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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。「定期購読について」
■CT検査で意識障害/東大病院
■カテーテルで動脈損傷、女性患者死亡/自治医大
■急患輸血でミス、男性死亡/静岡の病院
■国交省調査、地下駅火災対策の現状/全駅での実施は無理?
■市民の手で食の安全確保/監視委発足
■信号「見えにくい」、弱視者に不評?/発光ダイオード歩行者用信号
■自転車イエローカード/長野岡谷署、マナー向上作戦
■公共施設での禁煙対策は鉄道、高速道路から/健康増進法効果
4月のニュースから
■CT検査で意識障害/東大病院
東京大学付属病院で3月、コンピュータ断層撮影装置(CT)を使って検査する際、患者の血管に誤って空気を入れてしまい、患者が一時意識障害になっていたことが3日分かりました。
警視庁本富士署や東大病院によると、患者は70代の女性で、3月13日に胸部のCT画像を撮影するために造影剤を注入した際、前の患者に使用された空の注射筒式造影剤を交換しないでそのまま使用したといいます。そのため自動注入器により空容器の空気が血管に入り、一部は脳部分にも空気が入ったとしています。担当していたのは20代の研修医と技師で、造影剤が透明なため空容器を「造影剤が入っている」と思い込んで交換しなかったというのです。
東大病院ですからマニュアルはあると思いますが、客観的な申し送りや書類、あるいは造影剤交換済みサインなど当該患者用に業務が執り行われた、という確証がなければ造影剤を交換する必要性を感じる、というのは当たり前のことでしょう。大学病院で問題となる研修医のレベルの低さは医療従事者であれば周知のようで、注射すら満足にできないことが多いといいます。そんな彼らの管理責任を自覚していなければ次の事故はいくらでも起きます。[目次へ]
■カテーテルで動脈損傷、女性患者死亡/自治医大
J栃木県南河内町の自治医大病院で、首にカテーテルを通す処置で誤って動脈を傷つけ、埼玉県内の女性患者(46)が死亡したことが7日、分かりました。同病院によると女性は1月11日、急性肝炎で入院、4月26日に腎臓内科の医師が栄養剤を入れるカテーテルを女性の首の静脈に挿入したところ、容態が急変し3日後に出血性ショックなどで死亡したといいます。病院の調査で、カテーテルが静脈を突き抜けて動脈を傷つけ、大量出血していたことが分かり、栃木県警では業務上過失致死の疑いで調べています。
担当した医師はカテーテルの扱いに慣れていたといいますが、慎重な処置ではなくずいぶん粗っぽいような印象を持ちます。病院では事故後「定期的にカテーテルの挿入法を教育し、再発防止に努めたい」と話しています。しかし同病院では昨年9月にも肝臓ガンの内視鏡手術で医師が誤って心臓に穴を開け、女性患者が死亡する事故が起きているのです。[目次へ]
■急患輸血でミス、男性死亡/静岡の病院
静岡県三島市の三島社会保険病院で10日、搬送された交通事故患者に本人と異なる血液型で輸血、死亡させたことが16日、分かりました。死亡した男性はバイクを運転中対向車と正面衝突、全身骨折などで病院に搬送され、病院側は12人もの医師らで対応したといいます。輸血中、ミスに気付いたものの、患者は3時間後に死亡してしまいました。医師や看護師が12人もいながら、輸血時の最大の注意事項である血液型の確認ができなかったというのは、複数の人間のミスや未確認の結果でしょう。いわゆる人や薬品などの取り違い事故で、フールプルーフ対策欠如が原因ですが、なぜ医療機関ではこのような単純なエラーをシステム的に改善できないのでしょうか。
ところで産業界の品質マネージメントでは、国際規格のISO9000の認証取得が当たり前となっていますが、病院の場合は、(財)日本医療機能評価機構(http://jcqhc.or.jp/html/index.htm)の認証希望が多くあります。同機構は当時の厚生省、日本医師会や日本病院会、健康保険連合会などが出資・設立した財団のため、「顧客の満足度」という観点での品質やシステムの客観性よりも、財団が決めた評価基準を満たすかどうかの事務的な審査が多く、かろうじて院長などの管理職との面談を行っているようです。
このような病院とは一線を画し、ISO9000の認証を取得する病院も増えてきています。病院・医療福祉機関の認証取得団体は1996年から2000年までは33件しかなく、 2001年末でも76件でした。ところが昨年8月には100件を突破しています。最近では社会福祉協議会などでも取得するところがあり、介護・福祉関連の認証取得がずいぶん増えてきているようです。(財)日本適合性認定協会(http://www.jab.or.jp/)の最近のデータでは、「医療及び社会事業」の分類で169件となっていて、認証取得者のデータ検索結果では27病院が登録されていました。まだまだ少ないとはいえ ISO9000の認証取得は今後も増えてくことでしょう。[目次へ]
■国交省調査、地下駅火災対策の現状/全駅での実施は無理?
韓国・大邱市の地下鉄放火事件を受け、国土交通省が行った地下駅の火災対策設備の実態調査で、全国40事業者の該当する駅の約4割が国の基準を満たしてないことが判明しました。
国交省の担当者を驚かせたのは阪神電鉄の春日野道駅で、もともと計画に無かった駅を地元の要望でトンネル内に強引に造ったため、ホームの幅はたったの2.6メートルしかなく、また地上へ通じる階段は長さ119メートルのホーム片端に一カ所のみで、排煙設備も自動火災報知器も無いものでした。阪神電鉄でも安全上の問題を認識していて、すでに改良工事が始まり、2006年春には基準を満たす新しい駅が完成する予定となっています。
今回の調査で基準を満たしていなかったのは、全国19事業者の268駅で、JRは全てクリアしていたといいます。一方東京の営団地下鉄では、40事業者中最も多い79駅に問題がありましたが、新たに用地買収を行ったり、排煙設備用のスペースを掘削する必要があり、「全ての駅で基順を満たすのは現実的には不可能」との見方をしています。
さて予防安全的に、ハードやシステムの対策を考えるのもいいのですが、彼ら犯罪者を作らない社会・国家環境を目指すことも大事でしょう。それは政策や法律から家庭でのしつけ、あるいは学校での教育など、人間形成に必要なあらゆる方策が求められことでもあります。
その一つに、日本人はともかく世界中の多くの人々が信じている宗教問題があります。キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、仏教などの宗教の教えを学ぶことだけで、「自分のことばかり」という日本人ではなく、他人を知り、そして他人の痛みを知る人が増えて欲しいものです。
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■市民の手で食の安全確保/監視委発足
食品安全行政の強化を目指して今夏に政府主導で発足予定の「食品安全委員会」に対抗した市民組織、「食の安全・監視市民委員会」が19日発足します。
食の安全・監視市民委員会は、運営委員会(委員約10人)で取り扱う問題を選び、遺伝子工学や農薬、食品添加物に詳しい学者や研究者ら約20人で構成する専門委員会に、独自にリスク評価を諮るとしています。委員会全体の代表には、食品行政に詳しい神山美智子弁護士が就任する予定で、日消連を初め「生活共同組合グリーンコープ連合」や「大地を守る会」など、全国約20の団体や個人30人らがすでに会員登録しており、さらに広く参加を呼び掛けていくとしています。委員会の財源は会員からの会費で賄い、年会費は個人1口1,000円、団体1口5,000円です。参加申し込みは日本消費者連盟(03-3711-7766)まで。
農薬を使うことを前提とした農水省の求める農産物、そして抗生物質の大量投与を必要悪とする畜産、海産物など、食の安全を誰の視点で見ているのか分からない状態ですが、市民団体中心の農薬不使用を目指すという、明快なポリシーには期待できそうです。[目次へ]
■信号「見えにくい」、弱視者に不評?/発光ダイオード歩行者用信号
警察庁が導入を決めた発光ダイオード(LED)の歩行者用信号機を設置する交差点が出てきましたが、弱視者にとっては見え方に問題があるようです。LEDは従来の電球式に比べ省エネで明るい利点がありますが、発光面積が小さいため弱視団体などからは「見にくいのでは」との懸念の声も出ています。新開発の歩行者用信号は、直立姿勢の歩行の人形(ひとがた)の部分が白抜きされ、四角の信号面全体が光る従来の電球式と違い、背景が黒くLEDを配した人形部分だけが青や赤に光るものです。
しかし昨年11月に行われた千葉県の試験では、32人中「従来型が見やすい」が青色で 6人、赤色で7人もいたのです。中部弱視者連絡会では「早く私たちに情報が伝わっていれば、開発段階から参加し、意見や要望を出せた」と導入過程の疑問を訴えています。
新型の歩行者用信号は、人形部分の色を赤、青に発色させ背景の黒とのコントラスト比を高くしたもので、一般の人にはとても視認性が良いものだと思います。ただ従来型では、信号面全体が青や赤色として認識できたこともあり、弱視者に人形が見えなくても問題ないものでした。それが人形の色を赤と青に変えて識別させるのは、視認面積が狭く外光の状態によってはその色が見にくくなることが考えられます。強い日差しでも見やすい、という一般的な性能をうたうLED信号機ですが、弱視者にとっての検証が不十分だったようです。[目次へ]
■自転車イエローカード/長野岡谷署、マナー向上作戦
自転車事故の減少を目指して長野県岡谷署は、交通違反となる危険な乗り方をしている人にカードを渡して指導する、というユニークな「自転車イエローカード」作戦を始めました。同署交通課によると、昨年1年間で自転車が絡む事故は58件あり、増加傾向にあるといいます。中でも高校生の2人乗り、斜め横断などルールやマナーを無視した危険な乗り方が目立つとのことです。そこで考案したのがイエローカードで、上部には「あなたの通行方法は交通違反となります。このような乗り方をしないように」との注意書と、「2人乗り」「信号無視」「無灯火」など5つの違反項目が記載してあり、下部は誓約書になっています。上下切り取り式で、違反者には上部のカードを渡すものです。
自転車のマナーといっても、実際は自転車に乗っている人の大部分は、「走れるところはどこでもOK」と思っているようです。さすがに高速道路には乗り入れる人はいませんが、逆に有料道路を走れないと思っている人も多いのです。それでもその程度の知識のことでは誰にも迷惑がかかりませんが、市街地の歩道をベルをけたたましく鳴らしながら疾走する人は問題視しなければなりません。自転車はもともと“車”であるため、車道を走るのが原則です。したがって歩道に「自転車通行可」との標識がある場合は走行できますが、それ以外の歩道では走行できず、人が自転車を引いて歩くのが原則です。
さて横断歩道を原付き自転車(50ccバイク)を引いて渡るマナーの良い人もいますが、右折ラインのある交差点に50ccバイクで平気で居座っている人の方が多く、道交法など誰も気にしなくなっています。また、そんな彼らを注意する警察官もいないという現状では、スピード違反ばかり取り締っている、との警察に対する不満も出てくるというものです。
誰にも迷惑をかけないシートベルトの着用を取り締まるよりも、これら違反を積極的に無くすことが道路利用者の願いでもあります。産業界への遠慮のためか、50ccバイクへの取り締まりをほとんどしない、というのは社会的バランスを欠いているとしか思えません。そんなことを考えると、今回の岡谷署の自転車イエローカードにはとても好感が持てます。今後マナー無き50ccバイクへのイエローカードの出現と、他の警察署への広がりを期待したいものです。[目次へ]
■公共施設での禁煙対策は鉄道、高速道路から/健康増進法効果
5月1日から施行される「不特定多数が利用する施設の管理者は、受動喫煙の防止に努める必要がある」との「健康増進法」に合わせた対応策が出てきました。
東急や小田急など首都圏の大手私鉄8社は、21日、駅ホームなどに設けられいた喫煙所を全廃し、5月から全ての駅を終日禁煙にすると発表しました。今後首都圏の大手鉄道会社で禁煙が許されるのはJR東日本だけとなり、同社の対応の鈍さが目立つことになります。終日禁煙に踏み切るのは、京王、西部、小田急、東急、京急、東武、京成、相模鉄道の大手8社の全730駅です。各社はラッシュ時の禁煙タイムの設定や分煙化などを、これまでも進めてきましたが、乗客から「禁煙時間が守られていない」などの苦情が多く寄せられていたといいます。限られた駅構内でこれ以上の分煙は不可能、との判断により今回の決定に至ったようです。
一方、日本道路公団の高速道路のサービスエリアなどを管理する、(財)ハイウェイ交流センターと道路サービス機構は、全国約520カ所あるSAとパーキングエリアの商業施設を5月1日から全面禁煙にすると発表しました。レストランや土産物店が入居する施設内が対象で、屋外の休息所やガラスで区切った専用コーナーでの喫煙は認めますが、館内の灰皿は全て撤去します。[目次へ]
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