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「ねぇー、あれってどこにあったっけ?」
「何がです?」
「ホラ、アレよあれ」
「千夏先輩……あれじゃーわかるものもわかりませんって」
生徒会室のパソコンの目の前に座り込んでいる千夏先輩を上から見下ろしている。
千夏先輩から頼られることが滅多にないからちょっと嬉しいかも。
何かのファイルを探しているのか、フォルダがたくさん開かれている。
でも、そのスピードが速すぎて一体何のフォルダさえかも判明不明。
一人でも賑やかタイプというのは、独り言を言ったりだとか、物音を立てたりだとか……今回は前者。
今日はまだメンズたちが到着していないので、余計にでもきゃぴきゃぴした声が響き渡る。
「今からする仕事の原本よ、げ・ん・ぽ・ん」
「あー、あれですか? ちょっといいですか?」
マウスを手に取ると、過去の記憶を辿っていくつにも分けられたフォルダを掘り下げていく。
確か、このあたりだったような……。
そんな重要なものでもないデータは奥へ奥へと追いやられているらしく、私も何度か行き来をする羽目になる。
誰か整理整頓でもしてくれたらなぁ……。
「思い出したっ!!」
それを見て思い出したのか、無理矢理私から奪い取るとちゃかちゃかとデータを開くことに成功する。
二人で表示されたものを一覧すると、無言になってしまう。
……また、あの憂鬱な日々がやってくるのか。
先生たちに見つからないように一枚一枚手渡し、それはよしとして。
その後の後処理の方が大変なんだよねー……。
あ、でもでも、後輩もできたことだし、去年よりはラクなのかな?
「そうよね、あたしたちは去年と同じことをしなくてもいいんだわ」
「たちって言いましたよね! もちろん、あたしも入ってますよね!?」
せかせかと働かされるのは若い者にやらせないと!!
いやー、今年からはのんびりと――。
「何、言ってるの?」
浮かれモードな私に打って変わりの、低いトーンの副生徒会長。
回転椅子を動かし、超真顔で私に向き直った。
「いいこと? 会社で言うなら、あたしが部長。すると、あなたは課長っ!! そして――……」
なぜかタイミングよく入ってきたツインズ。
いや、これを計っていたのは先輩!?
「あの二人が係長よ!! いくら部下が出来たところで、課長は部長の部下には変わりないのよぉー。中間管理職って大変ー」
おーっほっほと高笑いをされる。
キィーーーッ、いっそのこと憎めたらラクなのに……!
こんなに日々いじめられているのに、嫌うことが出来ないこんな課長。
以外に打たれ強いのが特徴です。
机にうなだれる私、そんな正反対の先輩たちを後輩たちは居心地悪そうに苦笑いをしていたのだった……。

「えぇー? これを全部手作業で?」
うん、そうよね、そういう反応が正しいと思うのよ。
私も初めて聞かされたときは同じように聞き返した気がする。
ミーナが千夏先輩から一通りの作業を聞かされて、少し不機嫌そうに資料を眺めている。
初めて見せるその態度に先輩と目を合わせて肩をすくめる。
「毎回してることだし、これを終わらすにも伝統が途絶えてしまうことになってしまう――」
「……」
――って、聞いてないし。
……?
「何、これって初の反抗期かしら?」
「先輩がねちねちと話したからじゃないですかぁー?」
「あたしは一から丁寧に話したじゃない」
「だから、それがかったるかった――……」
「あ、たぶん、すぐに元に戻ると思うんで……」
話さない相方にリョータが遠慮がちにフォローを入れてきた。
ひそひそと言い合う先輩たちに耐え切れなかったのかな?
その思いに免じて、仕方なく茶々を入れずに待つこと数分。
資料とにらめっこしていたミーナが顔をあげる。
「これ、非常に簡単にすることができると思います。今時の方法に入れ替えたらちょちょいのちょい」
「……は?」
「たぶん、先輩たちもしたことがあると思いますよ?」
「何を?」
先輩と何度も声が重なり、目が点状態になってしまう。
何を言っているのかが私たちにはさっぱり……。
「ミーナ、ちゃんとわかりやすく説明しなって」
「内容はどうであれ、これはただの『アンケート』です。今までのようにアナログ的にしてたら、どれだけの時間を費やすかは定かじゃないです。ここはもうデジタルに切り替えてですね……」
「アナログ……」
「で、デジタル……」
何のことがアナログで何をデジタル?
はぁー、これだから秀才にはついていけません。
どうやら、今回は私一人じゃないのがしめしめというとこかな。
「結論から言うと、パソコンで集計をするってワケです」
「へぇー、どうやって?」
「例えば、携帯のQRコードを使って、なんらかの応募とかしたことないですか?」
「あー、あるかも。お菓子を買うと箱の中にシリアルナンバーが書いてあるからそれを入力して応募!みたいな」
「まさしくそれです。じゃ、ホームページでなんらかのアンケートをしたこととかは?」
「んーと、この間、次に機種変するならどれ?とかいうのに投票したかな。今までの結果がグラフで出てた」
「それらを組み合わせたら、『これ』出来ると思いませんか?」
片手に持っていた数枚の資料をミーナはチラつかせる。
意味はわかるような気がするけど、どうやって?って感じなんだけど。
「あ、心配しなくても大丈夫です。深ーい場所は私がプログラムを組むんで」

ようやく主要メンバーが揃った頃、ミーナが今回の企画『教師をターゲット!恒例の極秘アンケート』の裏の仕組みについて語りだす。
藤波学園全教師をターゲットにしたアンケートを、生徒会メンバーが独自に考案して作り上げる。
結局、内容的にはそこらの雑誌と同じようなアンケート。
王道のものから、ウケ狙いのものまで。
過去三回までは同じ内容は使用できないけど、最短で一年半くらいで同じアンケートがあたる時もある。
ようやくパソコンが普及されてきたこの頃、過去のものもデータ化に移行している最中。
時間があるときにちまちまと誰かが交代で入力している。
そして、過去稀に見る現代っ子橘美衣奈は外見とは裏腹に、自分のホームページを持っていてパソコン関係には詳しいらしい。
彼女が説明するには、名刺サイズの紙にQRコードとホームページのアドレスの記載。
アドレスを載せているのは、携帯電話を持っていない人でもパソコンからでも閲覧できるようにするため。
家にパソコンがない場合は、図書館に設置されているので利用が出来るから安心だ。
これから将来的には個人が所持し続けてもらうため生徒手帳にでも挟んでもらって、大事にしてもらいたいとこ。
暫定的な処置だけど、あらかじめ学年ごとにプリントカラーが違うようにした。
カラーには深い意味はないけど、一目でどの学年かが把握できるため。
こちら側も名刺に連番を振って一覧を作るため、責任感を持って紛失しただとかは願い下げ。
こんな非公式のことがバレてしまってはみんなが困るし、存続の危機にもなるわけだ。
ということで、手作業は断然と減ったんだけど、いらぬ心配ができてしまったということにもなる……。
だけど、これを採用したということは、メリットのほうが大きいということだと思いたい。
そりゃ、裏方の仕事が便利になって、管理も簡単になるんだし――まぁ、個人的なことは置いておいて。
ペーパーレスにもなるし、一石二鳥ってとこかな。
先生たちに発見されることも激減するだろうし、イイコトづくしだなぁー。
過去に何回か先生たちに目撃され、暗黙の了解となってしまっている雰囲気でもある。
幸い、口うるさい先生には知られていないようなので助かっているらしい。
実は投票される側も楽しんでたりして……!?
後は、集計結果の説明をしていくミーナ。
結構生き生きとしているあたり、こういう仕事向いてたりする?
全てを聞き終えた私たち先輩チームは、前回までの労力を味わっているあたり、この企画は非常に効率の良いものだと実感出来る。
意味はわかるけど、それをどうやってするかは別にして。
「よし。じゃあ、今回のは試運転ということで。これが成功すれば、本番化にしていこう」
現生徒会長の許可も下りて、いざ出陣!!