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2002.10 No.106  発行 2002年10月11日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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■ミスタードーナツ、今度は餃子に小石/公表せずに販売中止

■西友も輸入肉を国産と偽装/グループ2店で販売

■期限切れのタレを使用した総菜/プリマハム、公表せず

■原材料調達の追跡システム、食品メーカー6割導入/日本経済新聞社調査

■EMSベルトで苦情増加/国民生活センター、注意を呼びかけ

■西ナイルウイルス、米国で拡大/死者100人を超える

■サリドマイド使用拡大/がん治療で医師の個人輸入15万錠

■三井物産との取り引き停止/米GEが検討

■カルテ、遺族にも開示/日医、来年1月から対象拡大

■国立大付属病院、ISO取得へ/文科省、医療事故防止策



9月のニュースから

■ミスタードーナツ、今度は餃子に小石/公表せずに販売中止

 ダスキンが経営するミスタードーナツで今月中旬、客から中国製「エビ蒸し餃子」に小石が混入しているとの苦情が相次ぎましたが、同社は事実関係を公表しないまま販売を中止していたことが、28日分かりました。ダスキンによると、今月8日から13日にかけて、大阪、東京、北海道、埼玉の4店で「点心セット」を注文した客から「ギョウザに小石が入っている」との苦情が相次いだといいます。

 小石は直径1センチ程度で、餃子はいずれも7月に中国の工場で製造したものだということです。このため19日、全店でこのギョウザの販売を停止、20日に大阪・吹田保健所に報告しましたが、消費者向けには事実関係を公表していませんでした。

 ダスキンでは無認可添加物による肉まん事件で25日に上田武社長が引責辞任する意向を表明したばかりで、同社の隠ぺい体質が改めと問われるとともに、品質や安全に関する取り組みが進んでいない事実が露呈されました。ギョウザに1センチもの小石が入っても誰も気付かずに市場に出してしまうという、この会社の現場管理はいったいどのようなものなのでしょうか。これではトップが変わっても、同社の体質は変わらないようです。

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■西友も輸入肉を国産と偽装/グループ2店で販売

 大手スーパーの西友は27日、グループの2店で合計2.7トンの外国産の輸入肉を国産と偽って販売したと発表しました。偽装表示があったのは、埼玉県の狭山市駅前店と札幌市の元町店で、両店とも昨年9月から偽装を始めて約1年間もの間続けていたといいます。

 元町店ではその後新たな問題に発展、消費者に適正なチェックなしで代金を戻すというやり方で多くの不正者の懐を潤してしまいました。同店のように肉を購入したという虚偽の申告を鵜呑みで信じる企業も企業ですが、そのような犯罪行為を平気で行う人のなんと多いことなのでしょう。

 わが国では「ただでくれるもの」に群がる人がとても多くて、長い行列に多くの“いい大人”が並んでいる光景を見ることがあります。「ただでくれるもの」は楽をして儲ける、究極の「儲け学」なのかもしれませんが、100円、200円のものに30分も並んでも平気で待つ人がこんなに多いと、何やら異常なものを感じます。そんな人々(国民性というべきかもしれませんが…)が多いのであれは、同じ因子を持つ企業人でも楽をして儲けるための偽装など朝飯前なのかもしれません

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■期限切れのタレを使用した総菜/プリマハム、公表せず

 食肉加工大手のプリマハムが、賞味期限が過ぎたタレを使った酢豚などの総菜を、昨年2月から同6月にかけて出荷、自主回収していたことが2日、明らかになりました。また同日の新聞には公告が掲載され、要約すると「9月2日発売の一部週刊誌に弊社に関する記事が掲載、同社の部分的引用や本件とは関係のない事象を結び付けて事実が正確に報道されず遺憾である。本件内容についての品質問題は、法的にも食品の安全上も問題ない。食品の安全性については一貫して十分配慮しており、企業倫理を含め消費者の視点に立った観点をさらに強化し品質保証態勢を強化している」というようなものでした。

 同社は、「自主回収した商品や在庫を全て廃棄したが、販売した商品のうち20パックほどは市場に出回って回収できなかった」としています。また「保管していたサンプルを検査したところ品質上は問題なかった」としていますが、未回収の商品を市場に残しても事実を公表しなかったことへの説明はありません。このため週刊誌で取り上げられたようですが、公告に記載された「企業倫理や消費者の視点を重視」の言葉とは矛盾する「情報を公表しないことが不正の温床になっている」ことを理解していないようです。

 見るだけでは品質が分からない商品、特に食品にあっては、消費者サイドに立った厳格な信頼できるシステムが必要ですが、業界の「分からなければいい」とする考えは、最近の多くの事件・不祥事で立証されてしまったことを謙虚に反省してもらいたいものです。そしてすみやかに提供する情報こそ、企業の信頼を与えるものだということを肝に銘じて欲しいものです。

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■原材料調達の追跡システム、食品メーカー6割導入/日本経済新聞社調査

 雪印乳業事件、BSE問題、雪印食品などの牛肉偽装事件、全農チキンフーズ、スターゼンなど大手食肉加工会社の偽装事件、最近では日本ハム事件と続き、ミスタードーナツの無認可添加物事件、協和香料科学の無認可香料事件など最近の食に関する事件は次から次へと収まる気配がありません。そのような環境下関連企業はどのような対策を講じているのか、日本経済新聞社が行った食品の原材料の安全性など、主要食品メーカーへの調査を紹介します。調査はアンケート方式で実施、121社から回答を得たものです。

 調査によると、調達先にまでさかのぼって原材料の安全を追跡管理する「トレーサビリティーシステム」を導入済み、あるいは導入を決めた企業は63%を占め、多くの企業が品質の裏付けを求めていることが分かります。味の素は大量に原材料を調達する中国や米国に研究所を新設、中国産の冷凍ホウレンソウなどで残留農薬が問題になったことに対応しています。キューピーはマヨネーズ原料の鶏卵で、契約農家・生産法人でどんなエサを与えて育て、いつ出荷したかが分かるシステムを構築しました。

 また、消費者との窓口を強化した企業は49%、プリマハムは今月1日に「品質保証本部」を発足、1日70〜80件ある消費者からの問い合わせなどを同本部に集約、朝一番で本部長が全て点検する体制を敷きました。カルピスは消費者の苦情などをデータベース化し、商品名、出荷工場、製造年月日が共通する苦情が2件以上入った場合には関連部署の幹部に自動的に警告の電子メールが入る仕組みを整えました。森永乳業もほぼ同様のシステムを導入しました。約半数の企業では消費者対応を怠ることの危機感を持っているようですが、残り半数の企業が実行できてないのが気になります。

 法令遵守や安全面での教育研修を強化した企業は66%、品質管理や安全対策の専門部署をこの1年で新設・拡充した企業も17%ありました。これら企業の対応は当然ですが、今まであまりにもお粗末だった、ということかも知れません。法令遵守といってもたとえばスピード違反などと同じものではなく、現在の食品業界は飲酒運転続行中で、いつ何時歩行者や車にぶつかってもおかしくはない状況にある、というように思えます。全ての企業で、さらなる安全品質を目指してもらいたいものです。

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EMSベルトで苦情増加/国民生活センター、注意を呼びかけ

 電気刺激による筋肉増強やシェイプアップ効果をうたった「EMSベルト」で、やけどや皮膚障害などの被害の苦情が増えていることが24日、国民生活センターのまとめで分かりました。これら器具は、お腹や太ももなどにパッドを巻き付けて弱い電流を流し、筋肉の収縮運動を起こさせるものです。昨年秋頃からテレビショッピングなどを通じて人気商品となっているもので、百数十万台売れたというものです。

 同センターによると全国の消費生活センターなどに寄せられた苦情や相談は8月末までに48件あり、特に2月以降増え「複数カ所に直径5ミリの水ぶくれができた」などの事例がありました。センターは1万円前後のEMSベルト4機種を通常の使用方法で4日間使用したところ、16人中9人が筋肉痛を訴え、7人が炎症の程度を見る指標となる末梢血白血球数が使用後に増加するなど、通常の筋力トレーニングより炎症を示す値が高いケースがあったとしています。またパッドを腕に巻き付ける際、通電面にしわが寄って皮膚との接触面積が小さくなると一部分に多くの電流が流れ、やけどなどを起こす恐れがあることも分かりました。

 この指摘を受けて補足の説明書を追加するなど、顧客に対する被害軽減策を行ったのは現在のところ「日本文化センター」だけで、30日に公告を掲載、返品にも対応するとしています。通信販売などでこのような問題点が出てくると、顧客の安全を基本とし迅速な対応をするメーカー・販売者を選びたくなります。

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■西ナイルウイルス、米国で拡大/死者100人を超える

 米国では死に至る脳炎を引き起こす可能性がある西ナイルウイルスによる感染が拡大しています。8月23日には死者が16人でしたが、30日には31人となり、9月25日には104人に増加、感染者は2,121人となっています。しかも蚊の媒介だけでなく、臓器移植や輸血で感染する可能性も指摘されていることから、米国との交流が深い日本での発症が危惧されています。

 同ウイルスは1937年にウガンダの女性から初めて分離され、アフリカ、欧州南部、中東、西アジアに分布するものです。日本脳炎と同じフラビウイルスの一種で、蚊を介して鳥や人間などほ乳類に感染するといわれています。ワクチンや根治療法はありませんが、感染者の8割は何の症状もなく、発症しても発熱、頭痛、発疹などで一週間以内に回復するといわれています。しかし高齢者など免疫力が低い人では脳炎で死亡することもあるので注意が必要です。

 米国での初の患者が出たのは99年8月のニューヨークで、当社は別の原因が疑われましたが、後に西ナイルウイルスと確認されました。しかし、米国への進入経路は今もハッキリしていなく、最も可能性の高い鳥が輸入か密輸で米国に入り、蚊を介して広がったのではないかと思われています。わが国ではまだ感染報告がありませんが、アフリカ、欧州南部、中東、西アジアなどに分布するウイルスのため、海外への旅行者が感染したまま国内に入る可能性もあり、今後のチェックが欠かせません。国内では一昨年以降、成田空港など国際空港周辺の蚊を数千匹採取して感染源などを分析したことがありますが、そのときは蚊のウイルス保有はゼロだったといいます。

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■サリドマイド使用拡大/がん治療で医師の個人輸入15万錠

 国内では販売が認められていませんが、ハンセン病やがんなどに効果があるとされるサリドマイドが医師によって個人輸入され、昨年度1年間の輸入が265件、15万錠あまりに上ったことが26日、厚生労働省の集計で分かりました。

 このように多量のサリドマイドが輸入される背景には薬事法にも問題があるようです。同法では国内で承認されていない医薬品の販売はできませんが、医師が未承認の医薬品を個人輸入し患者の同意を得て使用することまでは規制していません。このため最近さまざまな種類のがんにサリドマイドの有効性が指摘されていることから、医療現場での試験的な使用が広がっているといいます。
薬事法の目的は国民が服用する医薬品の安全を確保することなのですが、個人輸入されたサリドマイドを医師が使用することに対する規制が何もない、というのでは困ります。個人が自分の意志で輸入し服用するのは規制できませんが、社会的に国民の健康・予防をつかさどる医師にあっては、法律に触れなければ良しとする、だけで果たして良いのでしょうか。規制がなければそれだけ医師の責任も大きく、患者本位の医療が求められるのが当然です。

 おそらく患者は治りたい一心で医師の薦めるサリドマイド使用を承諾するようですが、果たしてその危険性などの説明を医師が十分行っているのか疑問です。

 サリドマイドに詳しい東大分子細胞生物学研究所の橋本裕一教授は、「妊娠中の女性はもちろん服用を避けなければならないが、精液に成分が混入するので男性も服用中は性行為を避けるなど、十分な注意が必要だ。米国は非常に厳格な使用管理の基準を定めているが、日本では医薬品での承認のため、こうした基準はない。医師と患者が共に危険性を理解し、服用の仕方に責任を持つ必要がある」と述べています。

 法の精神・目的が達成されない日本の法律の構造問題の一つですが、少し前に捕獲禁止の野鳥を捕るための「かすみ網」というものがありました。法律はかすみ網の使用を禁止したのですが、その販売を規制しなかったため、密猟業者のため多くの野鳥が犠牲になったものです。利益のためには法律を遵守しない人・業者が大勢いる、ということを直視せず、まるで小学校教育のように「皆がルールを守ること」を前提とするだけなのです。これは「どこか抜けている」という性質のものではなく、法律を骨抜きにする意図的な力の問題であり、しかも抑止力を伴わない罰則も多く、嘆かわしい限りです。

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■三井物産との取り引き停止/米GEが検討

 米ゼネラル・エレクトリックが、三井物産との取り引き停止を検討していることが2日、明らかになりました。関係筋によると、三井物産は国後島のディーゼル発電施設を巡る不正入札事件で逮捕者を出したほか、モンゴル向けの政府開発援助(ODA)に絡んで、同国政府高官に対する贈賄疑惑が発覚するなど不祥事が続発していることから、GEではこうした企業体質を問題視していると見られます。

 GEは既にグループ企業に対し、三井物産との取り引きがあれば内容を精査し、不明瞭な取り引き関係があれば報告するよう求めたもようです。三井物産とGEは通常取り引き以外でも良好な関係にあり、三井物産ではGEの人材開発プログラムを参考にした経営者養成講座を開設するなどしています。

 さて、GEは不正に対して厳格な会社として知られていて、「ワンストライク・アウト(一回の不正で退社)」という厳しい決まりがあるようです。これは例えば、出張旅費の、たとえ数ドルでも意図的なごまかしと判断されれば、辞職を迫られることであり、このルールに署名するのが入社の条件となっているといいます。ところがこの7月、ジェフリー・イメルト会長は「誠実が最大の企業価値だ」との全社員宛のメールを送っています。GEであっても会長自ら倫理の徹底を求めるのは「どんな小さな不正でも、そこから会社がつぶれかねない」との危機感があるからだといいます。

 そんなGEですから三井物産との取引を見直すのは当然ですが、米国では投資家の企業監視は厳しさを増しているといい、今後の三井物産には大きな影響が及ぶかもしれません。

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■カルテ、遺族にも開示/日医、来年1月から対象拡大

 医療事故が多発する中、日本医師会は3日、原則として患者本人だけだったカルテの開示対象を広げ、遺族にも認める方針を決めました。これは遺族側の強い要望に応えることで「医療不信」の解消を狙ったものと見られますが、歓迎できるものです。実施は来年1月1日の見込みです。日医によると、新たな開示対象は死亡した患者の法定相続人で、同相続人が決まっていない場合は患者の介護や看護に当たっていたなど、一定の要件を満たす遺族も対象にするといいます。また開示するのは患者のカルテの他、手術記録や診療記録などで、患者本人からの請求と同様、閲覧やコピーについても原則的に応じるとしています。

 従来、医療機関側は患者本人に対するカルテの「要約書」を開示することがありましたが、厳格な運用を図るため今回要約書の代用は認めず、カルテそのものを開示することにしました。

 昨年3月に東京女子医大病院で起きた医療ミス事件では、死亡した女児の遺族が裁判所に証拠保全を申し立ててようやく病院側にカルテを開示させました。それでも遺族側がカルテの改ざんを知ることになったのは病院側の関係者が逮捕された後だったことから、カルテに記載された情報を早く開示することは不正の抑止にもなると思います。

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■国立大付属病院、ISO取得へ/文科省、医療事故防止策

 文部科学省は医療事故防止などを狙いに、国立大学医学部付属病院に品質管理・保証のISO9001の認証を取得させる方向で検討を始めました。病院はサービス業のため、患者への信頼性構築のためには品質規格であるISO9001が有効ですが、環境規格であるISO14000シリーズでの認証がPR効果や、取得しやすさのためか多いようです。

 今回同省の判断は、管理運営の改善と患者へのサービス向上を重視して9001取得を優先させることにしたもので、評価できると思います。取得には1、2年必要なことから、医療事故などで問題が指摘されている複数の病院で今週から準備作業に入り先行させるとし、将来は全国の付属病院での取得を目指したいとしています。
規模は大きくなったものの、品質マネージメントでの取り組みがおろそかになっている大病院が招いた医療事故は記憶に新しいものがあり、今後の対応が求められます。またそれら病院が核となる地域の医療品質の向上も期待され、他病院からの患者のカルテや情報、そしてケアに対しても、患者本位の医療品質を考える基盤作りになるでしょう。

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終わりに

 千代田区の「路上禁煙条例が始まりましたが、喫煙者はおおむね了解しているようです。隣の区から歩いてきた人は境界が分からないのでとまどうかも知れませんが、灰皿のないところでは吸ったらいけない、という基本を感じてもらいましょう。そしてゴミ(灰・吸い殻)と煙、高温の凶器を持っていることも併せて自覚してもらいたいものです。

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