重厚な一室で、は組み敷かれていた。
西を束ねる強くて美しい鬼に。
昼も、夜も、なく。
首筋に噛み付かれて、は悲鳴を上げた。
それを見ると、風間は心底楽しそうに笑みを浮かべた。
意地の悪い風間に、はわずかな反抗の眼差しを向ける。
「昼間っから、こんな・・・・・・」
「こういうことをするのに昼も夜もあるのか? したい、と思ったから、する。 そういうことだ」
「う、んっ!」
反論しようとする口をふさぐように、風間の唇が重なってくる。
舌もねじ込まれて、口内を蹂躙され、たまらずからは鼻にかかった声が自然と出てしまう。
風間は、その声を聞いて満足げな笑みをもらす。
「ほう・・・・・おまえの口は、不満しかもらさぬのかと思ったら、甘い声も出るようだな。素直なおまえも新鮮でいい」
「や、めて・・・・・・誰か、来る」
「聞かせてやればいい。おまえは俺の女だと、皆にわからせてやる。存分に啼け」
「きゃ・・・・・・」
指先が。
舌が。
の身体を奔放に滑る。
最初していた抵抗も、身体の奥から湧き上がる快感に、たちまち力を失くす。
代わりに、口からはあられもない嬌声が、自然と出てきてしまう。
これでは、風間の思惑通りだ。
そう内心思ったが、その気持ちさえも風間は奪っていく。
「夜の月明かりの下のお前の肌もいいが、明るいうちのおまえの肌も美しいな」
「や・・・・・め・・・・・・・」
「・・・・・まだそんなことを言えるとは、余裕があるのか、それとも本音なのか。・・・・・・おまえの身体に訊くとしよう」
風間は、指をつぷりとに埋めた。
「あぁ!」
「ふん・・・・・・口と比べて身体は正直なようだな」
見ろ、と指をの目にさらす。
「こんなにして、誘ってるくせに」
風間は口角を上げ、つ、と指をに這わせると、それは艶かしく光っていた。
風間は、見せ付けるように舐める。
ちゅ、と音までたてて。
その官能的な風間の仕草に、たちまちの顔は赤くなった。
そして、羞恥に視線は自然とはずれた。
「こういうことをする時くらい、こちらを向いたらどうだ」
風間の手はの顎をとらえ、強制的に自分の方に向かせた。
「俺を見ろ」
赤い―――
赤く光る瞳。
「覚えておけ。おまえを狂わすことができるのは、新選組の誰でもない。目の前にいる俺なのだからな」
その赤い、熱い眼光になすすべもなく囚われている―――
なんて、風間には言えない。
代わりに出るのは、また否定の言葉。
「・・・・・・馬鹿」
「ふん、俺に馬鹿と言える女鬼はおまえくらいだ」
風間は、愉しそうに笑うと、に口付けた。
「しかし、その“馬鹿”さえも、今は愛の言葉にしか聞こえんがな」
「まったく・・・・・・風間にも困ったものですね」
「3日も出てこないとはな。ああ、あいつは異常だ。エロ大魔王だ」
「男鬼と女鬼の体力が違うことくらい知らないはずがないだろうに。が心配です」
「じゃあ、呼びに行くか?」
「・・・・・・不知火、行ってくださいますか」
「俺は御免こうむる。おまえ、行けよ」
「いえ、人の閨を邪魔するような無粋な真似はしたくありません。呼びに行こうと提案したのは不知火です。言いだしっぺの人が行ってください」
「てめえ・・・・・俺に死ねと言うのかよ! のことが心配だと言ったのはてめえだろうが!」
「交渉決裂ですね。仕方ありません。にはもう少し頑張ってもらいましょう。里の平和のために」
くわばら、くわばら。
二人の背中から、そんな声が聞こえてきそうだった秋の夜長のできごと―――
2009.9.5