嫌でも口に……
「ほら、何をしているんだ。早く口に入れろよ!」
マイクロトフの鋭い叱責が飛んだ。カミューは絶え絶えの息を吐きながら躊躇する。
「し、しかし……」
「そのままなら、つらいのはおまえなんだぞ。それでもいいのか?」
「に……苦手なんだ……」
「嫌なら無理にでも押し込むぞ?」
そこまで言われて、カミューは不安げな眼差しのまま、男の示すものを口に含んだ。
途端に形良い眉が寄り、瞳が潤む。
「うっ……」
「我慢するんだ、しっかり咥えろ」
励ますようなマイクロトフの声も耳に入らない。カミューはせり上がる苦しみと戦いながら、必死に口を動かした。
「よし……そうだ。いいぞ、カミュー。その調子だ」
マイクロトフが微笑む。うっすらと涙の滲むカミューの目を愛しげに見守りながら、彼は優しくその髪を撫でた。
「ほら……、それほど苦しくなくなってきただろう?」
「ん……」
顔つきはつらそうながらも、カミューは弱く頷いた。
「な? 何事も、数を重ねれば馴れるものさ」
カミューの喉がこくりと鳴った。苦手なものを嚥下する一瞬、彼はまたもきつく目を閉じた。
「どうだ……? つらくないか?」
「な、何とか……」
やや咳き込みながらカミューは答えた。荒かった息遣いもだいぶ落ち着いてきている。
「よく頑張ったな。ああ、泣くなよカミュー……」
「す、すまない……」
「そういうおまえも……綺麗だがな……」
「マイクロトフ……」
二人が手を取り合って互いを見つめたとき、周囲から声が喚き立てた。
「おっめーら!!! いい加減にしろーーーー!!!!!」
「そうだっ。バトル中に、世界作ってるんじゃない!!!」
「カミュー! おまえもおまえだ! タコスフライくらい、さっさと食え!」
「す、すみません……辛いものはどうも苦手で……」
「マイクロトフ! てめーもサボってんじゃねーよ」
「何を言う、ビクトール殿! 苦手なものを、敢えて食わねばならない傷ついた友を励ますのも、騎士のつとめ! サボっているわけではない!!」
「そ、そうです。マイクロトフはわたしのために……。責めるならわたしを……」
「カミュー! おまえは……何て可愛いことを!!!」
「だから嫌だったんだよ、おまえら二人とパーティー組むのはよ〜〜〜! 頼むから、バトル中にいちゃつくのはやめてくれ!」
「い、いちゃついてなどいません。なあ、マイクロトフ?」
「ああ、いないとも。いつもこんなものだよな、カミュー。あ、唇にソースがついているぞ?」
「……ここかい?」
「違う、もっと左……待て、おれが舐めてやるから」
「あ、バカ……、こんなところで……おまえは……」
「…………………………………………………」
さて、このパーティーは無事に城に帰りつけただろうか?
青赤のラブラブ光線にいつも苦労なさってる同盟軍の仲間たち。
青赤をパーティーに入れると士気が落ちることでしょう(笑)
それにしても、カミュー様………………バカですね。