青い鳥症候群

 昭和58年、清水將之さんという大阪大学医学部卒の臨床精神科医が書かれた『青い鳥症候群』は、
今も古臭い昔話ではありません。むしろ現代への警告、予言の書といっても過言ではありません。よく
話題になる「モラトリアム人間」も根源は同じだと考えます。
 東京大学法学部(文一)を出た青年が大きな一流企業に就職する。自分の能力に相応しい仕事が与え
られることを期待するが、新卒の人間にそのような仕事が与えられるはずもなく失望し、より小さな会社な
らば自分の能力が発揮され周囲から賞賛されるだろうと夢見て転職する。しかしまたも期待を裏切られ、
それならばと司法試験を受験するが筆記試験はともかく面接が苦手で何度受けても不合格の繰り返し。そ
んな青年の生き方を例に精神科医という立場から問題点を分析した本です。
 自分の思い描いたイメージと現実のギャップに耐えられない。全てを他人のせいにして責任を転嫁す
る、対人関係に不器用で堪え性がない、生活を安直に考え、先の見通しや状況を考えない人間。そんな
人間は過去のもでしょうか。周囲を見渡せば決して減るどころかむしろ増えていることに気付かされると思
います。
 高校や大学の新卒者の離職率や離婚の多さは、昔の比ではありません。どこかにもっと自分に相応しい
人がいると努力や忍耐をしないで「青い鳥」を探し求める。誤っていることは明らかです。
 「青い鳥」はあくまで「非在の理想」だと認識し、自分の足元を見つめ直す。抽象的ですが「成熟した大人」
への階段を一段ずつ上る覚悟をすることが「はじめの一歩」ではないでしょうか。

   

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