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昼休みの休憩を狙って、先日の任務遂行のためコソコソと活動を開始する。
今回の相方は、広報委員長になる。
突撃インタビューのコメントを記録してもらうため。
一人一人が思い思いの場所にいるこの時間だけど、ある程度の予測を立てることができる。
私が思うにきっと――……。
その場所をこっそりと覗き込むと目的の人物を発見。
この熱い視線に気づいたのか、二、三言誰かと話してこちらへとやってきた。
ここからは見えないけど、誰かと一緒にいたみたい。
「どうした?」
日頃あまり関わり合いがない私に対して、喫煙ルームから出てきた坂口先生は不思議みたい。
とりあえず、人気のない場所へと案内をして事情を話す。
このことは当の昔に坂口先生にはバレているので、すんなりとコメントを残してくれる。
「私が知る限りでは、連覇続行中ですね」
「ありがたいことにな」
「次点の響崎先生について一言」
「王座は譲らないぞ」
「さすが強気のコメントですねー」
「早いうちに芽を摘んでおかないとな」
「あはは……」
すると、あたりの様子を伺い始めた坂口先生はニヤリと不敵な笑みを見せる。
なんだろうとその方向を振り返ると――。
「お、あそこに渡辺先生がいるぞ。ついでにコメントもらってこい」
「え、でも――」
「ここの卒業生らしいから、こういう『イベント』は知ってると思うぞ」
「そうなんですか。じゃ、俺が行ってくるな!!」
「一応、探り入れてからにしろよー」
「はーい」
若くて綺麗な人に近づくチャンスが出来たからか、広報委員長はいそいそと一人で乗り込んでいく。
先輩、下心丸見えなんですけど。
――ということは、先生もここの卒業生なんだ……。
「そういえば、また『トム&ジェリー』が始まったんだって?」
「げ、先生まで知ってるんですか!?」
「こういう話は『好物』だから、耳がダンボになるんだよなー」
取り残された私たちは通路の隅で次第にトーンを下げる。
トム&ジェリー、つまり追いかける人・逃げる人と設定が似ていると誰かが言い出したのが定着しまっていた。
当の本人はそれどころじゃないんですけど!!
「で、例の発言の真意は?」
「あれはですねー、その場を乗り切るための冗談というかなんというか……あはは」
「覚えてないのか? 『改めて、彼に聞くから』ってヤツ」
「――……っ!?」
適当に笑って誤魔化そうとしたけど、坂口先生の表情は硬く、ちゃんとした答えが欲しいようだった。
あれは時間も経ってるし、もうスルーされてるものだとばかり思ってた……!
この雰囲気からすると――……バレちゃってる?
「半ば無理矢理でもあったけど聞きだしたワケ、”二人の関係”」
「――……」
表情には出さないようにはしてるけど、顔が青ざめてることは自分でもわかってしまう。
これってどうしたらいいんだろ……。
こんな状況になることなんて、予想していないといけなかった。
そうでなきゃ――うまい対処ができない。
私が言葉に詰まっていると隣で軽いため息が聞こえ、ふと見上げると少し困惑した顔。
「あのな……前にも言ったとおり、脅しているわけじゃないんだぞ? 第一、藍本は他の誰も知らない秘密、知ってるだろ?」
「あ……」
「俺たちも”似たようなコト”してたってオチ」
「え……そうなんですか?」
「――ま、そんなもんだろ」
一言で片付けられることじゃないと思うんですけど……!
すれ違う生徒たちの視線を感じながら、あたふたと思考を駆け巡らせる。
この展開は、坂口先生は味方でいてくれるってことだよね?
私が悩む以前に先生がバラしてしまっているから、どうしようもないのもあるけど……。
きっと、坂口先生を信用したからこそ打ち明けたんだろうな。
――なんとなくわかる気がするよ。
「で、ちゃんと話したのか?」
「――……まだです」
「あれからずいぶん経ってないか?」
「かれこれ一週間は経ちましたね」
「ささいなコトからすれ違いは始まるんだぞ。――今回のはそれで済まされる内容じゃないと思うけど?」
「そう――なんですけど……」
「状況はわかるけど――男としても複雑だと思うぞ。――まぁ、頑張れよ」
渡辺先生のインタビューが終了した広報委員長がこちらへと戻ってくるのが見える。
それを坂口先生も気づいたのか、これで打ち切りという風に私の頭を軽く叩き離れていった。
「あぁいうのって先生によっちゃ、セクハラだって騒ぐんだろ?」
その現場を目撃した広報委員長の男の嘆きが聞こえたのだった。