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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。「定期購読について」
■医療事故、民間病院は報告不要/日医の要求か、厚労省方針
■製品回収、社告などでの告知で信頼高まる/国民生活センター調査
■電磁波で脳血流変化/北里研究所・日本子孫基金の研究
■食の安全で新条例/東京都■「有機」認証の信頼揺らぐ/農水省調査・処分
■天然温泉、実は水道水/愛知・吉良温泉
■年々増える安易なヘリ救助要請/山岳救助のあり方は
■傷つく白神山地/世界遺産登録10年で観光地化
8月のニュースから
■医療事故、民間病院は報告不要/日医の要求か、厚労省方針
医療事故の防止策などを検討している厚生労働省が、事故報告を義務付ける医療機関を国立病院などに限定し、医療法人などの民間病院を対象外とする方針を示していたことが21日明らかになりました。方針は日本医師会の求めに応じて同省が提出した「確認書」の中で示されたものです。これは9割以上の医療機関が事故の報告義務から免れることになり、患者が求めている「医療情報の公開」が大幅な後退となってしまいます。
今年12月に範囲検討委の意見書がとりまとめられる予定ですが、この方針により民間病院への適用拡大が絶望的になった、との見方が支配的です。民間病院の事故報告義務化ということで、情報開示による病院・職員の医療の質を高める環境整備が期待されたのですが、これでは今まで通り密室内での過失・事故による患者の利益は阻害されたままです。
日医では「報告数を増やせば、有益な情報が得られる訳でない」と言っていますが、たった1割の国立病院系の事故情報で人が犯す過ちのどの程度が分かるというのでしょう。どんなに高度な医療を行っている病院でも、たった一人の勘違いや、システムの疲弊に鈍感なスタッフによる深刻な事故は起きてきました。ましてや虚偽報告やカルテ改ざんなども行われている現状で、できる限りの情報開示が急務でした。日医はさらに「医療関係者が同じ基準や方法で集めた正確な情報を共有して防ぐべきだ」として、国立病院などに限定することを歓迎していますが、そこには意図的な報告書のフィルタリングによる都合の良い情報だけが出てくる恐れすらあります。
現在の病院では看護師などのインシデントレポートが多く出されていますが、医師のインシデントレポートは非常に少ない、ということをよく聞きます。看護師の間では「医者だけインシデントが少ない、ということは決してない」ということですが、医師の自己保身が優先される骨抜きの制度が出来てしまうことになります。[目次へ]
■製品回収、社告などでの告知で信頼高まる/国民生活センター調査
製品の不具合や食物への異物混入、偽装表示などが発覚した場合、企業が新聞社告などで告知して自主的に製品を回収すると「企業ブランドに対する信頼がかえって高まる」と考える消費者が約5割に上ることが、国民生活センターのアンケート調査で分かりました。
調査は今年2月に東京都と神奈川県の成人男女1,000人にアンケートし、376人(37.6%)の有効回答を得たものです。
社告で告知し製品回収を行う事業者を「その企業やブランドに対する信頼は高まる」とした人は47.3%で、「信頼は変わらない」が34.3%あり、「信頼を損ねる」は13.3%でしかありませんでした。また告知せずに製品回収する事業者には、83%が「回収効果に関わらず告知すべきだ」と回答しています。危険性が低いケースでも「不具合があれば公表して回収すべきだ」(84.6%)、「公表しなくても回収すべきだ」(8.8%)との回答が大勢を占めました。
昔は恥ずべきこと・デメリット情報という認識もあったようですが、昨今の企業不祥事が頻発するなかで問題視されてきたのは、言い逃れができなくなると嘘で固める体質、つまり企業や身内、そして自己保身の固まりであったように思います。悪い身本をもう充分見せられた国民が、本当のことをいってくれる企業に信頼を感じるのは当然のことでしょう[目次へ]
■電磁波で脳血流変化/北里研究所・日本子孫基金の研究
携帯電話や送電線、電化製品から出る電磁波によって頭痛、疲労感などの症状が出るとされる電磁波過敏状態を訴える人は、電磁波を当てると脳の血流量が変化することが北里研究所病院の坂部貢部長と日本子孫基金の研究で分かりました。
研究グループは、過敏症状がある人とない人、それぞれ5人に電磁波を当て、特殊な装置で脳の血流量の変化を調べたものです。過敏な人には、電磁波の照射に応じて血流量が増えたり減ったりする変化が起きたといいます。
グループでは、症状のある人は電磁波で神経系が乱され血流変化となって現れたか、脳血流量を一定に保つ能力が低下したと見ています。また過敏な人には、眼球の運動障害、瞳孔の対光反応の異常も多く認められたといいます。
考えてみると、PCB、ダイオキシン、環境ホルモンなどの化学的因子による人への影響は少しずつ明らかになってきましたが、電磁波や光、音波、振動といった物理的因子による人への影響は、まだよく分かっていません。今の科学で分からないことには謙虚な姿勢が必要で、「危険だと立証されていない」から製品・商品を作っても良いとするのではなく、産業界に「安全だと立証すること」を求めていくことが公平な社会であると思います。
過去の歴史を見れば科学技術の後れからどれほどの“安全”と思われたものが“危険”となったのか分かるのですが、安全・危険の線引きが企業中心で困ります。[目次へ]
■食の安全で新条例/東京都
東京都は15日、食品の安全確保と危害の未全防止を目的にした「都食品安全基本条例(仮称)」を2003年度中に制定する方針を明らかにしました。
食品衛生法で規格規準が定められていないため法規制できない食品について、都が危険と判断すれば独自に業者に立ち入り調査し、知事名で食品の回収や製造方法の改善などを勧告できるようにするのが特徴となっています。企業が食品を自主回収する際にも都に報告義務を課すことも盛り込んでいます。
加工食品の場合、食品衛生法に規格基準が定められていないため、これまでは危険性が疑われても法的な対応が遅れる可能性がありました。国の緩やかな規制に対し、住民のために自治体が独自の制度で対応するのは歓迎できます。また、消費者の間に入るスーパーや小売店による安全監査が進めばさらに信頼度は高まることでしょう。[目次へ]
■「有機」認証の信頼揺らぐ/農水省調査・処分
日本農林規格(JAS)法に基づく有機認証制度が始まり2年余りが過ぎましたが、昨年来から認証機関や生産者、加工業者での不正が相次いでいるといいます。
岡山県の食品会社が昨年5月、有機栽培でない大豆で作った豆腐のパッケージに「有機栽培大豆」などと偽装表示していたとして、岡山県警にJAS法違反容疑などで摘発され、昨年12月、岡山簡裁で罰金命令を受けました。
また認証機関での不正もあり、日本オーガニック農産物協会が昨年末、認証検査員の報告書を改ざんし基準に合わない加工食品会社を不正に認証したとして、認証機関としての登録を取り消されています。今年2月にはオーガニック認証協会が、検査を請け負った農家から国の認可なく「申請料」を徴収したとして90日間の認証業務停止処分を受けています。
認証制度といっても不正が横行するような制度・システム自体に問題がありそうです。「有機」認証を取得する生産者にはISO9001規格のように、顧客志向で安心して提供できる農産物を作るためのポリシーを掲げさせ、生産者に「あなたのポリシーが農産物に適切に反映されていることを客観的に示してください」との質問に答えさせるようなシステムが必要でしょう。論理的な客観性をシステムに組み込まなければ、罰則・処分をもってしても「有機」認証制度の信頼性は低いままです。現食品業界のコンプライアンスの低さからも、抜本的な制度改革も視野に入れた取り組みが必要でしょう。[目次へ]
■天然温泉、実は水道水/愛知・吉良温泉
三河湾国定公園の「吉良温泉」の源泉が10年以上前に枯渇し、地元の宿泊施設は水道水を沸かすなどして営業しているのに、吉良温泉観光組合がパンフレットに泉質や効能を記載、天然効果を装っていたことが6日分かりました。
組合関係者によると、源泉は吉良町宮崎にあり、1955年ごろ放射能泉の天然温泉として県から許可を得たものです。
しかし温泉ブームによる利用客増加の影響もあり湯量は減少、十数年前にほぼ枯れたといいます。ホテルなどが掘削した別の場所も採算の問題から活用は一時期だけで、現在は19軒ある宿泊施設は水道水を沸かすなどして対応しているといいます。
日本全国、企業、業会を問わず消費者・顧客をだますことをなんとも思わなくなっているようです。デメリット情報を出したくないということが、だんだん感覚をマヒさせ、虚偽表示で顧客を欺いていることのなんと多いことでしょう。同温泉地の宿泊施設それぞれは、当然観光組合のパンフレット内容は知っていたはずであり、組織ぐるみの犯罪でもあります。[目次へ]
■年々増える安易なヘリ救助要請/山岳救助のあり方は
長野県内の日本アルプスを始めとする山々では、県警など公共のヘリコプターを無料で出動要請ができることから、「タクシー代わりに」呼ぶ安易な救助要請が増加しています。
7月末の北アルプス北葛岳で「手のひらを切って血が止まらない」と県内在住の男性(29)から携帯電話で通報があり、悪天候の中救助に向かった県警航空隊の柄沢良一助係長は、現場上空で目を疑ったといいます。けがをしたはずの男性が手を大きく振って、ヘリを誘導していたのです。救助後確認すると案の定血は止まっていて、空港に到着すると男性は礼の言葉もなく、勝手にドアを開けてヘリを降りていったといいます。全く山男の風上にも置けない者ですが、けがをしたのでもう歩くのが嫌になっただけのわがまま男のようです。
長野県警では救助要請が入ると、まず県警ヘリの派遣を考え都合がつかないと県消防ヘリと民間ヘリ救助に救助依頼をします。民間ヘリの東邦航空松本営業所によると、1時間飛ばせばチャーター料など計約110万円かかるといい、この額が公共へリで浪費される税金でもあります。
米国やフランスなど登山先進国ではヘリ救助は民間委託が基本で、費用は保険を使って自己負担するのが通例だといいます。公共のヘリが無料だということで、要領のいい人間にいいように使われている現状は問題です。昨夏、八ケ岳で救助要請をした男性は「税金を払ってんだから、ヘリを呼んで何が悪い」と救助隊員に居直ったというのですが、こんな人間には傷害の程度に応じてヘリ救助拒否ができるような制度が必要なようです。あるいは通常は民間ヘリが救助に向かい、民間ヘリからの連絡でさらに救援が必要な場合や、遺体収容活動に限定して公共へリを利用するなど新たなルール作りが必要でしょう。[目次へ]
■傷つく白神山地/世界遺産登録10年で観光地化
青森、秋田県境に広がる世界最大級のブナ天然林が、世界遺産登録から10年を迎えましたが、これまで手付かずだった自然が観光地に一変し、周辺のブナ林を訪れるツアー客の踏みつけで木の痛みが進んでいるといいます。
痛みが目立つのは、秋田県藤里町の岳岱(だけだい)自然観察教育林と呼ばれる約12ヘクタールの林で、テレビCMなどでも取り上げられた人気スポットです。秋田県側の世界遺産登録地域は研究などの特別な理由が認められない限り、一般の人は入山できないため、白神山地の雰囲気を味わいたいという団体客が大型バスでここの教育林を訪れるといいます。
環境省の推計では、昨年だけでも少なくとも約6,800人が来たとのことで、登録以前のブナ林では地面全体が腐葉土やこけに覆われていたものが、地表を覆っていた落ち葉が増加した観光客らに踏まれて粉々になり、雨で流されて根が露出、数本の木が立ち枯れ寸前に追いやられています。
一つ気になるのは、同教育林の目的である自然の大きさや保全についての認識を深めることが、はたしてどの程度の効果上げているのか、ということです。観光客の多くは自分が珍しい場所に行ったことが得意なだけで、日頃自然保護などには無頓着の人なのです。道ばたや身近な自然には関心を持たず、自己の欲求を満たすために有名な場所に現れるだけの観光客は、自然破壊者と見るべきでしょう。同教育林では参加者に質問やアンケートなどで学習してもらい、彼らに問題意識を促すことなど行っているのでしょうか。目的を達しない教育林であれば、そのあり方を真剣に考えるべきです。[目次へ]
終わりに
米国内で売られている養殖サケの一部に高濃度のPCBが蓄積されている、という調査結果を、環境保護団体、環境ワーキンググループ(EWG)が発表しました。また米国やカナダなどから同様のサケが日本に輸出されている可能性も否定できないといわれています。
濃度はスコットランド産サケが一番多くて67.8ppbで、米環境保護局(EPA)が週に1回なら食べても良いとしている濃度6ppbの10倍を超える値でした。他は8点が20ppb以上、チリ産の1点だけが6ppb以下だったといいます。
EWGでは「養殖のサケには小魚の粉や脂を原料にした餌が与えられ、その餌に含まれるPCBが濃縮されたのだろう」と見ています。脂の多い魚が好まれるため、養殖では大量の油が与えられているようで、天然の魚では多くの小魚を食べてもこんなことにはならないでしょう。不自然に脂の乗った魚がもてはやされる消費者行動が招いた結果でもあります。[目次へ]
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