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            朝日村SRI研究会活動報告(NO.3 20131009作成)
                                      

T現状報告

1今井の田
 比較的水分を多くして育てたことが影響したのであろう、3枚の試験圃場の中ではよく育ったほうだ。
 それでも初期育成の遅れが、ぶんげつの弱さとなって現れた。
 背丈、穂の大きさは標準となった。
 刈り取りの総量から推定して、収量は、300kg(8a)程度と思われる。

2針尾の田
 初期に乾燥を強くし、深い亀裂が入った。
 粘土質の土が収縮し、極端に言えば干しレンガの中に若い根を閉じ込めた形になった。
 この影響で、根が成長せず、背丈も穂の大きさも80%程度にしかならなかった。
 穂揃いは、3週間遅れとなった。
 この田の特徴は、周辺部の成長がよいということである。
 肥料はほぼ均質に散布されいるので、これ以外の要因であると考えられる。
   これは、代掻き作業において、中心部がよく練れて、周辺部は土がほぐれていた関係で差異が生じていると考えられる。
 このことから、SRI農法には、粘土質ではない土壌か、無代掻きが向いていると思われる。
 粘土質土壌においては、代掻きをする場合は粗くすること、水分飽和状態を維持することが大切だと思われる。
 10月20日ごろの収穫予定であるが、収量は、他の田の20%程度と極めて少なくなりそうである。

3御馬越の田
 水の管理は、針尾の田と同じに展開している。
 標高が高く日照時間が少ないことが少なからず影響しているが、ぶんげつが弱い。
 穂揃いが、他の田より1ヶ月遅かった。
 この他の収量も20%程度と思われる。
 この田の特徴は、代掻き時に均平が出ていなく、中央部に水がたまる構造となっていた。
 その部分の成長がよくない。むしろ、早く水が無くなる箇所のほうが比較的にではあるが成長がよい。
 この現象をどのように理解するべきか、難しい。好気性栽培にしているのに過湿状態となって、根に対する酸素供給の差  が生まれていると考えられるが、他の原因があるかもしれない。今後解明するべき事項である。

U来年に繋げる課題

1 施肥方法について
 NO.2報告書にも記載したが、追肥型が望ましい。
 SRIの場合、表面に近くに根が張る関係上、全層施肥にすると、肥料が拡散し、初期に肥料不足となりかねない。
 SRIの場合、元肥を全層施肥するとして、田植え後、あまり間をおかずに表面施肥をする必要がある。
 初期成長を重視する観点から、アミノサン肥料が好ましい。
 追肥分の残り50%を田植え直後、1ヵ月後、および穂肥と3回に分ける方法を考えてみることにする。
 肥料は、堪水型の田も共通に発酵鶏糞とアミノサン肥料を使用しているが、これは変えない。

2 好気性栽培について
 圃場の土の表面が大気に触れている状況を維持すると同時に、過湿を避けることが同時に必要である。
 入水口に近い箇所はどうしても過湿になる。溝を設置して、排水を確実にすることが必要と考える。

3 機械植えについて
 乳苗機械植えの湛水型の田は、一株の茎数が40〜50本と大株になり、少し過剰気味である。
 植え付け本数をもっと絞る必要がある。
 乳苗の活力を最大限に発揮するために、初期育成を大事にすることが重要な点だが、そうすれば、機械植えで数本の株となっても初期の立ち上がりがよければ、ぶんげつは可能と思われる。

4 初期の水管理について
 今回初めてのSRIということで、手探り状態でスタートしたが、初期の水管理は、慎重に行う必要を感じている。
 田植え後、今井は3日に1回、ほかの2箇所は1週間空けて入水としている。
 この間、雨も少なく、乾燥気味になった。
 大きく深いひび割れが走ったということは、土がそれだけ凝固したということを意味する。すなわち、固い土に根が包囲されたということになる。
 初期には、連日または2日に1回、入水・落水を行って、土が固まらないようにする必要がある。
かつ、確実に表面が大気に触れるようにするためのみならず、過湿にならないようにするために、水溜りがないほうがよい。
 SRI農法において、水管理についての定説がないように思える。当然、気象状況、土壌の差異という、重要な条件・要素が考慮されるべき事項なので、定説がないことが正しいと思われる。
 SRI農法の本質的規定としては、乳苗を田植えし、水分飽和状態を維持しつつ好気性栽培を貫くということであろう。
 降雨条件、地質が粘土質か否か、地下浸透の程度など諸要素を勘案して、個別具体的に最適な水管理をおこなうことであろうと考える。
 したがって、初期育成を重視する観点から生まれる、育成前期堪水、後期間断潅水という考えは、ひとつの稲作の育成方法であって、SRI農法とは別のものと考えるべきではないだろうか。
 程度の差はあれ、潅水、地表露出を繰り返す好気性栽培として、初期育成を丁寧におこなうことが私たちの課題であると考える。

5 乳苗について
 乳苗の作り方については、今回はじめてであるが、元気な背丈120mmの苗を作ることができた。
 課題としては、遮光、加温育成の折に、アミノサン液肥をかけて根を一層強くする方法を考えたい。

  6 草対策
 今井の田は、コナギが一面生える田でしたが、今年は1本も生えていない。コナギは嫌気性の条件で多発すると言われている。
 そのかわり、畑に出る草が激しく茂った。
 初期に、水を張った状態で機械除草をおこなう必要がある。
 その後は、条間を、草刈機で刈ることにする。

V 来年の計画

 SRI農法の試験は、今井の田(8a)にておこなう。(水管理を自分でできる利点がある。)
 針尾の田(8a)は、乳苗+前期堪水 後期間断潅水の方式を試してみることにする。
 御馬越の田(4a)は、古代米を栽培する予定で、乳苗・堪水型とする。
 また、他の3枚の田(合計35a)は、乳苗・堪水型とする。

W 生育状況

今井 10月8日 刈り取り前今井 10月8日ハザ賭け
針尾 10月9日 周辺部御馬越 9月22日 穂揃い