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(どうしようかなぁ……。三上さんもムリにとは――って言ってたけど)
家のソファーでくつろぎながら、TVを見ている。
「どうした?」
ボーっとしていたのに気付いたのか、隣にいた聖が声をかけてくる。
「なんかね、平日もバイトに来てくれって言われたんだけど――どうしようかなって」
「三上さんたちに?」
「あ――今、別のトコでしてるの。ほら、三十周年記念の番組のヤツ」
「へぇ……そうだったのか。最近、全然バイト中は構ってあげられないからなぁ」
「――そうだね」
「で、そんなコトを言ってる人は誰?」
「坂東さんっていう人」
「――坂東?」
その名前を聞くと、聖は首をかしげる。
「年明けくらいに異動してこっちにきたらしいよ」
「そう――? なんか聞き覚えがあったような気がしたけど」
「思い出せた?」
「――いや。それより、ハルにバイト三昧をさせるために始めたつもりじゃないんだけど」
「……そうだけどね」
今となっては、当時の聖の意図がわかった海晴もそれに納得する。
聖が会わしたいと思ったのも、あの人柄があるからこそだった。
いつも笑いが耐えない。
ポシティブな環境にいれば、自然にそういう考えに近づいていくものだ。
「ムリにしなくてもいいんだよ? 学生なんだし、それを謳歌しないと」
「――うん」

結局、周囲の人たちがとても忙しそうだったので無下に断ることも出来なかった海晴は、平日もバイトをすることにした。
聖や三上たちも心配をしてくれたが、自分だけ蚊帳の外というのも嫌だった。
みんなとも仲良くなってきたので、最初の頃ほど抵抗はなくなってきていた。
それにバイトをしていれば、少しでも聖と一緒にいられる。
前に比べて会える回数は減ってきているが、それでも近くにいたい。
家にいれば必ず会えるけど、せっかくの環境を無駄にしたくなかった。
だから、由里もバイトという立場でも頑張っているのかもしれない。
ここにいれば、いろんな人たちと出会うことが出来る。
もしかしたら――なんてこともあるかもしれない。
――が、海晴には事件が起こり始める。

昼休みの時間になり、葵と彩は用事があるからと、教室を出て行った。
なので、今日は珍しく茶美と二人きりでお弁当を食べている。
「最近、コンビニが多いね。バイトでお疲れモードなカンジ?」
普段はお弁当を持ってきていた海晴だが、ここ最近はコンビニのおにぎりやパンなどが多くなってきていた。
「朝起きるのがツライ……」
「期間限定ってコトで頑張るしかないよね」
簡単にバイトの話を聞いていた茶美は、疲れている海晴をそう言って励ますしかなかった。
しかし、海晴にはもう一つ原因がある。
もしかしたら、こっちのほうが割合的に高いのかもしれない。
バイトに全く関係のない茶美にはこのことを話そうと思っていた。
「茶美だけに話したいことがあるんだけど――」
「あたしだけなのねっ」
聖じゃなく、自分だけという言葉に目を輝かせた茶美。
「でも、ご飯食べてからにしようね。不味くなりそうだから」
「一体、どんな内容なんだろ……」
すぐに食べ終えた二人は、購買で買ってきていた紙パックのジュースを飲みながら、話すことにした。
しかし、海晴の口は重くなかなか言い出せない。
「バイトで――仕事が多いとか? そんなコトあたしにだけってのも変か。じゃあ、彼以上にいい人見つけたとか? え、違う、やっぱり?」
茶美は海晴の反応を見ながら、適当に思いついたことを口にしている。
頭を横に振っていた海晴は、ずっと誰かに言いたかったことをとうとう話すことにした。
「あのね――……」
事の始まりは――そう、出会った時からだったのかもしれない。
第一印象の坂東修平は自分には合わないなと感じた。
外見だけで判断するのはよくないというものの、ある程度のことはわかるもの。
由里には逆に波長が合ったようで、何かと話したりしている。
だけど、憧れの人となった由里にとっては彼の成すことに一喜一憂。
他の人たちがコソコソと話しているを盗み聞きしても、悪いことを言っているのは耳に入ってこない。
自分の勘違いだったのだろうか?
――確かに優しいとは思うが、何かが違う。

連日続くバイトとの二重生活に、だんだんと疲れがたまってくる。
(あと数日間だし……)
そうやって、あと気力だけで乗り切ろうと頭の中で考える。
新しく次の仕事に取り掛かっている海晴と由里。
相変わらず、顔を出してくる坂東に対して海晴は表面上笑っている。
やはり、人間関係を自ら壊さないほうがいいと判断したのだ。
もしかしたら、自分の勘違いなのかもしれない
由里の言うとおり、坂東はいい人なのかもしれない。
なるべく悪い方向には考えないようにしようと思った。
(聖にぎゅってして欲しいよぉ……)
今すぐにでもここを抜け出して、聖に会いたい。
事務所にいないことなんてわかっている。

――だけど、今すぐ会いたい。