水面の影
もし───
もし、騎士であることを選んでいなかったら?
戦いの後に、心の声に耳を澄ませるときがある。
「つとめ」の名のもと、命を摘み取ることは罪悪ではないか、そう自問する夜は多々あった。それでもひとたび選んだ道を、振り返り嘆くつもりもない。
常につきまとう矛盾を抱いて、先に進む生き方しか知らない。身体に浴びた返り血を流す。
戦火に燃え上がった身体を鎮める。
こうして深夜、ひっそり繰り返してきた習慣は、多分一生手放せない。水面に移る自分の顔は、どこか哀しげに見える。
屠られた命を惜しんでいるのか、あるいは他人の屍の上に存在する自分を蔑んでいるのか。
真の誇りの行方を未だ模索していることに焦燥を感じているのか───。
だが、きっと───
この感情こそが人である証。
命を愛おしみ慈しむ、それを忘れればすべてを失う。
目指す未来のためであろうと消えゆく炎を悼まねば、いつかきっと───
……じきに『彼』がやってくる。
冷えた身体を抱き締めるために。隅々まで凍えてしまえばいい。
溶かされる悦びに生命を実感できるから。遠くに呼ぶ声がする。
湖面から見返す顔はゆっくり笑みを形作る。
そして痛みは静かに深く沈んでゆく───
E.C.Sのねみさんからいただいた赤氏。
このイラストがメールで届いたときには踊ったッス。
なのに駄文で凌辱……しかも薄暗いし(苦笑)
で、でも寛大なねみさんだから、きっと許してくれるだろう……。