シンガポールの屋台は清潔度を競い合う

   屋台と聞いてワクワク、ドキドキと胸を躍らせる御仁もいれば、屋台なんて清潔感がなくて絶対に食べたくないと言い張る人も多い。屋台を語れば必ず出てくるこの問題、シンガポールはこの問題をどう解決しているのだろうか?

   シンガポールは戦後著しい発展を見せ、周辺諸国ではトップクラスの経済成長を遂げてきた。そして、その資金をバックに、古い建物を取り壊し、住民を高層マンションに移転させ、高層マンションと高層ビルと公園という美しいグリーンシテーを完成させた。
   一方、屋台はどのように進化してきたのだろうか?シンガポール政府は、衛生的に問題の残る屋台を一斉に排除し、その代わりに、地域のあちこに屋台を集め、フードコートとして残したのである。このフードコートは「電源」「上下水道」「ガス設備」などを完備し、衛生面で配慮した構造となっている。さらに注目すべき点、それは保健所による、定期的な衛生チェックが入ることである。衛生的に配慮された店舗には、「A」、まずまずの店舗には「B」などとランクづけし、それを店舗正面に掲示することを義務づけたのである。これにより、各店舗は衛生面に気を配り、清潔な店舗運営が実現できたというわけである。

   しかし、昨今、「やっぱり、昔のように屋台で食べたい。屋外で食べたい。観光客は屋台を望んでいる。」という声があがり、この声に応えるかたちで、チャイナタウンに屋台街を復活させたのである。フードコートは衛生面で優れたシステムではあるが、どうしてもその形態は画一的にならざるおえない為、個性が発揮できないのだろう。屋外での調理は、調理するときの臨場感、においや調理時にでる煙などに、フードコートにはない、なんとも言えない「風情」が感じられるのであり、これが屋台の醍醐味なのである。

   こうして、シンガポールの屋台は進化、発展し続け、地元住民はもちろん、シンガポールを訪れる観光客にもたいへん喜ばれているのである。