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――あの人は隠し事をしている。
そう感じるようになったのはいつ頃だろう。
問いただしてもただはぐらかすだけ。
やっと順調に進んでいるように思えてきたのにも関わらず、それで思い悩まされてしまう。
手に入れた安心感を失いたくなくて、必死に頑張っている。
身を裂くような想いの果ての”幸せ”のために……。
わがままな自分をいつも笑顔で許してくれる。
いけない時はきちんと叱ってくれる。
もう、これ以上困らせてはいけないと、これからは強くなっていこうと心に決めた。
追いかけるばかりだったのが、ようやく今になって周囲の状況が見えてきた気がする。
先日の一件で、一抹の不安に気づかされたからかもしれない。
いつかこうなってしまうことを誰かは予想してただろう。
ただ一途に人を想うことは、あるときは思いがけないことをもしてしまう。
もう、それを止めることはもう出来ないのかもしれない。
あの日、あの時、あの場所で。
それがなければ何も始まらなかった。
―――『大切な愛しい人』
知ってしまったから、もう離れられない。
それはあまりにも切なくて甘く、そして中毒になっていく。

――あの人は何か隠し事をしている。
そう思うようになったのはいつ頃だろう。
成すことを失敗しないようにするのが精一杯だった。
自分のせいで失敗をさせてはいけない。
周りの期待を裏切っては申し訳が立たなかった。
言いようのない不安に襲われる。
だからといって、そこから逃げ出すのは自分のプライドが許せない。
自分のことは放って置いて、無我夢中で走り続けてなんらかの形で結果を出すことは出来た。
周囲もそれを認めてくれて、ようやく深く息を吸うことが出来た気がする。
やっと余裕が持てるようになった頃、ようやく周りが見えてきた。
すると、時々感じる疎外感。
最初から秘密を抱えていたということに気づいてはいた。
周囲もただひたすらそのことに対しては秘密裏にしていた。
見て見ぬふりをし続けてきたけれど、そろそろこの案件にけりをつけたい。
隠し事なんて互いの信頼に傷をつけるだけ。
絶対にその秘密を暴いてみせるとそう心に決める。
――たとえそれがどんなことであったとしても。

「おい、見たか? あの殺人的なスケジュール」
「あぁ。また眠れぬ日々が続きそうだな」
次の仕事まで時間があるearlは楽屋でくつろいでいる。
今日の始まりにもらったここ一ヶ月のスケジュール表をマネージャーからもらった。
ほぼ休みがないに等しく、朝も昼も夜もぎっちりと仕事が入っている。
ここまで働きづめになるのも久しぶりで、嬉しいような悲しいような――。
聖はそのスケジュール表を黙々と見つめていた。
「なんだってこのスケジュールなんだ……」
「聖。ずっと見ていたって、休みが増えるわけでもないぞ?」
「商売繁盛じゃないか。バリバリ働くぜぃ」
冷静に突っ込みを入れる朔馬といつも前向きな魁がそこにいた。
「一ノ瀬家の血が騒ぐって?」
「そうそう――ってオイ。アレはアレ、これはこれだっ!」
唯一、兄弟の中で家の会社には携わっていない魁だが、時折商品開発を手伝っていることを知っている。
あまりにもそれに没頭しすぎて、本業が疎かになるのが玉にキズ。
「これがこうなるということは――平均睡眠時間三時間?」
一人の世界に入っている聖のつぶやきに、三人は少し意識が遠のいたのだった。
「今のうちに睡眠補給しておこう……」
前倒しで睡眠を取ったからといって、何がどうなるわけでもない。
だけど、魁の言葉に二人は同意して休憩を取ることにした。
要するに気持ちの問題だ。
来るべき忙しさに備えて、とにかく今は一時休戦。
思い思いの体勢で少しの間だけ、睡眠を取っている。
聖は横になりながら、天井を仰ぎ見て今後のことを考えているのだった……。