その眠りを守るもの


「マイクロトフを知らないかい?」
呼び止めた青騎士は、美貌の赤騎士団長に頬を染めながら威儀を正した。
「本日午後はお時間が空いておられるとかで……先ほど東棟の中庭に向かわれたようですが」

 

そう、午後に時間が空くのは知っていた。

 

カミューは微笑んで青騎士に礼を述べると、教えられた道を進み始めた。
所属が分かれても、互いの予定は出来る限り把握するよう努めている。そうして束の間の語らいの時間を作り出すことが多忙なる二人の小さな喜びとなっていた。
珍しくもぽっかりと空いた午後、確かマイクロトフも同様だったことを思い出した。そこで訪ねてきたのだ───短い平穏たる逢瀬を果たすために。
彼が一人の余暇をどう過ごしているのか、そんなことにも興味がある。生真面目に背筋を正して読書にでも勤しんでいるのか、はたまた一人剣を握っているのか。
前者ならば傍らで、男の横顔を眺めるのも悪くない。後者であったら、久々に相手をしてみるか。
ゆったりとしたカミューの歩は、しかし中庭の入り口にて止まった。
城内に設けられた庭は、各々がそれなりの広さを持っている。主に青騎士団が使う東棟のここも、生い茂る緑に包まれていた。
そんな庭の片隅、大きな樹木の下に見慣れた青い色彩が転がっている。足音を潜めて寄ってみると、ご丁寧にも地面に毛布まで敷き込んで寝入る男の穏やかな顔が迎えた。

 

───何とまあ、無用心な。

 

確かにここは騎士団を戴く居城、犯意を持つものが容易に侵入出来る場所ではないだろう。
しかし騎士団長ともあろう身が、かくも呑気に寝こけているのは如何なものだろう? カミューは半ば呆気に取られながら眠る男を見下ろした。
静かに屈んで窺ってみると、マイクロトフの表情が微かに歪んだ。本能的に他者の存在を間近に感じたためであろう。けれど、次には安らいだ、むしろ幸福そうとも言える表情になって寝息を取り戻した。
「……呆れたね」
苦笑しながら小さく呟く。男は無意識にカミューの気配を察しているのだ。傍らで眠りを見守る伴侶の存在を───

 

「……しょうがない。ならば僭越ながら、わたしが張り番を勤めさせていただくとするか……」
カミューは空いた毛布に腹ばいに横たわると、男の艶やかな黒髪をそっと撫でた。
「青騎士団長マイクロトフ殿。赤騎士団長カミュー、これより貴君の警護の任に就くことをご報告申し上げる」

 

 

───任期は、黒き瞳が見詰め返す瞬間まで。

 

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……って、全然護衛にならずにラブってるような(苦笑)

こちらのお宝は29NOSTALSIA様にて
200ヒットを踏んでいただいた眠り青v
リク内容は

「眠り青の髪を弄るまさぐると読む。いぢくるではなく)赤の

だったのですが……
あーもう、あーもう〜〜〜!!(←暴れている)
とのた様、垂涎もののイラストをありがとうございましたv
二人は仲良く眠りこけて部下に迎えに来てもらうことでしょうv

 

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