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なんだかんだでようやく今日という一日が終わる。
「すべてはこのゴミ捨てが終わればっ!!」
「ゴミ捨てでそのテンションってあり?」
「あぁ!? 昨今のあたしには一分一秒たりとも惜しいのよっ!!」
「逆ギレかよ」
焼却炉の周囲には誰もいないようなので、猫かぶる必要もない。
触らぬ神にたたりなしと言わんばかりに一真は私にゴミ箱を差し出してくる。
「ちょっとっ! なんであたしに全て渡すわけ?」
「いや……。ストレス発散になるかなーと」
「……」
確かに文句を言いながら、ゴミを叩き入れている瞬間はスカッとするような。
というか、分別を確認しながらだから時間かかるのなんの……。
小学校のときは、ガサッと一気に流し込んでいたのに。
「……何よコレ。……去年のプリントじゃない!? なんであんのよ」
「どれどれ」
えらく色褪せたプリントが出てきて、何気なく盗み見たら去年の春に配られた会報。
見たそうにしていたので、一真にそれを手渡して休めた手を動かす。
「机も持ち上がりだからじゃねぇの? 誰かが今頃机の整理したんだろうな」
あぁ……そういうことなのね。
一ヶ月前にも机の大移動したっけ……って、もう許さない。
やっとゴミ箱のそこが見え始めたと思ったら、お宝が出てきたじゃないの。
「……。シバく。誰だっ!! 賞味期限切れのパンを捨てるとはっ!? 私に喧嘩売ってんのかぁーーーっ!」
ポイッと一真に投げ捨てて、後は紙だけのようだから一気に流し込んだ。
「逆にストレス溜まったわっ!! アホがっ」
大きな音を立ててドアを閉めた。
「さっきから口悪い娘だなー。ダーリンと喧嘩でもしてんの?」
「……別に」
「可もなく不可もなくってとこか」
たったその一言で勝手に解釈をしてくれる。
……その言葉通りなのが悲しい。
何かの進展があったわけでもないし。
「なんだ賞味期限昨日じゃん。いけるいける」
「まさか食べる気……?」
「さすがに誰が捨てたのかわからないのは食べないって」
そう言いながらパンの袋を開けて適当な大きさに千切り取ると、適当な場所に投げ捨てている。
「……?」
「明日の朝には、小鳥ちゃんたちがご馳走と言わんばかりにわんさかやってくるだろうよ」
「あぁ……そういうコト。あんたにしちゃ、可愛いことするんだね」
「俺、動物愛好家だぜ?」
「嘘くさっ」
「うちのナナを飼うって言い出したの俺」
「え、嘘? 似合わない……」
「悪いな! 猫派なんだよ」
一真の家にはベタにアメリカン・ショートヘアのナナちゃんがいる。
最初の頃は愛想が悪かったものの、ようやくお許しを得たのか膝で寝てくれるようになった。
そろそろお婿さん話が出ているらしい。
ナナちゃんネタで盛り上がっていると、教室へ戻ってきた。
教卓の上に置きっぱなしの当番日誌。
全てを終えてからでないと、担任に手渡せない。
ゴミ捨てにチェックを入れ、窓を閉めて日直終了。
「コレ、あたしが持っていくから帰っていいよ」
「てっきり持っていけっ!って言われると思ったのに」
「んー……。職員室に用事あるやん?」
「……そうだよな。これから愛のレッスンがぁーーー」
「と、ここでは冷やかす割には顔を覗かせないじゃない?」
みんなと一緒に顔出しに来たりはしてたけど、一人で来てないと思う。
んー……、なぜだっ!?
こうやって一日中教室でイヤってほど顔をあわせているから、今更話をするようなこともないけどさ。
ヘルプコールを聞くのがイヤなのかなぁー……?
何度一緒に帰らせてくれって懇願したことか。
結局、レッスン計画の成果の果てにあるご褒美をちらつかされて、私は黙り込むしかない。
はたまた、先生お得意のニッコリスマイルでみんなを納得させて、追い返されてしまったり……などなど。
こうやってすんなりと生徒たちと馴染んでいるあたり、周りの評価もどんどん上がっていくってわけか。
先生方には非公認(たぶん)のアンケート調査が楽しみだ……。
あんなことからこんなことまで、まさにマンモス校だからこその票数がランクを決めるんだよね。
特にイベントが少ない月に突発的に行われるから、ネタをぼちぼち集めとかないとな。
って、話ズレてるしっ!!
「え、二人がイチャついているのを邪魔して欲しいわけ?」
「イチャついて――……ってそんなことしてないしっ」
「洸さんのことだからてっきり……」
「勝手にエロ教師にしたてないでよね」
「――なーんだ。何も起きてないのか。つまんねぇの」
「何か起きたら問題でしょうがっ」
「と、まぁ……気を遣ってるわけ、俺なりに。じゃあな、お疲れ」
手をひらひらさせながら、一真は姿を消した。