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「さぁ、やってまいりました!! 毎年恒例の新入部員争奪戦!!」
「ご案内は笹木一真と」
「藍本葛葉がリアルタイムで報告しまーす!!」
やってまいりました、新入部員争奪戦。
梶島先輩ご指名で私たち二人は実況中継をすることになりました。
場所は生徒会室。
周りの雰囲気が掴み取れないけど、ここのまったりな空間も捨てがたい。
「部員のみなさん! お待たせいたしました!! 新入部員確保のチャンスが巡ってきました!ぜひ、獲得数上位入賞で賞品ゲットを目指してください」
「そして、新入生のみなさん。まだ入部届けを出していなかった人は残念!これから恐怖の体験が始まります。首から提げた鈴を時間内で死守した人には特別賞がもらえます。ぜひ、頑張ってください」
あとは、体育館のほうにいる梶島・千夏先輩のスタートの合図で開始する予定になっている。
「おーい、葛葉。何にするか?」
一真が冷蔵庫を開けて飲み物を選んでいる。
「いつものヤツー」
その答えがわかっていたのか、すぐにいつもの飲み物が目の前に現れる。
「サンキュ」
ペットボトルのキャップを開けて、のどを潤す。
「聞けたか? 渡辺先生のこと」
「いや……」
「ふーん」
横から一真が見てきた。
長年付き合ってきている幼馴染、彼の言わんとすることなんてわかってる。
だけど、それを合えて口にしない。
その流れでこっちも何も言わずに見返してしまう。
――……。
バン――!!
こ、これはお約束の??
開け放たれた出入口を見ると、やっぱり先生がいる。
――その後ろには、なぜか渡辺先生も。
「キミたち。もう、何も言わなくてもわかるよね」
「はい」
一真と声が重なる。
さすがに二度目ともなると、彼が何を言いたいのかはわかっていた。
いつもタイミングが悪い。
私は冷や汗をかきながら、後ろにいる渡辺先生のことを気にしていた。
「こんなイベントの時は、何したらいいかわからないからちょっと覗かせてもらいに来ました」
「それにしても、響崎先生と一緒だなんて怪しい」
渡辺先生はちょっと子供っぽく話す。
さすがは一真、そんなはぐらかしには騙されずに私の聞きたいことをすぐに聞いてくれた。
「彼とは、高校で同級生だったから、顔見知りなのよ」
「えぇ!? そうなんですか??」
それで全てが納得がいく。
初対面なハズなのに、親しそうに話したりしてたのが。
なーんだ、同級生だったのか。
「付き合ってたとか??」
一真がズバリ!と質問をしてしまう。
そこまでいっちゃうかい!?――でも、一番気になること。
「そうね――……ご想像におまかせかな」
「はいはい。これで昔話は終わり」
先生がこれ以上の追求はするな、と言わんばかりに打ち止めをした。
「えーそこが一番聞きたいのになぁ、葛葉」
「え!? あ……うん」
急に話を振られ、気のない返事をしてしまう。
先生二人は窓辺に向かい、校内を走り回っている生徒たちを見ている。
なにかそこで話をしているが、微妙にしか聞こえない。
「大人はすぐにはぐらかすよなぁ……」
「――……」
「おい、聞いてんのか?」
「はっ!!」
向こうの話に夢中になっていた私は、一真が何を言っていたかを聞いていなかった。
「どうせ俺たちがいるところじゃ、たいした話しないって」
二人に聞こえないように小声で言ってくる。
「渡辺先生が付き合ってたとすると、『究極のライバル』かもな」
「究極?」
「そうそう、究極だよ」
「おーい。そろそろ時間だぞーー」
急に目の前の無線が入ってくる。
梶島先輩がアナウンスを求めてきた。
私たちがそれを忘れていたのを見ていたかのようなタイミング。
――恐るべし、梶島雅治!!
「了解です」
実況中継なので、携帯のグループ通話機能を使って連絡を取る方法にしている。
これを使って、各地に散らばったメンバーたちから情報が入ってくる予定。
そして、部員たちにメッセージを一真が伝えている。
その後、向こう側でカウントダウンが始まるはず。
窓を開けた外から、歓声が聞こえてくる。
今年も部員たちはやる気満々のようです。
開始一時間は怒涛のごとく無線で報告が入ってきて、二人でリアルタイムに放送で流す。
「さすが、陸上部!! 走ることなら誰にも負けません。ただ今捕獲率No.1です!!」
「次を追っているのが、バレー部。今年は、顧問も変わって気合十分になってます」
過半数が捕まってくると、探すのにも時間がかかるのか報告もまばらになってきた。
――すると、途中で学内放送が入った。
「渡辺先生、至急職員室までお戻り下さい。繰り返します――」
「あら? 何の用かしら?? せっかく楽しんでたのに……」
呼ばれてしまっては仕方がないみたいで、渋々職員室に向かうみたい。
部屋を出る間際に振り返った。
「じゃぁね。藍本さんに笹木くん」
「お疲れ様です」
いつものクセで笑顔で二人ともそう答えてしまう。
「あーあ、だいぶヒマになってきたな」
「そうだねぇ……あと、三十分くらい?」
「はぁぁー。やっと邪魔者がいなくなった」
先生がいつの間にか私の後ろに立っていて、頭の上に寄りかかってきた。
「うぇっ……」
思わずカワイげのない声が漏れてしまった……。
けど、誰も気に止めてなかったようなのでホッとする。
「まー、たぶん葛葉のことだから話聞いたと思うけど、正式に『俺のもの』になったんで」
私の隣に座っている一真に報告をしている。
はい、確かに一真にはなんでも話すクセがあります、さすが先生。
性格を見抜くのがご上手のようで……。
「やだなぁ、先生。俺は最初から、贈呈してたじゃないですか。……ちょっとこの言い方は変だな。まるで、俺のものだったかのような」
一真は言い誤ったなぁと懸命に言葉を探している。
確かにその表現はとてつもなく誤解されそうな言い回しだと思う。
「葛葉とは、とてもとてもそんな関係になれませんよ。もし、そうだとしたらもう当の昔になんか起きてるよなぁ、葛葉」
「そ、そうだよ……」
身体を少し屈めた状態なので、はっきりとものが言えない。
「……なんとなく、わかってたけど。やっぱ俺的には、ちゃんと伝えておきたかったからさ」
「わかりますよ。みんなに俺のものだーって公言したいですよね。これでも、コイツ人気者なんで」
「だよなー……」
「俺の存在のせいで、悪いムシがつかないというか、なんというか」
「なぜか、『公認のカップル』に出来上がってるんだよな。キミたちは」
「なんででしょう?」
また、声がハモる。
一真とは思考回路まで似てきた!?
向こうもそう感じたらしく、二人同時に顔を合わせる。
「あーあ、俺が嫉妬しているのが馬鹿らしいな。二人を見ていると」
そう言ってやっと私の上から離れてくれた。
「これでも、否定してきたんですよ?? なのに、周りが認めてくれないというか……」
「十年近くも一緒にいると、隣にいるのが自然に思えるんだよね」
「わかったって。別にフォローはいらないよ。そろそろ体育館のほう見てくる」
返事を聞かないまま、先生は目の前からいなくなった。
――……怒った??
「葛葉ーぁ、これは明らかに失態だな」
「……よね」
「それに、結局渡辺先生のこと聞きそびれたしな」
ちゃんと聞きたいのに、聞きたくないような。
なんかいろんな意味でヘコみました……。