「四十七回忌の年 亡き父をしのぶ」 2016年11月17日掲載
<臨終に手を握りしめ拍動の止まるを待てり父との別れ>
戦争で体を壊し、帰国後は入退院を繰り返した父が五十歳で亡くなったのは、
昭和四十五年十一月十八日。私が二十歳の学生の時でした。特別な供養は
考えてはいませんが、今年が四十七回忌の年に当たります。
父が亡くなった際、担当だった医師が、ろくに見舞いにも行かなかった私に、
命の尊さを教えようと考えられたのか、脈を取るよう指示されました。テレビドラマ
で「〇時〇分、ご臨終です」というシーンはよく見かけますが、医者でない私にとって
は、最初で最後の経験でした。冒頭の歌はその時のことを詠んだものです。
父の口癖は、「冬来たりなば春遠からじ」でした。じっと耐え忍んでいれば幸せが
来るということわざです。父も、いつの日か春が来ると信じ、自分と家族に言い聞か
せ弱い体で働いてくれました。そんな父に、生きている内に「春」を迎えさせてあげ
られなかったことを、子としては悔やんでいます。