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梅雨の時期らしく、雨の日が続く。
さすがにこう立て続けに降られると、気分もパッとしない。
月一の生徒会役員集合と共にアンケートの集計結果の発表ということだけど――まだ私と一真しかいない。
基本的には三十分程度で終わることが多いので、その後でコソコソと発表ということになったらしい。
「あれからどう過ごしてるわけ?」
そのチャンスを狙ってか、ここぞとばかりに切り込まれる。
すぐに相談事などをする私が何も口にしていないのは理由があった。
「……なーんもない」
「マジで?」
「何もなかったかのように普段どおり」
「『おかしな発言』をした彼女を放置プレイ!?」
「最後の表現、変なんだけど」
あの事件が週明けに始まり、今日はもう金曜日。
これに関しては、授業での絡みが最初で最後になっていた。
自分から墓穴を掘るのも怖くて、結局今の今まで何も伝えることができていない。
このまま時間が解決してくれたら――人のうわさもなんとやらって言うじゃない?
あぁ……でも、人の口には戸が立てられないという言葉もあるんだっけ。
そのおかげで、今以上に嫌な冷やかし方をされてしまうという自業自得な結果が出た。
お楽しみの結果発表なのに、プライベートで悩みを抱えて頭が重い。
一日の疲れの解消になのか、椅子に座ったまま一真は背伸びをしようとする。
その一瞬、ぎこちなく見えたけどそのまま腕を伸ばしている。
身体がつりそうにでもなったのかな?
「というか――……葛葉はどう思ってるわけ?」
「どうって言われても……」
「歴とした彼氏がいるのにも関わらず、俺に対して彼氏だって公言」
「それは――……」
いつになく真剣な眼差しで問い詰められる。
――久しぶりにこういう顔を見たかも。
改めて一真の容姿に気づかされてしまう。
昔は私のほうが背が高かったのにいつの間にか抜かされていて。
中学生になってから、幾度となく告白されていたのも実は知ってるんだ。
本人はただひた隠しにしてたけど……。
そういうことがあって、――この人は『ソウイウ部類』に入るんだって気づかされた。
今の状態に満足していて、そこから先のことを深く考えることはなかった。
あまりにも側にいすぎて、いるのが当たり前になんだって……。
その質問とは違うことで思いにふけっていると、廊下から人の声が聞こえ始めた。
一番に入ってきたのは千夏先輩で、その後ろにはいつものように梶島先輩――ではなく先生だった。
「あれ? 梶島先輩は?」
「今日は当番だから、少し遅くなるみたい。たまには違う男を引き連れるのも新・鮮。……って、調子に乗りました」
一人でノリツッコミをして、すぐに先生に謝っている。
大の大人に対して男と言える千夏先輩って――スゴイ。
「俺もたまにはと思って、学校一の女王様と一緒に来たんだよな?」
「そう、ですね。――さすが、すぐに仕返しがきましたね」
そう言われた千夏先輩は言葉に詰まるように肯定した。
女王様と言われて怒る表情ならわかるけど不思議そうな顔をしている。
なんだろう――……?
「それにしても、二人ともいつもお揃いで?」
「同じクラスだから仕方ないと思いますが?」
「――その繋がり、つまんないわ。もっとこう、違う言い方あるんじゃないのー?」
「ないです、ないです」
「あたしのこの耳にもちゃーんとうわさは入ってるのよ? っていうか、本人に聞かされたのもあるけど」
千夏先輩の冷やかしに一真が懸命になって相手をし始める。
さっきの引っ掛かりもすぐに解消されて、いつもの雰囲気に戻ったようだった。

定例の打ち合わせが終わって解散になったものの、今日に限ってみんなは微動だにしない。
「なんだ、帰らないのか?」
そりゃそうだ、不審に思って当たり前。
先生はすぐに去ろうとしていたけど、同じことをする人間がいない。
「雨が降ってるんで、お迎え待ちでーす」
保険委員長がうまい誤魔化しを伝えているけど、あながち嘘でもなかった。
裕福な家柄の人が多いせいか、いつもお迎えの車が並ぶ。
特に雨の日なんか渋滞になるくらいで軽く名物にもなっているんだとか。
「みんな?」
「便乗派ー」
「ふーん……。ま、気をつけて帰れよ」
「はーい」
風紀委員長もそれに乗って帰りの手段の話を教るけど、やっぱり納得していない様子。
場の雰囲気を悟ってなのか、先生はすんなりと姿を消してくれた。
先生の気配が完全に消えると、みんなはアンケートコールを揃って言い出す。
「では、お待ちかねのアンケート結果」
梶島先輩がミーナにプリントを渡し、各自の手元へと配られる。
さてさて……。
まず、一番に見るのは自分が出題したものよね。
やっぱり坂口先生かー、強い!
でも、次点は――響崎洸。
ナンバーワンと負けず劣らずの投票数になっていた。
これはもしかしたらもしかするのかな……!?
「ということで、今年もコメントをとってもらいに行ってもらいたい。もちろん、認知してくれている人限定になるけども」
会長・副会長の視線がこっちへと向けられた。
こういう先生がらみは何かと私に回されてくる。
先生ウケがいいのも、いいのやら悪いのやら……。
――はいはい、行ってきますとも。