本日は、晴天なり。
縁側でまどろむ恋人同士。
慶次との間を無粋に割り込むように、さらりさらりと涼やかな風が吹き抜けていった。
何をするでもない、特別なことを話すでもないこの時間。
お互いを見つめ、心地よい風と光を受け、時には流れていく雲を見る。
ゆっくりと、ゆっくりと、ぼんやりとしているうちに時間が流れていく。
一見無駄とも見える、こんな穏やかな時間がお互い好きだった。
慶次は、その大きな体躯を無造作に投げ出し、の膝に頭をのせ、満足げな表情でとの時間を満喫していた。
「きれい・・・」
の指は、日の光を受け一層きらきらと金色に輝く慶次の髪を愛しげに撫で、慶次の指は、の色に染まる頬を優しく優しく撫でていた。
(とろけそう・・・・)
は、本気でそう思っていた。
慶次の、まっすぐな熱っぽい視線に。
優しく頬を滑る、無骨な指先から伝わる熱に。
そして、だんだん音を早めていく自分の脈に。
火照る頬に。
だんだん内側から外側から、溶かされてゆきそうだった。
「・・・そんな表情をさせてるのは俺かい」
濡れた瞳を無自覚に向けるが可愛くて仕方がない慶次は、これからどうしてやろうかと、嬉しそうに、いたずらっぽい笑みを向けた。
「嬉しいねぇ。そんなに俺のこと好いていてくれてるのかい」
「え・・ええ!?」
どんな表情をしていたのだろう。
は、咄嗟に顔を手で覆ってみたが、もう遅い。
すぐさま慶次にその手をこじあけられ、その顔はもう一度慶次の目にさらされる。
「さてと、じっくり見せてもらおうか」
迷いのない奥の奥まで見透かすような慶次の視線。
は逃げる。
その視線から。
しかし、その視線は追ってくる。
熱く熱く、絡みついてくる。
は、たまらず逃げようと身をよじった。
しかし、相手は猛将で名の知れた前田慶次だ。
おさえられた両手はびくともしない。
ああ、逃げられない。
いよいよ、は、覚悟した。
慶次の視線に捕らえられるのを。
は、ゆっくりと視線を合わせた。
「―――っ」
どくん、と、心臓は大きく鳴った。
想像以上だった。
慶次の探るような強い視線。
その視線は、の全て、隅から隅まで突き刺すように、容赦なく降り注ぐ。
見られているだけなのに。
ただそれだけなのに、恥ずかしさのあまり、の頬の色はみるみる熟していく。
「色っぽいねぇ・・・俺を感じてるのかい」
この人は、こういうことを平気な表情で言う。
は、沸騰寸前になりながらも、こくんとうなづいた。
慶次は、ようやく堕ちた恋人に、破顔した。
その笑顔は、まるで、お日様のよう。
ああ、弱い。
この人のこういう顔にたまらなく弱い。
「もっと見せてくれ」
のばした慶次の手は、の頬を通り過ぎ、優しく頭を撫でた。
の敏感になった身体は、小さく震えた。
「・・・ほんと可愛いねぇ」
頭を引き寄せられ、慶次の顔がぐっと近づく。
「好きだぜ、」
息がかかるほど近くで囁く言葉は、蜜のよう。
甘く、甘く。
もっと、もっと、と欲しくなる。
は、そっと目を閉じた。
の濡れた唇に触れた熱いものは、もっともっと甘い蜜だった。