バカップルの始まり
夜も更けた同盟軍・本拠地の一室。押し殺した男の声が囁く。
「じ、じゃあ……いくぞ、カミュー」
「ああ……忘れないでくれ、そっと……、だぞ?」
「わ、わかっている。わかっているとも」
男の息遣いは荒かった。必死に自分を抑えている。
「くそ、暗いな……よく見えない。明かりを持って来てもいいか?」
カミューは小さな溜め息をこぼした。
「仕方ないな……」
「よ、よし。これで大丈夫だ。いいな、カミュー?」
「……早くしてくれ。この体勢は恥ずかしいぞ」
「そうか……? おれは凄く嬉しいが……」
男が屈み込む気配に、カミューは微かに緊張し、息を詰めた。男の息遣いを頬に感じる。
「いっ……痛いぞ」
「す、すまん! そっとしているつもりなんだが……」
「おまえは乱暴なんだ。もっと優しくしてくれ」
「わ、わかった。じゃ……こんな感じでどうだ?」
カミューの背筋を疼きが駆け上がる。彼はなまめかしい息を洩らした。
「あっ……」
「いいか? 気持ちがいいのか?」
興奮したようにマイクロトフが声を掛ける。答えるのももどかしく、カミューが身を捩ろうとした。
「駄目だ、じっとしていろ。傷つけてしまうじゃないか。大丈夫だ、おれに任せて……おまえは力を抜いていろ」
「あ、マイクロトフ……っ、そこ……」
「ここか? ここがいいのか? よしっ、どうだ!」
「ああ……っ」
「可愛いぞ、カミュー……もっと声を出してくれ」
「やっ……マイクロトフ……」
「嬉しいぞ、おまえがこんなふうに感じてくれるなんて……。もっと奥まで入れても大丈夫か?」
「ん……、痛いと言ったら、すぐにやめてくれ」
「わかっている。おまえを傷つけたくないからな」
マイクロトフはひどく慎重に息を吐いた。
「ここは……どうだ?」
「…………」
声が出せず、カミューは男の腕を掴むことで答えた。
「ならば、これは……」
「!!! いッ……痛い、痛いぞマイクロトフ!」
「す、すまん! つい夢中で……大丈夫か?」
「くっ……そんなに掻き回すやつがあるか! ああっ、もう……どいてくれ!」
「カミュー……」
カミューの叱責に、マイクロトフはおろおろと身体を離した。それから相手の状態にぎょっとしたように叫ぶ。
「カミュー! ああ、すまない……血が……」
「あんなに奥まで突っ込めば、血も出るさ。まったく、おまえは程度というものを知らないのか」
きつい口調で言いながら、カミューは枕もとに置いてあったタオルを取った。しかし何しろ傷の場所が場所なので、手当てしようにもどうにもならない。
「駄目だ……。放っておけば、そのうち止まるか……」
「カミュー、どうしたらいい? おれは……おれは!」
ベッドの上、ほとんど正座しかねない勢いで狼狽えているマイクロトフに、カミューは少し考えた。
自分の態度を反省し、やっと笑みを見せる。
「……いいさ、私が拒まなかったのがいけないんだ。大丈夫かな、と思ったんだが」
彼は照れたように俯いた。
「せっかくおまえが一生懸命やってくれているし……、途中まで、き……気持ち良かったのも事実だし」
感激したようにマイクロトフが顔を赤らめた。
「カミュー……」
「まあ……それでも、こう暗いと上手くいかないな。今度は昼間の明るいときに、また頼むよ」
「い、いいのか!」
「勿論さ」
カミューはにっこり微笑んだ。
「膝枕、というのが少々恥ずかしいが……耳掃除というのは、人にやってもらう方が気持ちがいいんだ。今度はおまえにもしてやるよ、マイクロトフ」
途中でネタバレしますね、すいません。
これは、青赤サークル「ちょこれG」の
小田えみさんに贈った青赤エールでした。
こんなFAXが来て、小田さんの励みになったかどうか、
それは永遠の謎でしょう(笑)。
ちなみに、青赤エールというのは、
青赤の念を送ることによって創作意欲を掻き立てる、
または青赤に洗脳する攻撃魔法です。
最近、ちょっとこの念の強さに自信を持ってきました(笑)