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「それは、藍本が俺にホレてるから? ホラ、俺ってこんなんだし、受け持ちの生徒からもイロイロと大変で……」
自分でそんなコト言う!?
「でも、坂口先生には負けるけどね。あんなイイ男だとさ、俺が女だったらホレてる」
「それはそれは。坂口VS響崎で二分されつつありますからねー。更に、普通科と商業科の溝が深まる一方……。そっかー、やっぱり葛葉ちゃんも響崎先生派か」
梶島先輩がその場凌ぎの嘘(後半は本当だろう話)を納得する。
私が洸くんにホレているから嘘じゃないか。
「あたしはどっち派に入ろうかなぁー」
そんなコトを言い出した千夏先輩の興味はそれたみたい。
「あ、でも、本当に響崎先生人気ですよ」
「え??」
美衣奈ちゃんが急に語りだした。
みんなが注目したのでちょっと赤面する。
「先生があたしの担任なんですけど、いつもいつも男女問わず生徒に囲まれてますよ。そりゃ、比率的に言えば、女のコが多いけど……」
「立派な証言になりましたね」
一真がここぞとばかりに念を押すコメント。
ナイスよ、ナイス。
「先生、モテモテじゃないですかぁー」
モテモテの所を含みを込めて彼に言う。
「困ったなぁ……。んで、櫻井はどっち派だ?」
「うーん……」
「せめて、俺のテリトリーは守りたいけどな?」
「それ言われたら仕方ない。響崎先生に一票!」
千夏先輩が投票する真似をしたので、みんな笑った。
「それにしても、二人は本当に総代になってくれるのかい??」
「――はい、いいですよ」
二人同時に発言する。
梶島・千夏先輩が顔を見合す。
「別にいいのよ? イヤなら断っても。無理矢理やらせたって仕方ないし」
「大丈夫です」
双子ちゃんは互いに意思を確認した後にそう告げる。
その言葉にますます先輩たちは顔を合わせる。
「なんかこうあっさりと承諾されるとは思わなかったな。どんな手を使おうかって考えていたのに」
「そうよね……。あの二人のときは、かなりブーイングだったもの。納得させるのにどれだけ時間がかかったことか」
そんな二人にチラ見される私と一真。
「確かに文句言いまくりましたとも!! でも、その原因は」
「また相方がコレだっていうコトですよ!!」
人をコレって言うのもいけないし、人に指差すのもよくない。
そんなコトわかっちゃいるけど、互いに容赦なし。
「あー、そうだったかな」
ポリポリと梶島先輩は頭を掻く。
そんなことはどーでもいい感じのご様子。
先輩には関係なくても、私たちには問題大有りですよ!!
「そう言い続けて、どんだけ総代やってるのやら」
千夏先輩のツッコみがイタイ。
イタすぎて何年目かなんて数えたくないのに、隣で一真が指折りをして数えている。
止めたほうがいいと思うんだけど。
「――……七年」
小学四年から続く代表に哀愁漂わせる一真だった……。
「わー、すごーい」
かわいい顔して稜大くんはさらっとイタイことを言ってくれた。
もう愛想笑いしか出来ない……。
長い長ーい七年間ですこと。
そりゃイロイロありましたとも、イロイロ――……。
瞬時に語れ切れません。
でも、それを考えると私たちが一番任期が長いのでは?
なんだー、私って先輩じゃーん。
何てコト気付いたけどそれを言ったところで、だから?の一蹴りで終わりそう……。
「それなら助かるよ。ありがとう」
「実を言うと、興味があったもんで……なー」
稜大くんが美衣奈ちゃんと一緒に声を合わせた。

「リョータの方がお兄ちゃんなんだ」
一通りの用事を済ませた一同は雑談に花を咲かせていた。
「そうなんですよ、こんなんでもおにーちゃんです」
「こんなんって失礼だなっ、ミーナ」
私たちは彼らが普段呼び合っているように、リョータとミーナって言う愛称で呼ぶことにした。
ミーナの言うこんなんっていうのは、たぶん、こんなかわいくても兄なんですよって意味なんだと思う。
一人っ子な私にはちょっと羨ましいかな。
それにしても本人が気付くのはいつになるのやら。
「しかも、二人とも頭イイんだ」
「葛葉ちゃん。そこだよ、そこ。それが決め手になったんだよ。更にかわいらしい双子で絵になるじゃないか」
梶島先輩が今回の人選を真相を語る。
「それで、美男美女で囁かれている俺たちと、人気者の笹木&藍本カップルで完璧」
梶島先輩まで自画自賛……。
ナルシーが多いのか、ココは!?
それに着々と梶島ワールド(完璧主義)になりつつあるんですけど……。
この生徒会は大丈夫なんだろうか。
「それでいて、内面もTOP10圏内」
「だから、あいもっちゃんももう少し勉強頑張ってね。生徒会のメンツかかってるんで」
千夏先輩の脅しがかけられ、私は蛇に見込まれた蛙のように顔を引きつらせた。
三十位圏内を保つだけで精一杯です。
「みんないつの間に勉強しているんですかぁ!?」
私はその場に泣き崩れた。
えーい、泣いてやる!!
この仕事さえなければ――なんて言い訳をしてみたり。
同じコトをしているみんなはちゃんと成績保っているのに。
これ以上は無理なんです。
きっと、頭の出来が――……。
「そんな藍本のために個人レッスンしようか?」
「へ??」
いきなりのとんでもない発言にみんな目が点になる。
「これで生徒会のメンツもアップね」
「先生直々に教えてもらえるなんて、羨ましい限りだな、葛葉」
先生がいきなりそんなコトを言い出し、みんなはそれに賛同する。
というか、教師と生徒が個人レッスンに問題ありなのでわ?
「どうせなら、ココ使っていいか?」
「どうぞどうぞ。なんでも揃ってますし」
「隣は仮眠室なのでベットとかもありますよ」
一真が意味不明なコトを教えているみたいだけど、今はそれは関係ないのでは??
「それはいいねー。テスト前日は、ここで寝泊りか!?」
茶化して言う先生に、爆笑する生徒会メンバー。
決してそれには触れてこないのは、何故!?
「えっ? えぇーーー??」
本人の承諾もないのにあれよあれよと『響崎先生のレッスン計画』は立てられていった。

『一つ:藍本葛葉に拒否権はなし』
『一つ:響崎先生の言うコトはなんでも聞くこと』
『一つ:成績がTOP10圏内を保つことが出来たら、響崎先生になんでもさせられる』
フルフル……!!
一枚の紙に書かれたお約束事。
千夏先輩のきゃぴきゃぴな字で書かれているのがますます手を震わせる。
力んでしまって紙がくしゃって皺が入る。
私のエンジョイライフはますます遠のいていくのね……。
えーーーい!!
そのまま、クシャクシャぽいっとゴミ箱に投げ捨てる。
ちょうど、家に帰ってきた洸くんにそれを目撃された。
すぐに何を捨てたのかわかったみたいで、それを拾い上げて皺を広げる。
そしてそれを私の顔に書いてある方をペチっと貼り付ける。
「ひとーつ。藍本葛葉に拒否権なし。ひとーつ。響崎先生の言うことは何でも聞くこと。ひとーつ―――」
「成績がTOP10圏内を保てたら、響崎先生になんでもさせられる」
私はただ一つの自分のメリットだけは譲らなかった。
その後、渋々その紙を受け取る。
「くぅは愛されちゃってるねぇー」
「どこが?? こんなキチクなコトをさせるなんて」
「だって、あの二人に気に入られてなかったら、即クビなんだろ?? 特に、櫻井の方だろうけど。好き嫌い激しそうだし……」
「えーー。もうちょっと、わかりやすい愛され方したいよ」
言われれば、嫌われているなら当の昔に解雇になっているはず。
先輩たちにはその権力が与えられているから。
「そう? ちゃんと愛されている証拠は最後の項目になってると思うけど??」
「なんでもさせられる?」
「そう。先生界でアイドルとなりかけている響崎先生を自由に出来るんだよ? 藍本が俺に惚れているっていうコトを考慮してくれたと思うけど?」
「そうはいっても随分先の話になりそうなんだけどなー」
「そりゃ、もうたっぷりと教えますよ。くぅがイヤってくらいに」
「なんかホント、ヘコんできた……」
みっちりと勉強の日々が続くんだと思うと、学校になんて行きたくなくなる。
「わからない? 俺の言っているイミ」
しょげている私に更にわからないことを言ってくる。
だから、たっぷりと勉強を教え込まれるんでしょ?
「なんで俺が名乗り出たかを……」