6-3



「坂東さん、すごいいい人だよぉ」
翌週の由里の第一声。
海晴とは違い、平日もバイトをしている彼女にとって接する回数も多い。
色々と手助けをしてくれたのか、褒めちぎっていた。
それに、元から好みのタイプだったのが余計に拍車をかけて、彼女の中の株は上昇中。
その話を聞いた海晴はなんとなくだが、坂東という人柄がわかってくる。
自分が困っていたりしたら、すぐに声をかけてくれて助けてくれた。
あちこちから呼ばれていて、頼りにされているんだということ。
その他いろいろと坂東語録を聞かされているたら、当の本人が現れた。
「おつかれさまですー」
「おつかれ」
コピー機の前に立っていた海晴は、由里の発言にハッとして振り返った。
既に海晴の後ろに立っていた坂東は、上から見下ろしている。
「どの辺りまで出来た?」
「えっと……、半分くらい?」
「そう。これが終わったら、次の仕事があるから」
そう言いながら、海晴の肩を叩いてこの場を去っていく。
(――……)
いきなり身体を触られたことにビクッとしてしまったことに彼は気付いたのだろうか?
他人から触れられることが苦手な海晴は過剰反応をしてしまう。
今となっては、聖といういつでもどこでもスキンシップ大好き人間と一緒にいることで和らいできている。
でも、それは聖だけの話である。
「なんか、坂東さんのクセみたいだね」
やはり、前に海晴が思っていた通りだったようで、由里もそう感じたようだった。
「あんな笑顔を向けられると、あ、私のこと気になってんのかな!?とか思っちゃうよね」
「そ――そう?」
「あー。でも、天咲さん、彼氏いるからそんなコトも思わないか」
いつもしている右手に光る指輪を見て、しみじみと言う。
「え、あ――うん」
「うわっ。きっぱり言われたぁ!」
「だ、だって――」
「てか、海晴ちゃん、ああいう人好みじゃないでしょ?」
「え――?」
いきなり図星を指され、きょとんとする。
それを見た由里はやっぱりという顔をした。
「なんかそんな感じがした。イメージがね、坂東さんっぽくない」
「じゃあ……、逆にどういう人っぽい??」
人からどういう風に見られているのか気になったので、逆に聞いてみた。
「そうだねー……。平山クンとか!?」
「う……」
「え、何!? やっぱり!? 同級生だしねぇ。へぇーやっぱりそうなんだー」
思わず武人の名前を挙げられて、反応をしてしまった。
聖と武人の雰囲気は似てなくもないので、そのままにしておくことにした。
「坂東さんは、どっちかといえば――主役より、脇役系? 主役にはなれないけど、存在感あるぞみたいな」
「――そうかも」
「あー、そんなコト言うんだ」
「伊東さんがそう言ったんじゃないですかぁ!」
「私は代弁をしたまでよ?」
「ヒドイなぁ……」
由里にあはは……と笑われながらも、その的確な発言に納得していた。

その日の仕事が終わる頃に、もう一度坂東が話しかけてきた。
「天咲さん、ちょっと――」
テーブルにいた海晴は、壁際にいる坂東の元へと歩み寄る。
「他の仕事も終わりそうになくて、悪いんだけど、平日もバイトに来れないか――?」
申し訳なさそうに海晴に相談をしてくる。
「え……? でも、あたし学校があるんで――」
「一、二時間だけでもやってくれると助かる。二週間くらいだけでいいんだ」
海晴の言葉を遮り、坂東は懇願をする。
(どうしよう……)
元はといえば、このバイトをしたきっかけも聖であって、お金が必要だからとかではない。
平日までバイトに時間をとられるとなると――。
「三上さんに相談してみます」
「じゃあ、明日返事聞くね」
「――はい」
その後に解散となり、海晴は部屋に帰ってきた。
ちょうどタイミングよく、三上がそこにいた。
「三上さーん……」
「何?」
手を休めることなく海晴に返事をする。
それに慣れてきた海晴は、そのままさっきのことを聞いてみることにした。
「坂東さんが、平日にもバイトに来てくれって頼まれたんですけど……」
「そっちも忙しいの?」
「みたいです」
「――……」
書類から顔を上げて、海晴の顔を見つめる。
目が合っているようで合っていないので、何か考え事をしているようだった。
(なんだろ……)
「―――坂東がそう言ったのよね?」
「はい」
「そっちの状況を把握してないから、彼の判断に頼るしかないわね。あなたが来てくれると、正直助かるんだけど……」
三上の言葉に海晴は振り返ると、てんてこ舞いになっている悠美の姿があった。
「あたし、ここにいたほうがいいんじゃ――?」
「それもそうなんだけどね」
「もー! なんでいきなり忙しくなるのよぉ!」
海晴が抜ける前までは暇だったので、そっちの仕事にいってもいいと判断した。
それを後悔にすることになり、ストレスが溜まった悠美は叫びながら仕事をしている。
そんな姿を三上は軽くため息をつきながら見ていたのだった。