スズメバチの巣退治
-- 足場が悪ければプロに任せよう --
(初稿2024年3月31日)
アシナガバチは益虫
四、五月は、アシナガバチの女王が巣作り場所を探す時期である。開いた窓から家の中に入ってくる事が稀にある。家の中を暗くすれば大概出ていく。刺しに来ることはないので慌てる必要は無い。蜂の行方を確認せずに部屋から逃げ出すと危険な蜂が何処に行ったか確認できないから見張っておく必要がある。蜂が出て行ってから窓を閉めればその後安心である。
人が触れそうな場所、軒下などに巣作りを始めたら、女王が留守の間に'蝿や蚊を落とす'アースジェットを巣に吹き掛けておくと、巣は造りかけで放棄される。スズメバチの巣も同様である。キンチョールの効果はまだ試して無いが、多分効果は期待できよう。
全ての種類のアシナガバチの習性は知らないが、経験では巣に触ると攻撃され、結果として数匹分で何ヶ所も刺される。悪ガキとしては見つけた巣は落としたい。安全と思い長い竹竿でつっ突いたら竿伝い50センチの高さで襲われかけ追いかけられたようであった。後ろも見ずに吹っ飛んで逃げて草むらに伏せていたら刺されなかったが、彼らに初めて知性を感じたのはこの時だった。
もう一つの習性として、彼らは夕方近くなると巣にしがみついたまま少々の刺激では飛びたたないことを別の機会に知った。玄関脇に実生で2メートルほどに成長した松を根元から挽き倒して枝払いしていたら、40センチほどの枝に通称キブタと呼ばれるアシナガバチの巣が蜂ごとくっついていた。黄蓋とは繭の色が黄色なため六角面が全体的に黄色に見えるキボシアシナガバチの巣と蜂の俗称である。巣の大きさは直径4~5センチはあったであろうか。巣には蜂が数匹しがみついていたが、切り倒されたショックでも飛び立たず襲っても来なかった。
キブタは鳥取県八頭郡の疎開先の小学生(国民学校生)仲間に教わった呼び名だが、刺されたらひどく痛いアシナガバチだそうである。恐る恐る蜂の巣を避けながら変な体制でノコギリを使っていたら勢い余って親指を挽いてしまった。病院に飛んで行ったが爪の再生には結構時間が掛かると言われてしまった。刺されたほうが軽く済んだかもしれない。初めて世話になった外科専門という町医者のN先生は一人で丁寧な治療をしてくれた。底を抜いて筒にした35ミリフィルムケースを使って、見たこともない伸縮性のある筒状の包帯を筒状に広げて切り離し、親指にそうっとかぶせてから筒を抜いて包帯をフワリと当ててくれた。大学生だった頃の経験だったかと思うが、伸縮性のある網状で筒状の包帯が出始めた頃のことであろう。それ以後アシナガバチは夕方になると明るくても活動しなくなると信じてはいるが、全てのアシナガバチに通用するかどうかは知らない。
毛虫などを退治してくれる天敵なのでアシナガバチが庭に巣食うのは歓迎である。実際に大学のヒマラヤ杉の枝から大きな毛虫と一緒にアシナガバチが落ちてきて毛虫を噛みちぎって半分残して飛び去るのを見たことがある。天敵であることはしっかり認識しているので、我が家のアシナガバチは無下に駆除したことはない。スズメバチとは違い昼間でも巣の側に行っても攻撃して来ることはない。庭にはメダカの甕が置いてあるので、水の補給のため繁く訪れるので近くで営巣して居ることはわかる。
疎開先の仲間の自然に関する文化は高かった。釣って箱メガネに入れておいて弱りかけている魚をリリースする時の人工呼吸法とおまじないの歌とか、小春日和に竿の先や庭石のほとりで戯れて四、五匹群れ飛ぶ小型のアシナガバチでフタマタと呼ばれる小蜂がいた。この蜂は素手で掴んでも刺さないことを教わった。富山にも棲息して居るのを定年間際に気付き懐かしかった。二股か?と思い出し捕まえて調べたら二股だった。一見蛮勇のパフォーマンスを職場でお披露目したかったが、定年が来てしまい人に見せる機会は無かった。辞典を見るとフタモンアシナガバチの雄だそうである。刺されないとは書いてなかった。二股に分かれた柔らかい触覚のようなものが針の代わりにあるだけで、人の皮膚が刺せるような針は無かった。
疎開先の少年たちの蜂に関する伝承文化には、クマンバチやミツバチの個体を捕まえて蜜袋を頂戴する方法もあった。カボチャの筒状の花に入った蜂を捕まえて、お腹の中の黄色く膨らんだ蜜の袋を取り上げて食べるという当時でも残酷と思う遊びだった。花の中から逃げられないように小石で少しダメッジを与えて動けないようにして、袋を頂戴するのであるが、見よう見真似でやっていたところ、頭部が取れた蜂に胸部の足でしがみつかれ腹部で刺された。頭部の指令なしで刺されたことは驚きだった。刺されたことと4〜5匹目あたりで蜜袋が空だったこともあり、罪悪感も感じて殺戮はやめた。クマンバチは巣は作らず、軒下にしまってある杉の丸太にトンネル状の孔を開けて、花粉と蜜を混ぜた餌に卵を産むらしい。それを知らずに小刀で孔をたどって巣がないのでがっかりしたこともあった。

スズメ蜂の巣はできれば自分で排除しよう。簡単である。
生垣など手の届く範囲に巣を作られたら、アースジェットで退治できる。新品を2本買って来て、一つしか無い直径2センチほどの唯一つの出入り口に、5センチほどの距離から殺虫剤を吹き込むと、大騒ぎしてぞろぞろ飛び出して来る。ミストを浴びた半数は落下し半数は2〜3メートルほど飛び上がって落ちる。噴霧されると戦意が無くなるらしく、また神経もやられるらしく、上に飛ぶか下に落ちるだけとなる。製品の成分が変わらなければ蝿や蚊だけでなく、アースジェットでスズメバチは退治できる。
駆除する時の格好は、上に飛んだ蜂の直接の落下を避けるための帽子をかぶり、メガネを掛け、首巻きタオルをしているが、それらに蜂が触れることは一度もなかった。噴射液の勢いでスプレー側には飛べ無いのかもしれない。したがって手元にくることも無いので手袋は要らない。両手に噴射テスト済みのアースジェットを持って出入り口の真正面からトリガーを引く。7~8月頃なら蜂の数もまだ少ないので、利き手に持つ一本を数秒噴射すれば始末がつく。退治が終われば羽音がしなくなり、蜂も出てこなくなる。一本は予備である。風向きが自分の方に来る時はやめた方が良い。

防除の経験としては隣家の南面のトタン板の外壁に半球状に営巣したスズメバチの巣の防除がはじめてであった。防除の実験のためということで薬液で退治させてもらった。農学部で蜂では無いが似た体験が有ったので、通常の針より長目太目のカテラン針と注射筒と麻酔薬少々と、蜂の出入り口を塞ぐ綿栓とピンセットを用意した。防護用品は一切使わなかった。操作は簡単で、1. 綿栓を出入り口に突き刺すと巣の中は大騒ぎになる。2. 巣に針を刺して麻酔薬を注入する。3.羽音が静まったら麻酔が効いたとわかる。4. 巣を外壁から切り離してビニール袋に落とし込み密封する。4. 翌日生きている蜂がいないことを確認して廃棄る。という流れで行ったが、資材の関係で一般向きでは無い。 アシナガバチは夜は活動しないが、スズメバチは星が出ていても戻って来ることを知った。夜目が効くらしい。
次は隣家との境のアベリアの生垣に営巣された。防除には長さ約1メートルの雑草防除用カセット式ガス・バーナーの火炎の吹き付けで、直径10センチ程のスズメバチの巣を処理した。その次は職場の雑木林で木に這い上がっている蔓草のヤブガラシを引き落とす作業を丸腰でしていたら、後頭部を突かれる感じがしたので振り向いたら、目の前にホーバリング中のスズメバチがいて、にらみ合いになった。巣が近くにあるらしいと思ったのでソーッと後ずさりして退散し事無きを得た。調べたら付近にスズメバチの巣があったので報告しておいたら翌日にはもうカセット・ボンベ式で退治されていた。4年ほど前に家の生垣に直径15センチほどのスズメバチの巣ができていた。この頃からアースジェットを用いて防除した。最近の防除は玄関ドア付近の天井で巣造りが始まったので、女王蜂の留守中にアースジェットを吹きかけておいたら営巣放棄してくれた。
スズメバチはアシナガバチの天敵でもあり、人が来ない所のアシナガバチの巣を完全に食い荒らされたことがあるし、別の場所でも襲われている最中を見掛けたこともある。似たような姿や形だったため殺虫剤を一回かけたがミストが広がるため敵だけに吹き掛けられなくて止めざるを得なかった。
クマンバチでもミツバチでもハチが人を刺す時は、胸部に付いた足で抱きついてから腹部を曲げて刺してくる。抱きつかれる前にはたき落とせれば良いが、頭が取れたハチでもしがみついたら刺して来る。’しがみつく刺す’は一セットの命令で行われるみたいである。ラッキーにも難を逃れた経験が昨年あった。毎週訪れる山の施設の広場の隅の駐車場の目立つ雑草を一本抜着捨ててから車に乗り、10メートルほど走った所で、何かが首筋を歩く気配がして思わず素手で払い落としたら、大きなスズメバチがダッシュボードに落ちて蠢いていた。スズメバチだったので車を止めて逃げ出した。様子がおかしく動きが少なく飛び立ちもしなかった。よく見たらはたき落とされた時にダメッジを受けたらしかった。あり合わせのコップと厚紙ですくい取ってしげしげと観察したらオオスズメバチだった。
一言注意事項。スズメバチの綺麗な巣はとっておきたいものであるが、退治した巣はうっかり保存すると危ない。成虫は退治できるが、蛹は隔壁で保護されて居るため死なない。スズメバチの巣を密封せずに残しておくと、蛹が羽化して出てくることがある。また足場が悪い場所の巣の除去はプロに頼むべきであろう。オオスズメバチは一般に土中で営巣して居るらしいので出入り口は特定できない。装備も万全の慣れたプロに任せるべきであろう。自分で行うなら自己責任で行って欲しい。

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