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2006.5 No.149  発行 2006年5月16日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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4月のニュースから

■クボタ、企業初の救済金/石綿被害で住民に最高4600万円

 大手機械メーカー、クボタは17日、アスベスト(石綿)による健康被害を受けた兵庫県尼崎市の旧神崎工場周辺住民らに、労災認定された社員並の補償となる最高4600万円の救済金を支払う独自の制度をつくったと発表しました。 住民の石綿被害について企業が独自に補償制度をつくったのは初めてとみられ、被害を受けた住民は一定の評価をしているといいます。

 クボタは因果関係を明確には認めていませんが、「工場から石綿が飛散しなかったとは言い切れず、住民に影響をおよぼした可能性は否定できない」と、柔軟な考えを示しています。

 多くの企業の場合、決定的な証拠が無ければ住民の被害を考慮しないのが当たり前と考え、それが企業の取るべき“道”だと思い込んでいるところがあります。一方、住民あるいは一般国民は「この地域で中皮腫などのがん発生率が異常に高いのは何らかの原因があり、石綿を製造していた○○工場が疑わしい」と考えるのが普通なのです。

 今回のクボタの対応は住民の「被害救済」という、企業の枠を越えて人道的な配慮に踏み込んだことで画期的なことです。そもそも一連の石綿被害について真っ先に自社の責任を認めた同社の、基本的なポリシーの延長線上にあるもののようです。

 記者会見した福田俊弘専務は「道義的責任がある。社会的責任も感じている」と述べていることから、今後長引く訴訟をさけることと企業イメージの低下を懸念するという思惑もあるとは思いますが、なかなかできないことです。

 対象者は神崎工場で石綿を扱っていた1954年から95年に、工場の1キロ以内で1年以上住むか職場や学校に通勤、通学していた人で、仕事で石綿を取り扱った経験がなく、石綿健康被害救済新法で被害者と認定された患者とその遺族であることを条件としています 。

 救済金は最低で2500万円で、クボタは3月末現在で対象者として把握しているのは88人、支払い総額の見通しは32億1700万円としています。

 支払い対象の「工場から1キロ未満」との条件については、幡掛社長は5月に入り「石綿の飛散する距離が1キロ以内というわけではない」と指摘。1キロ以遠の患者は対象外-とするのではなく、「患者会などとつくる救済金運営協議会で別途協議し、精査して対応する」と述べています。科学的な根拠を考慮した賢明な発言で、これも評価したいと思います。

 石綿被害については企業に責任を問う声が大きいですが、本来は世界保健機関や国際労働機関などで石綿の発がん性が指摘され、政府部内でも危険性の認識があったにも関わらず、使用禁止の規制を取らず長年放置した政府の責任が一番重いもので、今回のクボタの責任ある対応から逆に長期政権・自民党の不手際が際だって見えてくるようです。

 さてクボタのニュースに影響されてか、5月に入るとすぐにニチアスも救済金を支払うことを発表し、被害者救済の輪が広がってきました。ただクボタやニチアスなど大手企業以外の企業が同じような対応が取れるとは限りません。

 被害住民が救済されないことの無いよう、国の責任において対処すべきですが、3月に施行された石綿健康被害救済新法では救済給付の水準が労災適用のケースと比べ低いことに不満が集まっているといいます。

 このような状況下、5月15日のニュースですが、大阪の住民らが国家賠償を求めて集団提訴へ動き出しました。もっともなことですが、過去の多くの事件でも国が賠償に応ずることはごくまれで、メンツというか被害者救済の視点が欠けるような裁判の長期化を展開することが多いので、今後の動向が注目されます。同じような集団訴訟が全国で頻発し、世論の圧力が味方になるような状況を期待したいと思います。


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リーボック景品2600個を自主回収/米で誤飲、中毒死を受け

 米国で子供靴の景品に配ったブレスレットを4歳児が誤飲し、鉛中毒で死亡したとして、リーボックジャパンは4日、国内で配布した景品約2600個の自主回収を始めたと発表しました。

  ブレスレットは全国で販売された同社製の子供靴「エマ・ラインストーン」と「クラシックレザー・ラインストーン」の2種類に添付されていたものです。金属製で、ハート型の飾りに「Reebok」と刻まれています。
今年のASPニュース3月号で取り上げましたが、東京都の調査で安価な金属アクセサリー類に有害な鉛が含まれていることが分かっています。都では経産省と厚労省にアクセサリー製造業者に鉛をを含有させず、含有している場合は警告表示をさせるよう緊急の提案をしていました。

 その後、厚労省の調査として、スーパーなどで市販されている金属製アクセサリー類の約半数に高濃度の鉛が含まれていることが29日までに分かったと発表されました。米国では誤飲事故があったこともあり、2005年に消費者製品安全委員会(CPSC)が鉛の含有量の基準値を設定しましたが、我が国では規準値が無いため野放し状態となっています。

 今回規準値のある米国でも死亡事故が起きたことから、最低限の規制として規準値設定が求められるところですが、厚労省などは危機感があまりないのか、5月中に専門家による検討会を設置、規準値設定の必要性を議論するとしています。

 本来は「これから必要性の議論」ではなく、「規準値設定のための法改正に動き出す」という、迅速な対応が必要だと思います。

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トランポリン遊びで首骨折/名古屋市内の遊戯施設

 名古屋市内の民間遊戯施設で、遊具用のトランポリンで遊んでいた男子専門学校生(19)が宙返りに失敗して首の骨を折り、全身麻痺になる重傷事故が起きていたことが分かりました。

 施設側はこの遊具の監督者を置いていませんでしたが、愛知県警は安全管理に問題はなかったとして、業務上過失傷害容疑での立件は見送りました。しかし学生の代理人弁護士は遊戯施設やメーカー側に事故防止対策の徹底を求めています。

 事故は昨年5月6日未明に起き、友人ら3人と遊戯中の男性が、前方宙返りをしようとして頭から落ち、頚椎骨折などの重傷を負ったものです。

 遊具は、競技用のトランポリンとほぼ同じ構造で、ベッド部分は4メートル四方、安全のために反発力は抑えられていて、製造会社は「小中学生が40から50センチ程度飛び跳ねて遊べるように設計した」と話しています。
  同施設は昨年3月のオープン時からこの遊具を設置、「利用は必ず1人ずつ」「回転などのアクロバット行為は禁止」など、事故防止の注意書きを掲示していましたが、遊具専門のスタッフはいませんでした。

 日本トランポリン協会によると、競技用トランポリンは使用時に有資格の指導者や補助者が必要だと話しています。しかし遊具用のトランポリンは設置や管理について公的な規制がなく、各製造会社と設置者の判断に委ねられているのが現状だといいます。

 同協会事務局では「トランポリンは経験者でも死亡事故が起こり得る。競技用とほとんど変わらない遊具を自由に設置、利用できてしまうのは問題で、何らかの規制が必要では」と話しています。

 今回の施設では注意書き掲示がありましたが、監督者がいなければ遊びに夢中になって危険な行為をする者が出てくることは容易に想像できます。掲示があれば管理責任を追求されることはない、とでも思っていたかもしれませんが、「一般に、事故が容易に想像できる」といった状況では、企業リスクは非常に高いものです。経済性優先で人件費を削減、その結果客の安全を軽視していた同施設の責任は、厳しく問われなければなりません。

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肉密輸で鳥インフルエンザ拡大/米紙伝える

 15日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、高病原性の鳥インフルエンザ(H5N1型)が世界規模で感染拡大している一因として、関税を免れるため鳥肉が盛んに密輸されている実態があると伝えました。
アジアから欧州、アフリカへと急拡大する鳥インフルエンザ感染については主に渡り鳥によるウイルス運搬説が指摘されてきましたが、人為的な活動が感染拡大に拍車をかけている可能性が新たに浮上したことになります。

 同紙によると、H5N1型のウイルスは加熱調理によって死滅するものの、生きた家禽(かきん)類や冷凍鳥肉、羽毛、骨、鳥かごに寄生、付着するなどして生き残るといいます。

 米カンザス州立大の専門家ティモシー・ムーア氏によると、家禽など動物の密輸は麻薬に次いで盛んで「鳥インフルエンザの感染拡大に大きな役割を果たすことは疑いない」と話しています。

 もともと人に感染しやすい鶏との接触関係はアジアの人がを作り上げてきたもので、それに加え大量にケージで飼育する不健康な鶏、そして今回の密輸という人間の営みが関与する要因の大きさを考えると、鶏インフルエンザの拡大は人災と言わなければならないかも知れません。

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■粉じん作業の防除マスク、付け方悪く効果少ない/研究者が指摘

 溶接や石材加工など粉じんの多い現場では、作業員が防じんマスクをしていますが、粉じんがマスク内に入り込む割合が約24%に達し、じん肺の発症予防に役立っていない恐れがあるとの研究結果を、岡山労災病院の岸本卓巳副院長と岡山産業保健推進センターが10日までにまとめました。作業員がマスクをきちんと着用していないことが原因とみられています。

 岸本副院長は「きちんとマスクを着けたと思っても、見た目と現実のギャップは大きい。アスベストでも同様の恐れがある」としていて、本年度から建物解体などアスベストを扱う作業員のマスク漏れについても調べることにしています。

 2003年、岡山県の造船溶接、石材加工などの現場で働く178人に対してマスク着用の有無を調査、着用者には普段使っているマスクを付けてもらい、マスクの内側と外側の粒子個数を比較できる測定機器を用いて漏れ率を測定したものです。

 その結果、95%がマスクを着用していたものの、着用者の漏れ率は24.3%に達し、マスクが有効と考えられる「漏れ率10%未満」を達成したのはマスク着用者の34%にとどまりました。漏れ率は石材加工で40.5%、造船溶接業が39.6%と高い結果となりました。

 しかし成績が良くなかった会社の17人を対象に「マスクのひもを強く締める」「顔の大きさに合ったマスクを選ぶ」「フィルター交換する」などの指導を行った結果、漏れ率は5.8%に低下したといいます。
 このことから単にマスクを着ければ良いのではなく、きちんとした装着方法が安全対策には欠かせない、との認識を現場の作業者自身がしっかりと認識しなければなりません。

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違反自転車の摘発強化/酒酔いや信号無視、交通切符を積極活用

 自転車の事故が増えてマナーも悪化しているとして、警察庁は13日、悪質な違反者については、刑事処分につながる交通切符(赤切符)で積極的に摘発するよう各都道府県の警察本部に促すことを決め、同日中に通達を出すことにしました。

  同庁によると、歩行者や車と衝突するなど、自転車の絡んだ事故は昨年1年間で約18万件に上り、10年前の1.3倍。自転車の利用者が死傷した事故では、7割の死傷者が一時停止をしなかったり、信号無視をするなどの違反をしていたといいます。

 一方、昨年1年間で自転車など軽車両を赤切符で摘発したのは約330件で、多くの違反者には安全教育の一環として「指導警告票」を手渡し、注意を促す措置にとどまっていました。
 指導警告票は昨年、約112万件を交付。このうち約10万件は「通行者に危険を及ぼす違反」に対してだったといいます。

 今後は、信号無視や酒酔い運転などで歩行者や通行車両に危険を与えたケースや、警告に従わず違反を繰り返した場合などは、赤切符による積極的な摘発に乗り出します。

 各警察本部には、こうした取り締まり強化や背景を、地元の検察庁や家庭裁判所にも説明し連携を図るよう求めるとしています。従来は送検しても不起訴となるケースが多かったため、実効性を高めることも狙いのようです。

 警察庁は「自転車であっても、法律に従わなければ摘発されると周知を図っていきたい」としており、5月の「自転車月間」には重点的な取り締まりを展開する方針でいます。

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風力発電と鳥、共存は?/渡り鳥の衝突事故相次ぐ

 海岸線や山の稜線沿いで発電用の風車が増えてきました。自然エネルギーの代表で、今後も各地に増えていくことになり、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によると、風力発電の国内総出力は約93万キロワット(2005年)で、国は2010年までに300万キロワットという目標を掲げて導入を推進しています。
しかしここにきて渡り鳥や希少種の鳥が風車に衝突する「バードストライク」が問題視されるようになってきました。


 北海道では国の天然記念物のオジロワシ4羽が衝突死したほか、長崎県や神奈川県ではセグロカモメやトビ、ミサゴなどの衝突例があるといいます。また山間地ではワシタカ類などの渡り鳥が利用する「風の通り道」が、風車の設置場所と重なる可能性が高く、今後新設される風車では慎重な調査と配慮が求められています。
北海道では今春、風車の夜間照明で危険を知らせる試みがスタートしましたが、風車を運営する「ユーラスエナジージャパン」によると、競技場に使われる強烈な光で、野鳥が風車を避けることを狙ったといいます。昨年11月の運転開始後、付近でヨタカとルリビタキの死骸を確認、「けがの状況から風車の羽根に衝突した可能性が高い」との判断から今回の実施に至ったものです。

 長野県では50キロワット以上の風力発電について対応方針を固め、渡りルートや希少猛禽類に影響があり得る地域を、景観上重要な地域などと併せて地図化し、事前に建設が困難な地域を指定し、計画段階で避けてもらうことにする予定です。また住民意見を反映する手続きを定め、環境影響評価条例の対象にすることも考えています。

 環境省も「鳥に与える影響を具体的に確認したい」と、今年になってエネルギーや鳥獣保護の専門家らを集めて対策検討会を発足させました。

 人の住んでいる住宅や大形施設などのガラスに鳥が衝突死する事故は今までもありましたが、鳥にとっては安全であるべき自然の中での風車の危険性は認識しづらいこともあります。環境問題に積極的に対応する施設で「自然に優しくない」というのでは困ります。人間が知恵を出して自然に協力してもらいたいものです。

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家電製品の電気代を店頭表示/経産省が基準策定

 経済産業省は、家電製品の省エネルギー性能を評価する統一基準を策定、店頭での表示用に今秋から導入することにしました。第一弾はテレビ、エアコン、冷蔵かが対象で、商品ごとに年間にかかる電気代を示すほか、5段階で「省エネ度」の格付けも出す方針です。
消 費者に分かりやすい形で省エネ効果を示し、低消費電力型の製品の購入を促進、家庭でのエネルギー消費を抑制する狙いがあります。

 電気代などの情報は計算省がデータベース化し、小売店はインターネットを通じてこのデータベースに接続、品目名を入力することで店頭表示用のラベルを印刷できるとしています。

 電気代は経産省の統一基準で計算、たとえばエアコンでは、冷暖房を1日18時間、年9.1カ月使用する場合を基準に年間の電気代を算出します。中型エアコンであれば年間電気代は安いもので約1万9000円、高いもので約2万7000円と約8000円の差が付く見通しだといいます。

 テレビ、冷蔵庫、エアコンの3品目は家庭での電力消費量の半分程度を占めているますが、経産省は来春には照明器具を対象に追加するとしています。

 これまで一部自治体や大手家電量販店などが独自の省エネ表示制度を導入してきましたが、基準はばらばらで消費者の選択基準にはなかなかならなかったこともあります。今回の制度により、商品の本当の実力で勝負できることになり、メーカーとしても一層の努力のし甲斐があるというものでしょう。

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