■ 245号 未来を造る節目 | 2024.10.13 |
フランシスコ・ザビエル 天本 昭好 みなさん、70周年おめでとうございます。上野教会が小教区として設立されてから、70年の時を刻んできたこの年月のなかに多くの人の姿があったことでしょう。そして、これからさきもまた、カトリック教会において同じ信仰をもつ者として、多くの人との出会いと繋がりがもたらされていくことでしょう。21世紀になってからは、イエズス会中国センターの仲間も加わりました。二人三脚でともに互いを受け入れていくなかで、これからも同じ共同体の仲間として歩む姿のうちに、復活された主イエス・キリストもいらっしゃることをわたしたちは確かめ続けていきましょう。まさにこの歩みに教会という言葉の意味があらわされていきます。 さて、主任司祭として上野教会に赴任してから半年も経っていませんが、客観的に上野教会を捉えていったとき、小教区としての環境は決して生易しいものではありません。日本社会全体が少子高齢化の波の中で人口減少へと向っていきます。小教区登録信徒数は中国センターの信徒数を除いて2023年現在で357名となっています。恐らく劇的に日本人の信徒数が増加することはないでしょう。21世紀に入ってからの傾向として、新たに洗礼を受けられる方の数よりも亡くなられる方の数の方が多くなるのは致し方ないことです。一方で、中国センターは働き盛りの世代の信徒が多く、こどもたちの活発な姿もあり羨ましいかぎりです。上野教会を構成する日本人信徒数と中国センターの信徒数は逆転しています。これからも小教区として維持していくことを考えれば、中国センターとの協力関係をより深めていくことが大切です。 現在の上野教会はルドールズ神父様(パリ外国宣教会)の献身的な努力とフランスの信徒の方たちの献金で建てられたものです。既に献堂から63年の歳月がたっています。言うまでもなく建物の老朽化が切実な問題となってきています。今年になってから3回ほど上野教会の建物の停電が発生してしまいました。これは幸いにも教会の電気設備の劣化ではなく、供給側である東京電力の配線の問題であることが判明したので、地下に埋設されている配線の交換工事を行えば済む手筈になっています。建物自体の老朽化に伴って、新たに聖堂を建設するのか、しないのか、更には新聖堂建設をするしないにかかわらず、老朽化した現在の建物をどのような形でメンテナンスをしなければならないのか、具体的なロードマップを示していかなければなりません。 何人かの建築の専門家に教会を新築した場合いくらかかるか聞いてみると、だいたい共通しています。現在の建物の解体費用で1億、新築には坪単価200万で見込むと、教会の敷地がおよそ300坪なので、6億はかかるそうです。あくまで仮定の概算にすぎませんが、新築に7億円の費用と聞いてしまうとあまりの金額の大きさに正直愕然としてしまいます。ただ、だからと言って何もしないことが賢明な選択にはならないことはみなさんも理解していただけると思います。そのため、この70周年の機会に評議会にお願いして、これまでの教会の建物設備の修繕状況の概略をまとめていただきました。それは別紙で報告されているとおりです。 教区本部と連携しつつ、今後の具体的な方向性は建設営繕のグループを核にして評議会において検討していき、在籍されているみなさんとも逐次共通理解を深めていきましょう。短期的には建物の修繕の必然性の高いものから計画し、長期的には新聖堂建築のあらゆる可能性をも視野にいれながら具体的な計画を立てられれば幸いです。そしてこの計画のために、来年度から新たに建設営繕積立献金をはじめていきましょう。これは正式には来年度の信者総会で提案されていきます。在籍されている皆さんには新たな負担になることは重々承知しています。中国センターの方たちにも協力していただき、目に見える建物を形造ってゆくプロセスのなかで、目に見えない共同体の絆を深めていく作業をこれからしていきたいと願っています。 最後に聖書の言葉を紹介したいと思います。バビロン捕囚の困難な状況のなかでイザヤはイスラエルの民に次のように語ります。 「主に望みをおく人は、新たな力を得、 鷲のように翼を張って上る。 走っても弱ることなく、歩いても疲れない」(イザヤ40・31) バビロン捕囚と比較してはいけないでしょうが、建物の老朽化の現実はわたしたちにとって、とても困難な状況です。だからといって、途方に暮れていくのではなく、信仰を持つ一人として、前を向いていく力強い言葉ではないでしょうか。聖霊の導きによって70年の節目がこれからの未来を造る一歩となりますように。 |