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2006.3 No.147  発行 2006年3月16日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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2月のニュースから

■JR西、1200両でブレーキ不具合/報告を放置、11年間も営業運転

 JR西日本は20日、国鉄時代に作られた車輌で通常のブレーキが故障して手動の予備ブレーキに切り替えた場合、速度超過しても列車自動停止装置(ATS)が作動しない不具合が見つかったと発表しました。

 不具合がある車輌は、運転台のある約2700両のうち約1200両に上るといいます。1994年末にブレーキの電気回路を変更した際の設計ミスが原因だということですが、同社は約11年間も気付かないまま営業運転をしていたことになります。

 しかも車輌点検の担当社員が2年前に回路図をチェックしていて設計ミスに気付き上司に報告したものの、情報が滞り対策は取られなかったものです。

 この社員は昨年末の尼崎脱線事故を受けて始まった職場の安全ミーティングであらためて報告、ようやく会社側は不具合を把握したといいます。同社社員には安全意識の高いプロもいることを知りホッとしますが、同社では不具合を見過ごした理由を「通常ブレーキが故障したまま運転を続けるケースが少なかったため」と説明しています。これでは実際に事故や問題が生じなければ不具合を把握できない、ということでもあり、回路図上で明らかな不具合報告を吸い上げることが出来なかった理由にはなっていません。

 このことはまた<回路図のシミュレーションで動作確認・検証を行っていない可能性を示唆します。同社にはミスを防ぐためのマネージメントが根付いていないようなので、なるべくならJR西日本は利用したくないです。


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輸入ボルト3万8000本交換/旧公団、コスト削って強度不足

 3月開通予定の紀勢自動車道勢和多気ジャンクションと大宮大台インターチェンジ間のガードレール部品の強度が不足し、中日本高速道路会社が交換作業を急いでいることが分かりました。

 問題が見つかったのはボルト約3万8000本とインター部分のレール約450メートル分で、経費削減のため旧道路公団時代に独自に調達していた中国製品でした。強度はボルトで規定の75%、レールで90%しなかったといいます。ボルトの大部分はすでに取り付けが済んでおり、施工業者が日本製の部品と交換しています。
納入したのは東京にある中国系商社で、昨年7月の一般競争入札で、予定価格の66%の安値で落札したものです。商社は基準となる日本工業規格の強度を満たすと説明していましたが、道路会社に1月下旬「不良がある」との情報があり、問題が発覚したものです。

 コストダウンが裏目に出たようですが、部品の強度試験のデータなどを提出させることなどしなかったのでしょうか。客観的な情報を得ないで相手の説明を鵜呑みにした旧公団のいい加減な仕事が分かります。

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スライドドア、目立つ事故/衝撃力はヒンジ式の2倍

 家庭向けのミニバンなどにも多く採用されているスライドドアですが、狭い場所でも乗り降りがしやすく人気がある一方、子どもが挟まれてけがをする事故も目立っています。国民生活センターの調べでは、ドアを閉めたときの衝撃力が、外側に開ける普通のドア(ヒンジ式)より強く、けがが重症化しやすいといいます。
同センターに全国20の協力病院から寄せられた受診情報によると、2000年4月−2005年10月の間に、自動車のドアに身体を挟んだ事故は755件あり、うちスライドドアによる事故が40件ありました。

 40件を形態別にみると、手指を挟まれる事故が最も多く77.5%。年齢別だと、10歳未満の子どもの事故が過半数を占めた。「息子が手を置いていたのに気づいたが、止める間もなく指を挟んでしまった」など痛ましいケースも多い。ほかに、他人の閉めたドアに頭を挟まれた事例もあるといいます。

 スライドドアによる事故に顕著なのは、けがの重症化で、骨折が15%(全体では9.7%)、治療に一週間以上かかるケースも33.3%(同27.7%)にのぼりました。

 同センターは昨年8−11月、スライドドア仕様のミニバンやコンパクトカーなど国内6社の14種を対象に、ドアの衝撃力などのテストを実施、その結果、手で普通に閉めたときの衝撃力は92−231キログラム重で、これはヒンジ式ドアの56−95キログラム重の2倍以上にもなりました。

 一昨年、六本木ヒルズの回転ドアに子どもが挟まれ死亡した事故を機に結成されたドアプロジェクトの調査では、子どもで100キログラム重、大人で200キログラム重の力が加わると頭が破壊されることが分かったことから、同センターでは、スライドドアによる事例も「重篤な事故を引き起こす危険があった」と分析しています。

 ドア事故の原因は、保護者らの単純な不注意が多いのですが、坂道でドアを開けようとし、重さに耐えきれず手を離してしまい、勢いよく閉まってけがをした、電動スライドドアに付いた挟み込み防止装置が、挟まれ方によってはセンサーが反応せず作動しなかった−といったケースもあります。

 確かにスライドドア下部で脚が斜めに挟まったときには、安全装置が作動しなかった経験があります。どのような挟まれ方で作動するのか、取扱説明書などに記載してもらいたいものです。エアバッグが作動しない、誤作動する、といったことからも分かるように、メーカー側では特定の条件下での安全装置を設けているのですから…。
メーカー側は「テスト結果を真摯に受け止め、より安全確保に努めたい」(トヨタ自動車広報部)などとしています。

 NPO法人・子どもの危険回避研究所(東京都)の横矢真理所長は「車にはドアだけでなく、パワーウインドーなどいろいろな危険があり、車高の高い車は特に、子どもの乗り降りが運転席から見えにくい」と指摘しています。チャイルドシートに子どもを座らせてからドアを閉めるべきだとし、また危険だと思った点はメーカーに伝えるよう勧めています。

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原発データ不正の東芝、柏崎も改ざん? /保安院が注意、立ち入り

 東京電力福島第一原発6号機に流量計を納入する際に東芝が試験データを改ざんした問題で同社は10日、東電柏崎刈羽原発7号機の流量計でも同様の不正があった可能性が高いと発表しました。

 東芝は最初の改ざんが発覚した後、他の流量計では不正はないと東電に報告していましたが、経済産業省原子力安全・保安院は同日、東電と東芝に厳重注意、調査が不十分だとして事実調査のため流量計を製造、試験した東芝京浜事業所を任意で立ち入り調査をしました。電気事業法などに基づき両社に経緯の報告を、東芝製流量計を原発で使っている東北電力には安全性の評価結果の報告をそれぞれ指示、福島県も同日、東電に再調査を依頼しましたた。

 記者会見した東芝の並木正夫上席常務は「重大に受け止めている。原子力に対する信頼を傷つけ申し訳ない」と陳謝、また東電では「運転中のデータに基づき評価し直したが、安全上に問題はない」と話しています。
新たに改ざんが疑われているのは、1994年に納入した冷却水の復水系と給水系の流量計3台の試験データで、東芝によると、試験記録を一覧表に入力したとみられる当時の電子ファイルがコンピューターに保存されているのを9日に発見、東電の要求に合うよう数値を改ざんした形跡を確認したといいます。福島第一の数値を改ざんした試験責任者と担当者を含む3人がかかわったとみられるが、社内調査では3人とも「(改ざんしたのか)分からない。覚えていない」と話したといいます。

 この電子ファイルは、福島第一の改ざんを受けた社内調査では見つからず、コンピューターのファイルを整理していた担当者が偶然見つけたと言います。

 改ざんした当時のファイルを見つけるのがそれほど大変だとは思われず、聞き取り中心の社内調査を行った結果、全ての関連データを検索・チェックすることはしなかったのかも知れません。福島第一で不正があった事実に対し、同社の社内調査は手ぬるいようです。

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■スプレー缶にガス排出装置/事故防止のため業界と自治体が合意

 環境省は10日、使用済みスプレー缶による火災事故防止策として、殺虫剤やヘアスプレーメーカーなどの業界団体が、来年4月までに残留ガスなどの中身を完全に排出できる装置を備え付けたスプレー缶の販売を始めることで自治体と合意したと発表しました。

 自治体は住民に対し、ごみ出しの際に排出装置を使ってガスを出し切るように周知徹底を図ることになります。

 消費者が中身の残ったスプレー缶に穴を開けた際に発火したり、ごみ収集車の収集室でガス漏れによる火災が起きるなどのケースが、東京都内だけで年間200件近くに上るなど社会問題化していることへの対応です。

 メーカーでは
 1. 噴射ボタンを押した状態に固定できるキャップを装着
 2. コインを噴射ボタンわきの溝に差し込むとロックされて最後まで使い切れる
 などの仕組みで残留ガスを完全に排出するスプレー缶にして販売することになります。業界ではヘアスプレーや制汗剤などの化粧品、塗料、芳香剤などは来年4月時点でほぼ100%の導入を目指すとしています
既にこのような装置を付けて販売しているメーカーもあるようですが、今後の普及が期待されます。

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アンパンマンの歯車回収/バンダイ、誤飲の恐れで

 バンダイは20日、玩具「アンパンマンくるくるはぐるま」シリーズの主要部品である歯車のふたが外れやすく、中の小さな部品がこぼれ子供が誤ってのみ込む恐れがあることから、回収して交換すると発表しました。
対象の商品は、直径約5センチの歯車を転がして遊ぶ、2005年9月に発売した同シリーズの「ゆびあそびボード」「ジグザグスロープ」と、同12月発売の「ループワールド」で、これまでに3万4650個を出荷しています。

 歯車のふたが衝撃で外れ、中に入っている直径約3−5ミリのビーズなどがこぼれ落ち、子供が誤ってのみ込んだとの指摘が消費者からあったための対応です。

 歯車を料金受取人払いでバンダイに送ると、強度を上げた歯車が返送されます。問い合わせはフリーダイヤル、(0120)487251。

 3月に入り、東京都が行った安価な金属アクセサリー類に有害な鉛が含まれていることが分かりました。都によると、昨年2月に米国の政府機関「消費者製品安全委員会」(CPSC)の調査で、ネックレスなど子供用の金属製アクセサリーの一部に高濃度の鉛が含有されていることが判明、これを受けて100−1000円の安価で中国など海外から輸入されたピアスやブレスレットなど76点を調査したものです。

 子供の誤飲を想定した予防安全の考え方は我が国では遅れていましたが、今回のバンダイの対応を機に消費者の関心が高まればと思います。

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目の粘膜に炎症も/カラーコンタクトに注意

 おしゃれ用として若者に人気の、度のないカラーコンタクトレンズは、目の粘膜に炎症などを起こしやすい傾向があることが国民生活センターなどの商品テストで3日、分かりました。

 同センターは「度のないカラーコンタクトは薬事法の規制がなく、安全性が保証されていないので、コンタクトは視力補正の目的以外で安易に使わないでほしい」と警告しています。

 テスト対象は国内で購入できる10銘柄の、いずれも輸入品で、国内で医療機器の承認を受けていないものです。レンズに含まれる液の成分テストでは、10銘柄のうち2銘柄で、装着すると目やになど粘膜に異常を起こすほどの殺菌作用の強さが確認されたといいます。

 同センターは同日、厚生労働省などに「おしゃれ用カラーコンタクトレンズは、現時点では取扱説明書も不要という状態で、安全性や品質に問題があるものがある」と報告しました。
これを受けて厚労省は27日、業界団体の日本コンタクトレンズ協会に使用者向けの啓発活動に乗り出すよう要請しました。

 同省の要請は、同センターが早急な対策を要望したことを受けた措置で、同協会に「参加の販売業者が使用者の安易な購入を助長しないよう注意喚起し、使用者には適切な啓発活動をして欲しい」と求めています。
おしゃれ用の度無し製品はほとんどが輸入品で、インターネットやディスカウントショップで購入されるケースが多いですが、視力補正用ではないため薬事法の対象外で規制できない商品です。

 おしゃれ用、遊び用にと、若い人は利用したいと思いますが、宣伝につられて購入する前に、自身の健康・安全にも気を配って欲しいものです。そのためには店頭での誘客広告の内容の見直しなど、メーカーだけでなく販売店の対応も改善が必要です。

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「カリン」不当表示/諏訪の特産マルメロ

 長野県諏訪市は15日に開いた市みやげ品審査会で、特産のマルメロを使った加工食品に「カリン」と原材料名表示するのをやめるよう、業界指導する方針を決めました。諏訪地方では古くから、マルメロをカリンと呼び習わしていますが、砂糖漬けやあめなどをめぐり「不当表示ではないか」とのクレームがあります。産地偽装など食品表示に厳しい目が向けられる時代に「諏訪の常識」が通用しなくなったようです。

 カリンとマルメロは近縁種ですが、植物としては別物で、諏訪地方のマルメロ栽培は江戸時代に始まったとされ、当時からカリンと呼ばれ、伝統的な砂糖漬けなど加工食品は多くあります。市の推奨みやげ店にも菓子や飲料を含め15品目あるといいます。

 これらの加工食品の多くは、商品名や原材料名表示に「カリン」と明記されていて、一昨年、姉妹都市の神奈川県秦野市で開いた物産店で「不当表示」の指摘があり、市に改善を求める声が再三寄せられたといいます。

 諏訪地方で栽培されているものは、ほとんどがマルメロですが、当地に伝えられた時から「かりん」と誤り呼ばれたため、現在でも通称「かりん」として定着、「かりん並木」「カリン祭り」など生活に密着した名前として市民に親しまれています。

 しかしマルメロを使って作っている以上、原材料名はマルメロに改めるべきで、商品名も原材料と別の植物の名称を使用しては誤解を与えるものです。習慣として、しかも強い愛着を持って使ってきたカリンの名称を、マルメロに改めることには抵抗もあり、また包装やラベルを変更すれば莫大な経費もかかることから、この問題がどのように決着するのか気になります。

 ところでロッテの「のど飴」はカリンエキスが原材料ですが、同社のホームページでは、「カリンの素顔」と題して諏訪地方をカリンの里として紹介しています。同社では原材料にマルメロではなく、カリンを使っているので問題はないということですが、ホームページの掲載物が、消費者に誤解を招かないようにしてもらいたいものです。

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命令違反に罰金300万円/バリアフリー化の促進法案

 バリアフリーの街づくりを進める国土交通省の高齢者傷害者移動円滑化促進法案が18日、明らかとなりました。東横インによる点字ブロックや障害者用トイレの撤去など不正改造問題を受け、バリアフリー基準を守るよう求める自治体の改善命令に従わない事業者への罰金の上限を100万円から300万円に引き上げるものです。

 上限額の設定は耐震強度偽装問題を契機に建築基準法の罰金の上限を300万円に引き上げる方向となっていることを考慮したものです。今国会に提出、成立から半年の施行を目指すとしています。

 促進法案は、病院やホテルなどの建築物のバリアフリー化を定めたハートビル法と、公共交通の旅客施設などのバリアフリー化の基準を定めた交通バリアフリー法を一本化するものです。

 また駅やデパート、ホテルなどの建物だけでなく、地区全体を一体的に整備するため両法の適用外だった道路や公園を新たにバリアフリー化の対象に加えています。

 東横インのような企業が今後出てこないような抑止力とするためには、企業であることを前提に少なくとも10倍程度、数千万円程度の罰金が必要だと思いますがどうでしょう。
企業がダメージを受けて存続が危うい、という罰則がなければ抑止力にはなり得ないでしょう。一時的にメディアで騒がれても人は忘れやすく、「駅に近いし、安いので東横インに泊まる」と言う人は多いからです。

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