2-5



なんか妖しい雰囲気になってきて、洸くんがにじり寄ってくる。
それに身の危険を感じる私は壁際まで追い詰められた。
「あそこ鍵かけられるし、その上ベットまであるし……」
「え、え、えっ!?」
まさか、そんな――……。
さすがにナニを言い出しているのかがわかったけど……。
「ほ、ホラ、わざわざ学校じゃなくてもこうやってここに一緒にいるんだよ??」
「これはこれでいいんだけどさ。学校っていう場所が場所なだけ、やらしくない??」
「先生と生徒なのに……」
「それがまたオツじゃないか」
「二人の関係はトップシークレットじゃないですかぁ!!」
「学校内ではそうしようと思ってたんだけどね、くぅの反応がおもしろいからヤメにした」
「なななな……」
バレてもいないのに、バレた後のコトを予想してみる。
――……。
わかるもんかかぁーーー!!
バレてどうなったかなんて話聞いたコトないぞっ。
……いや、そういえば噂であったなー。
確か……。
その先生とカケオチしたか――駆け落ちっ!?
そんなコトできないよ。
「学校を放り出して、駆け落ちなんて出来ない……」
「どっからそんな発想がきたのか知らないけど、責任感あるコは好きだよ」
好きって言葉にテレっとしてしまう。
「それにもし二人の関係がバレたとしても、俺が責任を取るよ・・・」
そう言いながらネクタイを緩めた手で私の顔を上に向けると、キスをしてきた。

「でも、なんでこう顔のいい人たちは揃いも揃って……」
「はい?」
用意された夕食を口にしながら、今日を振り返る。
「梶島先輩も響崎先生も顔のいい男は自分がそういう風に見られているのを認めてるなんて」
「人がそう言っているのを否定しても、謙遜しちゃってとか言われるじゃないか。否定し続けるのもいい加減疲れるしね。……そうそう、キミたちのようにね」
最後は嫌味っぽく言われた。
確かに、否定しても周りが認めてくれないんだもんな。
それに付き合うしかないというか、なんというか……。
それにしても、男の人なのになんでこんなに料理を作るのが上手いんだろ……。
家事もできるし、几帳面だし……。
洸くんの奥さんになる人は大変だわ。
――……奥さん!?
ちょっとだけ、二人の未来予想図を描いてみたり。
「何、笑ってんだよ。そんなに一真君とのなんちゃってカップルが楽しい??」
いつの間にか笑みがこぼれていたらしく彼は勘違いをする。
洸くんとの将来考えていたなんて、内緒。
そんなコトになるなんて、もっと先の話だろうしね。
「秘密」
「そんなコト言うのかー。じゃ、もうゴハン作ってやらない」
ガツガツと自分が作った料理を平らげていく。
う……、このゴハンがなくなったら私生きていけない。
コンビニ弁当やインスタントで暮らせというのね。
あくまでも、自分で料理をしようと思わないヤツ。
これだから、一真に飽きられているんだろうなぁと思ってみたり。
「ダメダメ! ゴハンなくなっちゃうと、私飢え死にしちゃうよ」
「だったら、なんでニヤけてたかを白状すること」
「う、それは……」
全部食べ終えた洸くんは、食後にお茶を啜ってくつろいでいる。
おあずけ状態な私は、ゴハンを食べることが出来ない。
「なんか……こんな美味しい料理作ってくれる旦那さんを持つ奥さんって大変だろうなぁーって」
ちょっと恥ずかしかったのでボソっとコメント。
「ふーん……それだけ??」
更にツッコんでくる。
まるで、私が考えていたことがわかっているかのように。
「ちょっとだけ、洸くんとの結婚生活を考えてました」
さっきより小さな声になってしまう。
だってこんなコト、まだ本人に面と向かって話すような内容じゃないっしょ。
友達同士で、都合のいい夢見る結婚生活を語っていい歳だと思うんだけど……。
「合格」
私と顔を合わせないまま、食器をキッチンへとさげに行く。
――……。
合格って言ったよね??
なら、怒ってないよね??
おあずけになっていた食べかけの料理を食べ始めた。

とうとう前回のテストの成績表が返ってくる時がやってきた。
できるなら、この日は来て欲しくなかった……。
自信がないのかって??
とりあえず、テスト勉強らしいこともしたんだし、前よりは悪くないはず……。
全力をもって、テストをしたんだから後悔なんてしてないもん。
最後の教科あたりは、ちょっと動揺して妖しいけども……。
それはそれ、これはこれ!!
きっと、他の教科がカバーしてくれてる――と嬉しいなぁ。
あの時のニヤリな洸くんの笑みが今となっては、なんとなく予想がつくというか。
なんだろう――……それを考えるとなんかヘコんできた。
「なにヘコんでるんだ??」
そんな私の様子を心配しているのか、からかっているのか一真が話しかけてきた。
「いやーちょっとね……」
「今回も自信ないのかぁ?」
「もって失礼ね!」
「これがダメなら大変だな? アレがアレだし……」
先日のレッスン計画の話を言っているらしい。
「そうよ、アレがアレで大変なのよ!!」
「なになに、アレって」
声のボリュームを抑えずに話していたので、前の席の亜衣が当然の如く興味津々に振り返ってきた。
あんなレッスン話なんて出来るわけでもなく。
「アレがあれでね……」
「なによそれー、アレで通じるほど笹木君ほどとつうかあな仲じゃないからはっきりと教えてよ」
だから、それが教えられないんだってば。
名前があいもとのおかげですぐに担任に呼ばれて、成績表を取りに行く。
担任がそれと私の顔を交互に見る。
「藍本ー……これはマズイんじゃないかぁ?」
とてつもないセリフを吐かれて、手渡される。
その場ですぐ確認すると。
「えぇえーーーっ!?」
思わず、見えるのに間近まで持ってきてマジマジと今回の成績を確かめる。
これは、どう考えても――……。
「先生――コレって間違いじゃないですか?」
「俺もそう思ってテスト見直したんだけどなぁー。――間違いなかったぞ。藍本は今回、家の方でドタバタしていたみたいだし、まぁ、仕方ない。次から頑張れよ」
先生――次からじゃ遅いんです。