愛が試されるとき・8 ──淫獣の囚われ人──
ベッドに並んで腰を下ろしてからも、しばらくカミューは無言だった。
マイクロトフにしても衝撃であろう事実をどう切り出すか、思いあぐねているのだ。いつもならば反射の速度で巡る思考が鈍い。それが体調からくるものなのか、別の理由からなのか、わからなかった。
「…………カミュー、話してくれ。おまえの苦しみはおれの苦しみだということを忘れないでくれ────。おれはおまえの力になりたい。もし、逆の立場だったらと考えてみろ。おまえは何があってもおれのために力を尽くそうとしてくれるはずだ」
力強く訴えるマイクロトフ、肩に掛けられた大きな掌。それに励まされてカミューはぽつぽつと切り出した。
「わ、たしは……一度だって……おまえ以外の他人に、心を……移したことなど、ない────」
唇が自分のものでないかのように、上手く話せない。改めて自らの異変に怯えたカミューに、マイクロトフはしっかりと頷いた。
「わかっている。……すまなかった、あれはおれの思い違いだ……責めたりするべきではなかった……許してくれ」
「わたし、は、おまえ……だけ、だ…………マイクロトフ…………」
がたがたと震え始めた肩にぎょっとして、マイクロトフは彼の顔を覗き込むように姿勢を屈めた。
「わかっている、わかっているとも。大丈夫だ、おれも同じだぞ、カミュー」
マイクロトフ自身、ここまでカミューが追い詰められているとは思っていなかった。怯え切ったウサギのように震えるに至っては、自分の知らない傷の深さを見せつけられるようでたまらなかった。
「信じて…………くれ、信じ…………」
ほとんど自分の声が聞こえていないようなカミューの様子に、焦燥を募らせる。だがカミューもまた、苛立っていた。完全に日が落ちる前にすべてを語り尽くさねばならないというのに、言い訳のような言葉しか吐けない自分に。
「信じる、信じるとも。カミュー…………信じているぞ」
しっかり抱き締めると、縋り付くようにしがみつく腕。その腕がひどく細くなっているのに今更のように気づき、マイクロトフは歯噛みした。
どうして昼間すぐに気づいてやらなかったのだろう。見れば二回りも痩せているようだ。食事を運んでやっても、大半を残してしまう。ひょっとしたら、口に入れたものも戻していたのかもしれない────。
「大丈夫だ、おれがついている。必ず守るぞ、カミュー」
慰撫するようにぽんぽんと背中を叩くと、腕の中で小さな抗議が上がった。
「わたし、は…………子供か…………」
マイクロトフは優しく笑った。
ああ────いつだったか、同じようなことがあった。そのときも、この恋人はそう言ってむくれたのだ。
「さあ、話してくれ。何を聞いても驚かない。おれが大事なのはおまえだけだ、カミュー…………」
カミューは男に抱かれたまま、低い嗚咽を洩らし始めた。
幼子のように無力な恋人、疲れ果てた魂の伴侶。
マイクロトフは痛ましさを堪え切れず、目頭が熱くなるのを感じた。
「…………あの紋章を、宿したとき……のこと……覚えて、いるか?」
相変わらず思うように働かない口に舌打ちしそうになりながら、彼は尋ねる。
「ああ、この何だかわからない紋章か」
マイクロトフは左手に宿っているはずの紋章を睨み付ける。これを宿してから、おかしなことが始まった。夜の記憶を失うことも────カミューが衰弱していったのも。
「そう言えば、外すのを忘れていたな…………おまえを探すのに忙しくて」
場を和らげようと殊更に朗らかに言ったマイクロトフだが、見上げるカミューの必死の琥珀に出会って息を飲んだ。
「外せ、ない…………」
「何だと?」
「それ────ハルモニア……神官、が…………」
次第に薄れていく言語への反応と鈍くなる一方の思考にカミューは焦れた。どう説明するか、それなりにシミュレーションしたつもりなのに、考えているように口が動かないのだ。意志と行動が分かれている────さながら昨夜の狂乱のときのように。
彼は激しく首を振り、自らに裏切られる憤りをぶちまけた。マイクロトフは慌てて彼を抱き締め直した。
「落ち着け、カミュー。ゆっくりでいい……大丈夫だから、ちゃんと聞いているから…………」
ゆっくりしてはいられないのだ、とカミューは必死に言葉を搾り出した。
「……い、『淫欲の紋章』…………」
「────淫欲?」
恋人の震える唇から洩れた聞き慣れない言葉に、マイクロトフは眉を顰めて聞き返す。
「淫欲……、と言ったのか……?」
「そ、そう…………破壊と、殺戮を……こ、のむ魔物……淫獣と…………」
「────インキュバス??」
ますます理解不能の呼称が出てきて、マイクロトフは目を丸くする。それでも、自分の衣服のベルトを掴み締めて言葉を振り絞るカミューは真剣そのものだ。
「淫獣、が…………封印…………ハルモニアから……ハイランド、『器』を選んで…………取り、憑く…………」
切れ切れの言葉を、マイクロトフは相手に負けない必死さで繋ぎ合わせようとしていた。
「人間、『器』…………されて、周囲を……殺し……壊す────四百年前、ハルモニア、神官…………封印した…………」
「────殺戮と破壊を好む魔物……淫獣という奴が、四百年前にハルモニアの神官に封印された……のだな?」
「そう、だ────」
彼はマイクロトフが正しく理解してくれたのが嬉しく、それ以上に肝心な部分を繰り返した。
「あの……封印球から出た霧……、淫獣、実体がない……のかも、しれない。奴…………人間に、取り憑いて…………う、『器』、言っていた……」
ぞくりとマイクロトフは総毛立った。おぼろげながら、カミューの言わんとしていることに察しがついてきたのだ。
「さ、最初……月が天の真上、来たときから…………日の出まで、……段々、時間が長く…………」
「────待て、カミュー。おまえ……おれに、……おれにその化け物が取り憑いていると、そう言うのか?」
マイクロトフはおぞましさに叫んでいた。カミューは哀しげに瞬いて、それから小さく頷いた。愕然とした男が大きく首を振る。
「う、そでは…………おまえ、二日眠って────淫獣が、同化する……時間……だと────」
「…………何てことだ!!」
マイクロトフは両手でカミューの肩を掴んで胸から剥がし、その青白い顔を凝視した。
「おれは夜になると記憶がなくなっていた。その間、その…………淫獣とやらに操られていた訳か?!」
カミューは弱く頷いた。
「ならば……ならば、まさか……おまえのその身体…………それは、おれがやったのか?! おまえがずっと体調を崩していたのはそのためだったというのか!!」
「おまえ、……ない……あれ────違う……」
彼は激痛を堪えているようなマイクロトフの胸に手を押し当てて言い募った。
「おまえ……何も、知らない────おまえの、所為…………ない、絶対……違う」
「カミュー……────」
「淫獣は……破壊と、殺戮、凌────辱、求める……。逆らったら、おまえ……身体使って、城……仲間、殺す…………と────だから……」
「────馬鹿な!!」
マイクロトフは涙ぐみながら恋人をきつく抱いた。
「どうして…………何故もっと早く言わなかった?! そんな酷い目に遭って────独りで!!」
琥珀の双眸にも涙が溢れた。
────こうして苦しむ姿を見たくなかったからだ。
別におまえを思い遣ったばかりではない。わたしが、こんなおまえを見たくなかったのだ────そう言ってやりたかった。だが、ただでさえ上手く回らぬ舌では、この男を満足に説き伏せることは不可能だろう。だから、ただ一言だけを告げた。
「おまえ────助け……た、くて────」
「カミュー…………カミュー」
男は彼の髪を弄り、薄くなった背中を撫で、確かめるように幾度も名を呼んだ。
「だが……それでも誰かに協力してもらわねば……とてもそんな……」
「────した、……ルック殿……、彼が、一番……、詳し…………でも……」
「……そうか、一足違いに出掛けてしまった訳か。そうだな、ああ。彼は魔法にも紋章にも詳しい。見たことのない紋章だと言っていたようだが、話を聞けばあるいは封印し直す手段を知っているかも────」
『それは無駄だな、人間』
不意に間近に低い声が割り込んだ。二人は同時にぎくりと顔を見合わせる。
だが、マイクロトフの驚愕はカミューをはるかに上回っていた。
気づいたのだ、今の声が自分の唇から発したことに。
「マイ────」
『なかなか麗しい光景であったが、つまらぬことを企むのは感心せぬぞ、人間』
マイクロトフは立て続けに己の口から零れる言葉に目を見開いた。咄嗟に口を塞ごうとさえした。だが、宙に浮いた左手が途中で止まり、次にはカミューの喉首に掛かったのを見て、掠れたうめきを洩らした。
彼の手はカミューの首を掴み、ベッドに倒して締め上げ始めたのだ。
「や、やめろ!! 何だ、これは?!」
『吾がどうやっておまえの情人を楽しませてきたか、教えてやろう『器』よ』
戯画のようだった。
マイクロトフの唇からは、本人と淫獣の言葉が交互に発せられる。そのいずれも同じ声で、口調や内容だけが人格を分ける。
『くだらぬ労わり合いをしていて気づかなんだか? すでに日は落ちた』
喘ぎながらカミューが目をやると、確かに窓の外は薄暗い。だが、決して漆黒というわけでもない。淫獣は太陽が大地に隠れたと同時に出てきたのだ。これは今までの中で最も早い。確実に魔物がマイクロトフの肉体を支配している証拠だ。
『愚かにして勇ましき我が『器』、そして吾に選ばれし贄なる人間よ。双方のけなげさに免じて、吾が色々と教えて進ぜよう』
くっくっと陰険な笑いを零したそばから、悲痛な声が怒鳴る。
「────貴様か、貴様が淫獣か!!」
『そう、吾が無窮のときの流れの中を漂ってきた一体の魔。仲間もなく、情を交わす伴侶もなく────破壊と殺戮を宿命づけられた孤独の神。だが、吾はあるとき知り得た。浅ましき人の肉体に同化して、我が本能を満たす悦びを』
「や、やめろ、カミューを離せ!!!」
呼吸を奪われ苦しみに汗を浮かべていた額に、男のもう片手が伸び、優しく髪を払い除ける。マイクロトフの身体はカミューに馬乗りになり、そこでようやく首を絞める手が外された。
途端に咳き込むカミューを見下ろす視線は苦悩に満ちていて、マイクロトフ自身のものであることをカミューに伝えた。
『────吾は人間を狩った。『器』を得て、その肉体を思うがままに操り、他の人間を殺した。すべてを壊し、燃やし────瓦礫の山に人の血肉を注いだ。だが、どうだ? 人に同化するようになって、新たな欲望が生まれたではないか』
面白そうな口調が言う。マイクロトフの左手が淫らな動きでカミューの肢体を撫でた。
『……無力な生き物。犯され嬲られても、死ぬよりはいいらしい。吾に跪き、命乞いしながら這いつくばる無様な生き物、人間! 死ぬよりは犯される方が良いと……だから望み通りにしてやるのだ。結果として死んだとしても、それは吾の責ではない────そうであろう……?』
「…………何てことを……」
マイクロトフは込み上げる憎悪に戦慄いた。だが、その対象が自分の中にあるとあっては、剣に物を言わせることも出来ない。
「──そうやってカミューも嬲りものにしたのか!! くそっ、よくも……!!」
マイクロトフは咄嗟に思った。
これ以上愛する相手を苦しめるくらいならば、いっそ────
見上げるカミューは、男の目に光る決意を正確に読み取った。
「だ、駄目…………やめ────」
『無駄だぞ、『器』。おまえが自刃すれば、吾は別の『器』に移る。今度はおまえ以外の肉体が情人を得ることになる』
「な、何だと…………ッ」
『無論、その逆もしかり。贄よ、おまえが自らの命を捨てるとあらば、吾は『器』の身体で殺戮を行う────ああ、これはもう幾度も教え込んだな』
慰むような左手がカミューの頬を撫で回した。
それを聞いてマイクロトフは完全に理解した。カミューはずっとそうやって脅され続けてきたのだ。逃げ場のない窮地に追い込まれ、その中で弄ばれてきたのだ。
だから、これほど傷ついたのだ────あのなめらかな会話を失うほどに。
『四百年────四百年ぞ!! あの忌々しい神官共にはめられて、まんまと封印された屈辱…………気が狂うほどの長いときを吾は待った! 待ち侘びた!!!』
「貴様のような外道など、この世界の終わりまで閉じ込められていれば良かったんだ!!!」
『……そう言うな』 淫獣オーランドは嘲笑った。 『吾はこれでもおまえが気に入っておるのだぞ……? 強い腕、逞しき肉体────代わりにおまえに尋常ならざる力を与えてやっておるではないか』
「そんなものはいらない!! 出て行け、おれから出て行けッッッ!!!!」
滑稽な芝居でも観ているようだ────カミューはぼんやり見上げながら思った。
一つの口から代わる代わる洩れる声。
マイクロトフの意識と魔物の意識が同居する身体。
マイクロトフの怒りが極限を超えているのは確かだが、淫獣の調子はあくまで軽く、立場の優位を窺わせる。
『……つれないことを言うな、『器』よ。一人の人間を共有している仲ではないか…………』
ふと、声の調子が変わった。
マイクロトフの両手がカミューの襟に掛かり、鈍い音を立てて衣服が引き裂かれた。その刹那、絶叫が迸る。
「何をする、やめろ────!!!!」
『見せてやろう。おまえの情人が如何にして吾と交合ってきたのかを』
「ふ────ふざけるな、くそっ、離せ!!!」
ほとんど茫然自失状態だったカミューも、ようやく濁った頭に灯が点いた。弱々しくもがきながら、服を毟る手に抗う。
「い、やだ…………」
こんなことは耐えられない。マイクロトフの目が、意識がそこにありながら、別の存在に抱かれることだけは。
「くッ……カミュー、逃げろ! 逃げてくれ!!!」
悲鳴が叫んだ。一瞬だけ右手の拘束が弱まった。カミューは死力を振り絞って凌辱者を跳ね除けようとした。だが、マイクロトフの左手がすかさず彼の頬を殴りつけた。容赦ない一撃に切れた唇から飛び散った血が、枕を赤く染める。
マイクロトフはこれ以上は無理だというほど目を見開いた。自分の手が愛する相手を殴りつけたのに仰天したのだ。
「な…………」
『何を驚いておる、『器』よ? その手が幾度この男を打ったか知りたいか? ああ────吾も覚えておらぬわ。おまえはどうだ、人間?』
ぐったりと伏せたカミューの髪を捉えた左手が、ぐいぐいと揺さぶって答えを促す。無論、彼にとてわかるはずもない。
『……それだけではない。肩を外したことも、骨を砕いたこともあった────そう、ナイフで切り裂いたこともあったな、可愛い贄よ?』
揶揄するような言葉の合い間に、男の手が乱暴にカミューを仰向かせ、その下肢へと向かう。下腹を辿り、秘められた箇所を揉み込んでいく。
「……あ…………っ」
耐え切れずに洩れた喘ぎは濡れていた。カミューは唇を噛み締めてそれを塞いだ。
『耐えることはない、おまえはこれが好きであろう……? 痛い思いをするばかりでもなかったはずだ、自ら吾を求めたこともあったではないか』
「ち、がう……────」
「よせ!! カミュー、逃げろッ」
半端に残った衣服の中に潜り込んだ掌が直に肌を這い回るに至って、カミューの抗いは潰えた。次第に衣をずらされ露にされる下半身に、淫らな感触が伝う。耐え難い快楽の波が立て続けに彼を襲った。
「いや、だ…………、嫌────ああ…………」
「くそっ…………誰か────誰か来てくれ!!」
終にマイクロトフは助けを求めた。こんな状態を他人に曝すのは屈辱だ。自分にも、何よりカミューにとって。だが、こうなってしまっては恥も外聞も捨てるしかない。恋人を助けるためには一切を忘れるしかなかった。
だが、冷たい嘲笑が遮った。
『無駄だ、『器』。吾の存在は一帯に謂わば結界を張る────誰も助けてはくれぬ』
「ち、ちくしょう…………」
マイクロトフの指は丹念にカミューを嬲り続け、途切れることのない喘ぎを上げさせていた。堪えても堪えても寄せる陶酔が、カミューの思考を麻痺させる。
それでも昨夜のように完全に肉体が自らを裏切ることはなかった。マイクロトフの意識が見守っているということが、彼を励ましていたからだ。
「は……、なせ…………っ」
『────まだ言うか、愚かな……』
淫獣は気分を害したようだった。不意に淫靡な愛撫を止め、供物の両脚を抱え上げた。
「な────何をする! やめろ、離せ!!」
マイクロトフの声が必死に叫ぶ。もはや目は零れ落ちんばかりに見開かれ、精神内における苦闘がもたらす脂汗が全身を濡らしていた。
「やめろ────ちくしょう、やめろォォォォォ!!!」長く細い悲鳴がカミューの喉を切り裂いた。
逞しく怒張した淫獣に無理矢理抉じ開けられ、一気に貫かれて迸った苦痛の叫び。抑えようにも抑えられず、そのまま乱暴に侵略されて切れ切れの泣き声が洩れる。
幾度犯されても慣れることの出来ない痛み。まして今、魔獣は淫らな技を駆使するつもりがないらしく、さながら突き殺す勢いでカミューを揺さぶり続ける。
「………………っ……」
最初の悲鳴が最後だった。喉が潰れたように声も出ない。洩れるのは殺されかけている草食獣の喘ぎ、食らいつく獣には慈悲も祈りもない。
「…………う────」
「……カミュー…………ッッッ」
ぽとり、と熱いものが苦痛に歪む頬に落ちた。霞む目をやっと開けると、覆い被さる男の顔が間近にあった。
マイクロトフは泣いていた。
最愛の人を救えぬ無力さと、淫獣への憤り、そして恋人への憐憫────
青騎士団長は生涯初めての絶望の涙を流している。
「マ…………、────」
名を呼んだつもりだった。しかし、肉体を破壊される激痛と慟哭が声を押し潰す。
「カミュー、カミュー……カミュー……!!」
文字通り、生きながら二つに裂かれていく。カミューの下肢は鮮血に染まり、見る見る顔が透き通っていった。
『────案ずるな、『器』よ。こやつは殺さぬ……吾の力に限界はない。回復しながら傷つける、癒しながら破壊する────永遠に終わらぬ営みを、その目で見届けるが良い』
高らかな嘲笑も、二人の耳には入っていなかった。
カミューは空虚に落ちていく意識の最後の一片でマイクロトフを見詰め続け、マイクロトフは壊れゆくカミューを救おうと名を呼び続けた。
「────あ……」
琥珀の瞳から光が失われた。今朝も微かに覗かせた虚ろな表情が血の気のない顔を埋めていく。マイクロトフは絶叫した。
「カミュー、おれは────カミュー!!!」
ゆっくりと閉じられていく瞳に向けて、彼は魂を込めて宣言した。
「助ける!! おれが助けるぞ、カミュー! 命に代えても────必ずおまえを助け出す!!!」
完全に沈黙したカミューは、男の身体の与える律動のままに揺れるばかり。柔らかな髪がつられて動き、その上に立て続けに男の涙が流れ落ちた。
「許さない────絶対に!! 我が騎士の誇りにかけて、貴様を許さないぞ、淫獣!!!」
オーランドは無言だった。
代わりにいっそう激しくなる暴行が答えた。
やってみるがいい、と────────
えへ(笑)。
ここまでで「崩壊編」(←今つけた)終了です。
次回より後編、「救済編」に突入します。
はい、ここで折り返しなのでした……長ェ(笑)ものの見事に色気はなくなりますが、
実はここからを書きたかったのです〜。
……といっても、誰も信じてくれない方に
3000ポッチ賭けてもいい。救済ファイブ、貴方の予想は当たるか?!
……当たると思うんだがな〜。