義務づける制度を検討することにしました。

 今回の一連の事故を受けての対応ですが、まずは歓迎できると思います。義務が無いから報告をしない、という企業がまだまだ多い現状、少しは期待できるかもしれません。

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12品目で安全対策徹底/パロマ事故受け、経産省

 経済産業省は28日、パロマ工業製のガス瞬間湯沸かし器など生活に身近な製品による重大事故が相次いでいることを受け、シュレッダーや電気床暖房気など安全対策が必要な12品目を公表しました。

 具体的な製品を挙げて安全対策の徹底を促すのが狙いで、事故情報の収集・分析の遅れが被害拡大につながった反省から、製品の事故情報の報告をメーカーに義務付けるための法改正の準備も始めるとしています。
経産省はパロマ製ガス湯沸かし器事故について約20年前から把握していたものの、情報が複数の部署にまたがっていたことなどから対策が遅れ、被害が広がったとし、二階経産相が「第二のパロマが無いか総点検が必要」と判断、7月から過去10〜20年分の事故情報約4000件を再点検し、事故の類似性などを分析し直しました。

 同省は重大事故が相次いでいる製品として子供の指切断事故があったシュレッダーや、ソニー製品で火災事故が起きたリチウムイオン電池のほか、業務用蒸し器、業務用フライヤー、業務用エアコン、ガスコンロ、電気床暖房機、太陽光発電システム接続箱、インターネットモデム、ガス風呂釜、ガス器具の排気間の設備不良等、浴室換気乾燥暖房機の12品目を挙げました。

 床暖房は2004年に部屋のフローリングが焦げる事故が発生、業務用蒸し器とフライヤーでは換気不十分のために中毒・死亡事故が発生、ガス風呂釜では一酸化炭素中毒事故が21年間で109件、89人が死亡しています。

 企業ではライフサイクルの短い製品開発がのため、販売後の製品の安全確保に余裕がないとも言われることがありますが、回収の公告を出すことがデメリットだけだと思いこんでいるのかも知れません。企業の損得で消費者・顧客の安全が脅かされて良いはずはなく、速やかな回収情報の提供こそが、企業の信頼を得るものだというメリット意識を持たなければならず、それが時代の要請だと思います。

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清涼飲料に発がん物質、基準の7倍/厚労省DHCに回収要請

 厚生労働省は28日、食品添加物の安息香酸(保存料)とアスコルビン酸(酸味料)の2つが含まれている清涼飲料水「アロエベラ」から、世界保険機構(WHO)が定める基準の約7倍の発がん性物質ベンゼンを検出したと発表しました。

 同省は27日、アロエベラを販売するディーエイチシー(DHC)に分析結果を通知して自主回収を要請しました。

 今春以降、英米などで清涼飲料水中の安息香酸とアスコルビン酸が反応してベンゼンが生成されることが分かり、WHOの飲料水基準(10ppb)を越える製品の自主回収が行われました。このため同省は国内で販売されている清涼飲料水中、安息香酸とアスコルビン酸が含まれている31製品を検査、アロエベラからベンゼン73.6ppbを検出したとのことです。

 厚労省の規制以前に企業が情報を収集・対策をとるのが一般ですが、他の30製品は基準以下だったということから、同社だけに問題があったと思わざるを得ません。宣伝で良く目にする同社ですが、同社の品質・顧客満足度のレベルはかなり低いように思います。

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■病院情報、医師略歴や体制を都道府県HPに/来春から、厚労省

 安心、信頼できる病院選びに役立ててもらおうと、厚生労働省は21日までに、全国のすべての病院や診療所(約17万5000施設)の診療内容や医師の略歴、医療体制などの情報を都道府県のホームページ(HP)に掲載させる方針を決めました。

 9月にも有識者による検討会を設け、具体的な情報の範囲を絞り込んだ上で来春から段階的に実施するとしています。

 来年4月施行の改正医療法は、患者が適切に病院を選ぶのに必要な情報を、医療機関が都道府県に報告し、都道府県が内容を公表するよう義務付けています。

 しかし自治体のHPに掲載されることで、医療機関の比較、選択が容易になりますが、医療事故の件数などについては方針が定まっておらず「不利な内容も教えてほしい」との患者側のニーズがどこまで満たされるかは未知数です。

 どの程度の情報が公開されるのかは不明ですが、高度医療における特定医師の手術件数が紹介されれば参考にはできそうです。それでも助手としての執刀だったのか、などの情報が出てくるかは不明で、当面は病院・医師の当たり障りのない、デメリット情報の無いものになりそうです。

 患者が何を基準に病院を選んでいるのか、そのような患者側のニーズをつかんでの情報公開ではないので、あまり期待できないかもしれません。

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喫煙率、18府県で数値目標/厚労省調査

 たばこを吸う人の割合(喫煙率)をどの程度減らすかについて、国に先行して具体的な数値目標を設定している都道府県が、4月1日現在で18府県あることが18日、厚生労働省の調査で分かりました。

 同省は2000年策定の長期計画「健康日本21」に、成人の喫煙率半減の目標を盛り込もうとしましたが、業界などの反対で見送った経緯があります。自治体を参考に今後数値目標を導入したい考えで、現在有識者による作業チームを設置し、「やめたい人が全員やめた場合」など3案を中心に検討を進めています。

 同省が都道府県の数値目標導入状況を調べたのは初めてで、18府県のほか13都道府県は、数値を掲げずに「減少」などを目標としていたものです。また全く設定していない県は16ありました。

 新潟県は、成人の喫煙率について、2010年までの実行計画で「男性39%、女性5%」を目標としています。この数値は2004年調査で男性43.4%、女性8.2%の喫煙率に対し、禁煙希望者が指導で成功した人の割合(約2割)から算出したといいます。

 茨城県は、2012年までの目標を定めた「総合がん対策推進計画」で「本数を減らしたい、やめたいという人全員が禁煙に成功した場合」を仮定し、男性を03年度の53.8%から20%へ、女性は10.6%から3%にする、としています。

 一方、北海道は「男女とも全国平均以下」、福島は「半減をスローガンに大幅減少」など、具体的数値を掲げず喫煙率の目標を設定しています。

 2004年国民健康・栄養調査によると、日本の喫煙率は男性43.3%、女性12.0%で、厚労省の有識者チームの3案は「やめたい人で、たばこ依存症でない人がやめた場合」の「男性38.4%、女性10.2%」のほか、「やめたい人が全員やめた場合」の「男性32.6%、女性8.1%」や、「1997年の喫煙率の半分」の「男性26,4%、女性5.8%」となっています。

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屋外での禁煙求め、「子どもの近く、外でも禁煙を」/小児科学会などがロゴマーク作製

 子どもに受動喫煙させないために大人はもっと気を配るべきだと、日本小児科学会など3学会は、合同で注意を促すロゴマークを作製し、近くに子どもがいるときは屋外でもたばこを吸わないよう求め、子ども連れの家族はレストランや鉄道の喫煙席を利用しないよう警告に乗り出すことになりました。

 受動喫煙で子どもは、ぜんそく、アトピー性皮膚炎などになりやすいほか、発育に支障が出たり、成人後に肺がんの危険が高まるとしているためで、ロゴマークを作製したのは日本小児科学会のほか、日本小児科医会、日本小児保健協会でつくる「子どもをタバコの害から守る」合同委員会です。



 あわせて「子どもは歩く禁煙マーク」という標語も考案、ロゴマークと標語の入ったポスターやステッカーを作製し、全国で配布する計画です。

 (社)日本小児保険協会のホームページでも22日、日本小児科連絡協議会および子どもをタバコの害から守る合同委員会名で、このマークの普及についてのお願いが掲載されました。

 また「子どもは歩く禁煙マーク!」との考えから、小児科および小児保健関係の機関誌や出版物やパンフレットにこのマークを掲示、こどもを受動喫煙から守る社会の形成に寄与したいとの考えを示しています。
ロゴマークは、標語付きのもの、マークだけのもの、マークに日本小児科学会、日本小児科医会、日本小児保健協会の3団体名を付したものなどを紹介、幅広い活用を促しています。

 無防備で自ら避けることのできない乳児・幼児に対する配慮として、社会が取るべき責任を喫煙者に感じさせる良い取り組みなので、関係各所にこのマークを積極的に利用してもらいたいものです。

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