みんな一緒の道を歩いてきたはずだったのに。
ひとつの終着点を目指して歩いていたはずなのに。
いつの間にか、道は別れ、別々に歩きはじめた。
それぞれの道。
後悔しても、しなくても。
それがどんな結果でも、自分が選んだ道だから。
自分が信じた道だから。
元号は“明治”と名を変え。
ひとつの戦いは、終わった。
□ □ □
私たちは、風間さんとお千ちゃんと一緒の村に住んでいた。
あの目まぐるしく争った時が嘘だったように、今は静かな時間を過ごせている。
私たちを突然巻き込んだ運命は、これからも切り離せないもので。
それでも受け入れて、私たちはこの穏やかな時間を生きている。
ここは、風間邸。
今日は、ふたりで訪問し、奥の間に通された。
まもなく現れた風間さんは、平助くんの姿を見るなり、くるりと反転して言った。
「誰かいないのか。侵入者だ」
「てめっ・・・・・・!よくもまあ、そんなことぬけぬけと!俺は客だっつーーーの!!」
「ん・・・・・・?客なのか、おまえは」
「きゃ く だ。 その人相悪ぃ狐目かっぴらいてよーーーく見やがれ!」
「うるさい客だな。帰れ」
どうして、このふたりはこうなのか。
会えば、こうやってぎゃんぎゃんとはじまる・・・・・。
これも一種のコミュニケーションだと思えばいいのかな。
遅れて現れたお千ちゃんも、当然呆れ気味。
あきれるよね、やっぱり。
「千影さん、そんな言い方ないでしょ? いらっしゃい、ふたりとも」
「お千ちゃん、突然ふたりでお邪魔しちゃってごめんね。ひとりで来ようと思ってたんだけど、平助くんもついてくることになっちゃってさ」
「大歓迎だよ! あ、そうだ。、これ、雪村の史料。よかったら読んでみて?」
「わー!ありがとう!前に言ってたの覚えてくれてたんだぁ!」
そんなほのぼのムードの女性陣に対して、男性陣はピリピリムード。
「てめぇみてーに、人前でサカったりしねーーーーよッッッ!!!気分わりぃ!帰る!!」
「もともと邪魔しに来たのはきさまだっただろう。それに、“愛してる”も言えないようでは、愛想をつかされるのではないか?だから、おまえはガキだと言うんだ」
「・・・・・・てめーに“男”のなんたるかを説教される日が来るなんてな」
君たちは、何の話をしてるんですか。
どこをどう発展すれば、その話題になれるんですか。
「ゴメン・・・・・・うるさいね」
「ううん。うちの人こそ・・・・・・」
「今日、帰るね。今度は、ふたりで会お。風間さん、お邪魔しました。ホラッ、平助くん、行こ!」
私は、立ち上がって、今にもつかみ掛かりそうな平助くんの襟首をつかんだ。
お千ちゃんも、風間さんの耳をぎゅうっとひっぱっている。
こう見えて、かかあ天下なんだよね、お千ちゃんち・・・・・・。
私たちは、忙しなく風間邸を後にした。
終