「おいしい料理」から「健康に良い料理」へ

   昨今の日本人の料理指向を観察していると、ひとつの重要な点が浮かび上がる。それは、お客様の指向が「おいしさの追求」から「健康維持への希求」へ確実に変化していることです。自分も、かつては絶対に口にしなかった「青汁」だったが、まずいと思いながらも一生懸命飲んでいる姿にハッとすることがある。また、グルメ番組は相変わらず盛況を博しているようだが、その間隙を縫うようにして健康をテーマに据えた番組も多くなっていることに気づく方々も多いことだろう。さらに、今後国民医療費の削減が国家目標のひとつになれば、必然的に医学による対処療法から、病気にかからない体をつくることを目的にした予防医学に重点が置かれるようになっていくことが予想される。よって、健康管理が国の方針のもと管理される時代は終わり、おのおのが自分自身の問題として考え、行動していく時代に変化していくだろう。

   一方で、医食同源という中国的、東洋的思考も導入されていくだろう。医食同源とは、「食」こそが健康の源であり、「食」で健康体を維持する考え方である。この医食同源という概念が一般化されると同時に、健康情報番組から得るさまざまな知識は、飲食業に従事する人々にさまざまな変革をせまることが予想される。それは、「おいしければ何でも売れる」という時代から「健康にいい、安全な商品だけを食べる」というなんとも劇的な変化が生じることである。

   中国人が考える「医食同源」は、アジア各地に根付いており、それはベジタリアン(肉類、魚類は食べない)や、薬膳スープ、体にいい成分を含んだお茶や粥などに生かされている。果たして、この日本の健康ブームがこの「医食同源」と結びつき、マーケットに結びつくのか?それとも、においや香りに敏感な日本人が独特の漢方の香りを受け入れることができずにお蔵入りとなるのか?まだ、先は見えていない。しかし、ウーロン茶をアッという間に受け入れ、冷たいお茶として新マーケットを作り上げてしまったことを考えれば、健康に良い漢方の香りも比較的安易に受け入れてしまう可能性も充分あるのかもしれません。