6-7



海晴は坂東の後ろを黙々とついて行った。
エレベーターに乗るとわかった時は抵抗があったが、すぐに他の人もホールに現れたので安心した。
そして、十五階に辿り着き部屋を案内される。
先に促された海晴は薄暗い部屋にドキっとしたが、すぐに電気がついた。
「適当に座ってて」
部屋一杯に広がるテーブルの周りにたくさんの椅子が並んである。
(何の部屋なんだろ……)
あたりを見渡しながら、適当な椅子に腰をかけた。
坂東はドア付近で何かをしていたが、物陰でよく見えなかった。
「――……スタッフの方はにいないんですか?」
自分の質問に血の気を引きながらも聞いてみた。
「いないよ?」
「え――? それじゃ、さっきと言――……」
「ヤダなぁ。なんでそんなヤボなことを聞くんだい?」
「――……っ!」
今になって坂東の意図がわかった海晴は音を立てて立ち上がった。
勢いをついた椅子は壁にぶつかって止まる。
「そういうつもりで来たワケじゃないです」
はっきりと断り部屋を出ようとするが、坂東に片手を捕まれる。
「海晴ちゃんって彼氏いるんだよね。こうやって毎日毎日、指輪してるし」
「わかってるなら、ヤメてください」
捕まれている手を振り解こうとするが、逆にテーブルの上に押し倒される。
「初めて会った時から、カワイイなって思ってたんだ」
「――……」
こんな状況でそう言われた海晴は嫌悪感を現した。
だから、この人は好きになれれないと拒否してしまったのだろう。
「海晴ちゃんも俺のことチラチラと見てただろ??」
「そういうつもりじゃ――……っ!!」
「今日のコトは彼氏には内緒にすればいい」
組み敷いた海晴にキスをしようと顔を近づけてくるが、それを避けようとして顔を背ける。
「キスは嫌だっていうのか? ――別にいいけど。こっちがガラ空きだし」
誘うかのように剥き出しになっていたうなじに顔をうずめた。
海晴はとっさに自分のポケットから携帯を取り出した。
誰に繋がるかもわからないまま、リダイヤルを押してバレないようにテーブルの下に放り投げた。
「ヤメてください!」
「大声出しても無駄だよ?『ここ』は防音がきいてるからね」
「いや……っ!」
「今更初めてっていうワケじゃないだろ? 昨夜だってしたんだろ?」
「なにを……」
首元を触られて、何があるのかを教える。
「ここにくっきりと残ってるよ? 彼の跡が」
心当たりのない海晴は、なんであるのかわからなかった。
(もしかして、また――……)
聖は海晴の知らないところで時々、そうやって目立つ場所に所有の印を残す。
きっと、今回のもそうなんだろうと答えを導き出した。
「そうよ。だから、あなたなんていらない」
「かっこいいコト言うね。でも、自分の置かれている状況わかってるか?」
(――……聖!!)

車で移動中の自分の携帯に着信があるのに気付いた聖は、誰からかを確認せずに電話に出た。
「もしもし? ――……もしもーしっ!」
何の反応もない相手に不審がり電話を切ろうとするが、よく聞いてみれば何かの物音がしている。
注意をして耳を澄ませていると、いきなり声が聞こえた。
「――……っ! 早く――早く事務所に戻ってください!」
電話の相手が誰かわかった聖はマネージャーに叫ぶ。
「まだ、仕事は残ってるのよ?」
「時間はまだ余裕があるはずです。そこ曲がったらすぐじゃないですか。戻ってください!」
赤信号で止まると、後部座席にいる聖を振り返った。
彼の顔を見て冗談じゃないとわかった翠は問い詰める。
「理由を言いなさい」
「お願いします」
いつになくまっすぐな瞳で見つめ返される。
答えは返さずにすぐに前に向き直った翠は、車を進めた。