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「うーーーぇー……」
週末の金曜日、ここ一週間頭を悩まされた挙句の果てに、泣いてるんだかそうでないんだかわからないため息をしてしまった。
――とてもかわいらしいとは思えない。
わかっていたのにこの結末。
差し迫ってくる時間との勝負に明らかに負けている状況に、今すぐにでも駆け出して家に帰りたい気分だった。
実際にそんなことをしたのなら、次に会った時が怖いから到底出来ないんだけど……。
書いては消しての繰り返しが続いて、皺になってしまった一枚の紙。
よく考えたら、他の紙に書けばよかったと後の祭りだ。
とりあえずと要らないプリント用紙を机の中から探し当てる頃、亜衣が携帯を片手にやってくる。
一応、携帯禁止なんですけど?
携帯を先生に発見されたら、即没収と校則にある。
風の噂じゃ、商業科はそんなことはないらしいんだとか――どんな差別なのよっ!
先生たちは否定をしているけど、私が確認を取れたのは身内の普通科のみ。
敵陣(商業科)にまでは手を伸ばせるほどの勇気はなかったなぁ。
まぁ、今じゃかなりの生徒が所持しているだけあって、堂々と使っていても互いが牽制して密告はないらしい。
「蛙をひき殺したような声を出さないでよ。みんな身悶えしてたじゃんかぁー」
「その前に! 蛙がそんな声を出したところを聞いたことあるわけ?」
「あるわけない! ――でも、例えるならばそんな感じかなぁって、ね?」
きっぱりと断言する亜衣のその表現は正しいのか、周りにいたクラスメートもここぞとばかりに頷いている。
「この私を両生類に例えるとは……っ! この間は小動物に例えられるし、一体なんだと思ってんのよー!」
ムキーッとなって立ち上がったのもつかの間、例の紙が目に入り我に返ってしまう。
これで昼休みを十分損したじゃないの!
また音を立てて席へと座り込む。
「ちょっと、あいもどうしたの? 悩んだり怒ったり、また悩んだりして」
携帯を持っていた亜衣の手はメールだかなんだかを終わらして、制服のポケットにしまいこむ。
だけど、もう片方の手からは食後のデザートと言わんばかりに購買でさっき買ってきたらしいパンが現れた。
売れ残りのものは少し値引きをしてくれるらしく、それを狙って小腹が空いた時に買出しに行っている。
基本的に好き嫌いのない彼女は、売れ残りであろうとよっぽどのことがない限りは美味しいと笑みをこぼす。
私より小柄な割には大食い。
きっと初対面の人はビックリするに間違いない!
「あ、コレ。あいもの分」
「今日は残ってたんだー。ありがとう」
これが残っていたらついでに買ってきてと、前々から頼お願いしていたものの代金を支払う。
何週間ぶりかのデザートをつまみながら、何も書かれていない紙とにらめっこをする。
「もう飽きた? プリンアラモード」
「……なんで?」
「なんか美味しそうに食べてないから」
「この価格でこの豪華なデザートに飽きるわけないじゃん。この時期にあたしが頭を悩ませることはただ一つ!」
「この時期ー? 今は六月でー、今日も雨でじとじとー。――だから、蛙だったんだね!!」
「ちっがーーーうっ!!」
「えー。いい線だと思ったのにー」
私たちのやりとりに思わず吹き出した者、若干名。
言われた私も思わず笑いかけたじゃないの。
いいねぇ、その右脳的な発想。
「六月といえば?」
「――……さぁ?」
「でしょ? 何もないのよ。だから、去年もしたでしょー? 覚えてない?」
「何もない時にしたといえば……。――……。ぐぅー……」
「ヲイ! 満腹になったからって、人と話しながら寝るなぁ!! 起きろっ!」
腕組までして考え始めたものの、あまりの答えの出なさに思考が停止した……!?
軽く揺さぶってみたものの、ついさっきまで起きていた人間には思えないくらいに反応がない。
こんな早寝だったっけ……?
「あ、あっ、わかった!! 非公式ふがふが――っ」
油断をしていたらいきなり目を開けて、大声で答えを言いそうになったのを慌てて手で押さえた。
今のポーズは一応、過去を思い返していたのか……。
その名の通り『非公式』ではあるけど生徒間だったら問題はない。
だけど、始まる前から部外者が話しているのは不味い。
一応は不定期なんだから。
「思い出してくれたのはありがたいんだけど、それ以上は口外しなーい」
「ゴメン、ついうっかりしちゃった」
「話がわかったのなら、わかるよね?」
「あ……そういうコト」
ようやく事の次第が飲み込めた亜衣をも巻き込んで、二人で問題解決へと向かっていくことにした。