クルンクンの寺院で一夜を過ごした神々の一行は、翌朝ブサキを目ざして出発した。行きとは異なるルートを通りながら、途中2つの村に立ち寄る事になっていて、私は2つ目の村で一行が来るのを待つ事にした。すでに寺院の前では2人の中年既婚女性が歓迎の舞を披露しているところだ。
それは、神々の一行が寺院に到着した時であった。先程まで歓迎の舞いを披露していた女性達も、他の村人と一緒に地面に座り手を合わせながらお祈りを始めていたが、やがて最後尾にひかえた例の白くて大きなジュンパナが到着すると、以前よりは激しくないものの、相変わらず前後左右に揺れるように動いていた。一瞬、辺りが不穏な空気に包まれ、待機していた村人達は合わせた手を頭上高くかかげる。そして、突然目の前に居た数人の若者たちが奇声を発しながら暴れ始めたのだった。必至に回りの者が取り押さえると、彼等は崩れ落ちるように倒れてしまい、プマンク(僧侶)がティルタ(聖水)を振り掛け、ようやく正気に戻された。暫くの間、何があったのか解らないといった感じで呆然としていたが、役割りを終えた若者たちは、間もなく立ち去ると、儀式は平然と進められていった。
儀礼の一部として奉納される舞踊としては、ルジャンやバリス・グデといったものが一般的だが、これらの舞踊はワリ(奉納)と呼ばれ、娯楽性が薄いなどの性質上、踊り自体は単調そのもので、観賞向きとは言い難い。とは言っても、かわいらしい子供達がきらびやかな伝統衣裳に身を包み、一生懸命踊っている姿は、儀礼の時にしか見る事が出来ないものであり、それだけでも十分価値があると言える。 ルジャンが終わると、ブバリのトペン(仮面劇)とワヤン(影絵芝居)がほぼ同時に行われる。ワリが純粋な儀礼の為に行われる一方で、ブバリは娯楽の性質と奉納の中間的意味合いを兼ね備えていて、見ている側も十分に楽しめる。だが、この時は儀礼の最中とあって、舞踊を眺めている者はほとんど居ない。それは、これらの舞踊が、神々への奉納として演じられていることの証しでもあった。
>>>つづく>>> |
メールはこちらへ
Send a message to artisfoto@bekkoame.ne.jp
The World Wide Web Artis foto Gallery
Copyright (C) 2000 Nobuya Ohki (Artis foto), All rights reserved.