Photo Documentary - Panca Bali Krama '99

2nd. Story - 神への奉納

Photographs and text by Nobuya Ohki

クルンクンの寺院で一夜を過ごした神々の一行は、翌朝ブサキを目ざして出発した。行きとは異なるルートを通りながら、途中2つの村に立ち寄る事になっていて、私は2つ目の村で一行が来るのを待つ事にした。すでに寺院の前では2人の中年既婚女性が歓迎の舞を披露しているところだ。

image4我々人類は、これまで文明や科学によって様々な謎を解きあかしてきた。それも今では地球上だけではなく、宇宙にまで及んでいるが、まだまだ地球上には解きあかされない謎が沢山残されている。いや、まだまだ解らない事だらけと言っていいかも知れない。

それは、神々の一行が寺院に到着した時であった。先程まで歓迎の舞いを披露していた女性達も、他の村人と一緒に地面に座り手を合わせながらお祈りを始めていたが、やがて最後尾にひかえた例の白くて大きなジュンパナが到着すると、以前よりは激しくないものの、相変わらず前後左右に揺れるように動いていた。一瞬、辺りが不穏な空気に包まれ、待機していた村人達は合わせた手を頭上高くかかげる。そして、突然目の前に居た数人の若者たちが奇声を発しながら暴れ始めたのだった。必至に回りの者が取り押さえると、彼等は崩れ落ちるように倒れてしまい、プマンク(僧侶)がティルタ(聖水)を振り掛け、ようやく正気に戻された。暫くの間、何があったのか解らないといった感じで呆然としていたが、役割りを終えた若者たちは、間もなく立ち去ると、儀式は平然と進められていった。

image5寺院の儀礼では、神々の為の舞踊が行われるが、舞踊にはそれぞれ宗教的意味あいを持たせたものが多い。

儀礼の一部として奉納される舞踊としては、ルジャンやバリス・グデといったものが一般的だが、これらの舞踊はワリ(奉納)と呼ばれ、娯楽性が薄いなどの性質上、踊り自体は単調そのもので、観賞向きとは言い難い。とは言っても、かわいらしい子供達がきらびやかな伝統衣裳に身を包み、一生懸命踊っている姿は、儀礼の時にしか見る事が出来ないものであり、それだけでも十分価値があると言える。

ルジャンが終わると、ブバリのトペン(仮面劇)とワヤン(影絵芝居)がほぼ同時に行われる。ワリが純粋な儀礼の為に行われる一方で、ブバリは娯楽の性質と奉納の中間的意味合いを兼ね備えていて、見ている側も十分に楽しめる。だが、この時は儀礼の最中とあって、舞踊を眺めている者はほとんど居ない。それは、これらの舞踊が、神々への奉納として演じられていることの証しでもあった。

image6この日のトペンは、イ・グスティ・ラナンによって演じられた。彼の踊りをホームグラウンドで見る事が出来たのは、とても幸運な事である。なぜならば、彼は、高級リゾートとして有名なアマンダリや、バリだけでなく、アメリカを始め、海外公演もこなすほど有名な踊り手だからだ。そして、儀礼の行われた寺院のすぐ近くで、彼は暮らしていたのだ。
トゥア(翁)からダラム(王)、そしてシダ・カルヤ(魔神)と、トペンはその役によって次々と面を替えていく。特に、一人で演じる場合には、身体の動きだけでその役を表現しなければならず、かなりの集中力が必要とされる。特に、儀礼の際などは、舞台が用意されているわけでもなく、観客が居るわけでもないのだが、さすがにその隙の無い完璧な踊りには圧倒させられた。

>>>つづく>>>


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