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私たちが揃うと、生徒会長が最終結果を発表する。
やはり上位は陸上部やサッカー部など、走り込みを日々積み重ねてきた部活が健闘した。
食券の束をもらって、盛り上がっている。
それで、がっつりと食してください。
時間かけて作ったそれは、あっという間に使われるんだろうなぁ……と哀愁に浸ってみたり。
いいんです、思う存分たらふく食べちゃってください。
十名程度が逃げ切った証にはデザート付きの食券が与えられた。
そして、今回の特別賞の人は――。
体育館がざわつく。
というか、特別賞ってなんだろう??
原稿を把握しないまま読み上げてたんだけど。
「と、いうことで、タイムリミット過ぎたのでそこのお二人さん出ておいで」
梶島先輩が声を向けた先は、ステージ裏だった。
みんなも一斉にそちらを向く。
すると、ひょっこり現れた男女二人組。
男女なので、カップルかなって一瞬思っちゃったけど、全然違った。
だって、顔がそっくり。
「もしかして、最初からバレテた??」
男の子が梶島先輩に話しかける。
「当然」
「逃げ切ったお二人には――」
みんなドキドキして次の言葉を待つ。
千夏先輩が何かを手にして二人に近づく。
「おめでと。あなたたち今日から学年総代よ」
そう告げて、手にしていた生徒会用のピンバッチを渡した。
「えぇーーー!? そんなのあり!?」
さすが双子、同時に同じリアクションをした。
捕まった生徒たちは、ホッと胸を撫で下ろした様子が伺える。
やっぱり、生徒会役員っていうのはなりたくないっていう人もいる。
人前に立つ仕事が嫌な人なんてたくさんいるんだろうなぁ……と思ってみたり。
そういう私は、もうこの状況を楽しむしかないじゃないですか。
否応無しにやらされるなら、嫌々やるより楽しむしかないっ。
梶島先輩が二人にマイク無しで何かを聞いている。
「一年の一学期は投票ではなく、生徒会の一存になるので、橘 稜大(たちばな りょうた)君と、橘 美衣奈(たちばな みいな)ちゃんが今期の一年の学年総代になりました! 以後、お見知りおきを」
場の雰囲気で二人はペコっと頭を下げると、生徒たちはわーっと受け入れてくれた。
納得したのかな、二人は――。

放課後の生徒会室。
例の双子ちゃんたちが肩身狭しとちんまりと椅子に座っている。
これでやっと生徒会もフルに活動開始。
「あたしたちの場合は普通に捕まえられたよね??」
「そうそう、この二人に」
一真と二人で、そこにいる先輩方をじとーっと見る。
去年の今頃を思い返せば――……

同じ様に争奪戦が始まって逃げたした私は、誰かに呼びとめられた。
一緒に逃げていた亜衣がそんなの無視して行こうよって言ってきたけど。
逃げなきゃいけないのに、なんであそこで止まってしまったのだろう。
今となっては、すっごく後悔。
後ろから追いかけてくる人を見つけると、亜衣はあたしをほっぽって走って逃げていった。
「藍本さん、だよね??」
男前な先輩に呼び止められて、ちょっと喜んでいたのもつかの間。
のんびりと私に近づいてくる。
それに警戒心を解くと――……。
「これで、藍本さんはゲーム終了」
首にぶら下げていた鈴を盗られていた。
「ええぇ!!??」
近くを走る部活姿の先輩たちは私に鈴が付いていないことを横目で確認しながら通り過ぎて行く。
「――なんの部活です??」
「部活というか――……」
部活じゃなきゃなんなんだ?と首をかしげる。
そんな私に微笑みかける先輩に、ちょっとかっこいいなぁって思っちゃったり。
「生徒会」
はぁぁぁ??
「――またですか」
「さすが冷静だね。ということでこっち来てね」
とぼとぼと先輩の歩く方向についていく。
逃げてきたばかりの体育館に着く手前に先輩が誰かに呼びかける。
私もついでにそっちを向くと、見知った顔があった。
「か、一真!?」
「げっ!! 葛葉……」
「以外に千夏も早かったな」
今でいう千夏先輩の後ろを歩いていた一真。
互いに同じ状況を把握した二人は、思いっきりため息をついた。

「っていうか、なんで私たちだったんですか??」
遠いような近いような過去を思い出して、何でだろうと思ってしまった。
「実は――大体の目星は付けてたんだよ。キミら中学生の時も代表だったからネ。んで、先輩方にお前ら行って来いと使命を頂いてさ。そして、今回は俺たちが目星を付けていたお二人さん」
双子ちゃんはきょとんとしている。
「でも、あのときの一真ったら、千夏先輩にデレーっとしてたよね、絶対!!」
「何、言ってんだよ! そういうお前も先輩に頬を赤らめてたじゃないかっ!!」
――……。
「ハメられた」
互いに口にして、今頃になって策略がわかってしまった。
梶島・櫻井コンビは美男美女で謳われている。
先輩たちはそれを逆手にとって、私たちをオトした。
「はいはい、今更互いにやきもちなんてヤメてよね。今となっちゃ、誰もジャマしないから」
「だーかーら、違いますっ!!」
千夏先輩に言う言葉が一真とダブる。
「いつもこんなんだから、頑張ってついてきてね」
梶島先輩だけが、素知らぬ顔して双子ちゃんに教えていた。
「ちょっと待ってください!!」
つかつかと双子ちゃんに近寄った私。
かわいい顔をした二人に見つめられる。
「いい? 二人とも。私たちは間違っても、付き合ってないから誤解しないでね」
女の子、もとい美衣奈ちゃんの手を取って懇願する。
その迫力に恐れをなしたのか、彼女はコクンと頷いた。
よし!と私はその隣に座っている双子の相方の方に向き直ると、一真が同じコトをしていた。
「よく聞け。俺はあんなガサツでわがままぷーな女なんかタイプじゃないんだ。な、そう思うだろ??」
私より、かーなーりヒドイ言い方が耳に入る。
男ならわかるよなっ?って言い寄られている稜大くんは申し訳なさ気にこっちを見る。
あなたが(無理矢理)頷く前に、私が一真を成敗だわ!!
「コラ! 一真――」
ガラッ……。
誰かが生徒会室に入ってくるのがわかり、それが先生だとわかった私は瞬時に怒るのをヤメた。
私の剣幕になんとなく苦笑しているように見える。
ホント、なんとなく。
だって、みんな先生を見ていたから、露骨には出せない状況。
「先生、入ってくるタイミング間違ったかな??」
「とんでもないです。逆にありがたいですよ」
「最近、この二人を止めるのも億劫になってきたんで」
千夏先輩……そんな言い方ってないですよ。
一真と付き合ってる風に言っているのはあなたじゃないですか。
「でもでもー、最近思うのは。先生がいる時は、あいもっちゃんおとなしいのよねぇー」
そう思わない??って話を振られた梶島先輩は言われてみれば……という顔でこっちを見てくる。
「き、気のせいですよ。気ーのーせーい!!」
「どう思います?? 先生」
千夏先輩の目が光る。
先生がいると思わず猫かぶっている自分に失態。
まだ、女のコしてたいかなぁーみたいな。
私はなんてフォローしたらいいのか思い浮かばない。
逆にドツボにハマりそうな気がして……。
千夏先輩に口で勝てた覚えないし。
どうしよう……と、あとは先生頼みになる。
またしても彼は注目の的になった。
少しの沈黙の後、口を開いた。
「それは、藍本が俺に――……」