大物必釣の谷
 
2016年6月15日(土)

■穴吹川
【釣行時間】午前8:10~午後1:40 【天気】晴れ 【同行者】(きゅう太郎) 【エサ】ブドウムシ

 今日・明日と月に1・2回あるパートの連休だ。今日丸一日かかる用事が先方の都合でキャンセルとなったため、きゅう太郎を誘って渓流釣りに出掛けることにした。きゅう太郎が、先月の3年ぶりの釣行以来、再釣行を熱望していたのだが、今月何度か約束していたものの、雨降りや水量不足でのびのびになっていた。このところも相変わらずまとまった雨が降らないが、私の仕事や里山活動のため、次はいつになるかわからないので、釣果は期待せず出掛けることにした。釣り場はきゅう太郎に任せた。
 午前6時、我が家を出発。私のランクルが集中ドアロックの修理でオンボロの代車が来ているため、今回はきゅう太郎の車に乗せてもらった。車の中で今日の釣り場を尋ねると、穴吹川源流域の超激戦区に行くという。そこは源流域とはいえ、比較的低い堰堤が連続する釣りやすい谷だ。きゅう太郎もいつの間にか60歳を過ぎ、さらに長い間渓流釣りを休んでいたため、まだ奥地の難所は自信がないというので、楽な渓をチョイスしたようだ。私が、「釣り人の多さに加えこのところの水量なら、2・3匹釣れたら良い方だろう。それに、午前8時頃だと、たぶん先行者がいるわ」と釘を刺すと、「そこで釣るのが名人じゃ。まぁ、見とけ」と、息巻いた。一方の私は、水量不足と明日の里山作業への体力温存のためテンションが上がらず、最初はきゅう太郎に同行しようと思っていたが、きゅう太郎は独りでじっくり釣りたいのか、私に近くの別の谷をしきりと薦めるので、言われるままに別れて釣ることにした。そこは、イワナオンリーの谷で、過去8回釣行して尺物5匹、そのうち1日に最大41cmを含む尺物が3匹出たことのある大物必釣の実績のある谷である。私は41cmを釣って満足したし、やはり四国ではアマゴの尺物の方が価値があるので、友人からリクエストがある場合を除いてはその谷に行かないことにしていた。最後の釣行は3年前の今頃である。
 午前7時50分、車止め着。意外にも先行者がおらず、きゅう太郎の目が輝いた。
 午前8時10分、午後2時に帰る約束をして車止め発。前回の釣行以後、広げられた作業道を歩いて、まずはきゅう太郎が入渓。私は、きゅう太郎が釣る谷を渡り、そこから山腹をトラバースして、目的の谷へ向かう。途中、植林が伐採されたばかりの7・80m幅の区域があり、積み重なった枝屑の上を歩くのに難儀した。
 歩きながら、最初のうちは「今日はテンションが上がらないので、下の方で遊んで帰ろうか」と思っていたが、渓に降り立ってからは徐々に地金が出てきて、「この渓の下流から中流は釣り荒らされているから、やはり上流まで行こう」と、気が変わった。そうなると、急に体幹に筋金が入り、筋骨が躍動しはじめ、みるみるペースが上がった。

 苔むした渓相。


 1匹目から9寸。
 普通の人なら絶対竿を出したくなるような渓相をどんどんパスして、一気に源流の二又まで歩き通した。過去8回も釣行していると、釣れる場所は熟知している。
 午前9時30分、釣り開始。ここまでは、暑くて汗だくであったが、釣り場はほぼ日陰で涼しく、すぐに汗はひいた。
 最初5ポイントは意外にもアタリがなく、「やはり、相当釣り人が入っているんだなぁ」と思わされた。しかし、6ポイント目で最初の1匹が釣れたが、釣れるとここのイワナは型が良い。いきなり27cm。そして、次は29cm。

 2匹目は泣き尺29.0cm。

 今日は釣りの前半・中盤の模様は手短に。
 その後もポツリ・ポツリだが、20~25cmが10匹ほど釣れて、水量の割には楽しませてくれた。しかし、源流域に突入すると、以前からあったがけ崩れが拡大しているようで、その瓦礫が徐々に下りてきて、渓が階段状になっていた。瓦礫の下を伏流して距離にして50mほど水が途切れる区間もあった。
 それでも核心ポイントはまだ上だ。瓦礫の階段を乗り越え乗り越えしながら、大規模ながけ崩れ現場をパスすると、ようやく核心ポイントに到達。ここからしばし傾斜が緩くなり、魚止めまで距離にして100m、ポイントは7つほどだ。
 最初の5ポイントでは予想外に7寸が1匹で、「ここまで人が入っているのか」と疑念させられたが、最後の2ポイントでは期待を裏切らないドラマが待っていた。
 まず、4年前41cmが釣れた浅淵では、落ち込みのすぐ後ろの幅60cmくらいの流れに、以前はなかった太い流木二本と大きな岩数個が複雑に絡まりあっていた。その隙間をのぞき込むと、なんと目視で30cmほどイワナが定位しているではないか。さすがは最源流のスレていないイワナ、3mほどの距離から観察している私に気付かず、「ユラリ、ユラリ」と泳いでいる。しかし、しばらくして目を見張った。何かの拍子に、そのイワナが若干後退すると、前からもう1匹のイワナが姿を現したのだ。大物同士のつがいはたまに見かける。そのイワナは後半身しか見えないが、最初のイワナよりも一回り大きな尻尾と太い胴回りをしており、35cmいや40cmあるように見えた。胸が高鳴る。ターゲットはそれに決まり。しかし、掛けてからやり取りできるエリアはそのイワナの前後50cmくらいしかない。「いやぁ~、難しいなぁ」と思いながらも、ハリスを0.8号に替え、ブドウムシをつけていざ投入。落ち込みの白泡の末端、ターゲットの鼻先30cmくらいの岩陰で見えないポイントに投入すると、20cmほど仕掛けが流れて、すぐに止まった。アタリがなかったのでもう5秒ほど置いてから軽く竿先をあおると「グビッ、グビッ!!」という、頭を振るような手ごたえがあり、すぐに「ビンッ、ビンッ!!」という強烈な引きが伝わった。下流の流木に引っ掛けたり、岩下に潜らせたりすると、玉網がないので取り込めない。となると、前方向と上方向に強いテンションをかけ、その場にできるだけとどめさせて疲れさせ、手づかみで取り込むしか方法はない。しかし、35cmを超えると思われる大物を渓流竿と釣り糸で押さえ込むことはそもそも不可能。なんとか、15秒ほど耐えていたが、下流へ向かっての強烈な引きの後、無残にも竿先が跳ね上がった。やんぬるかな、ハリス切れ。針のチモトで切れていた。
 まだ、チャンスがあるかもしれないと仕掛けを替えて再投入するも、反応なしでガックリ。0.8号をあっさり切るほどのパワーがあれば、もしかしたら40cm以上あったかもしれないと思いつつも、「今度、マサかタカを連れてきてやろう」と気を取り直し、その時のために、今回邪魔をしていた50kgはありそうな流木2本と岩塊1個を「ヒィー、ヒィー」言いながら川岸に動かして、その場を離れた。
 そして、最後の魚止めの滝壺。ここは、居たり居なかったりするが、もし居れば大物間違いないので、新しく0.8号の仕掛けを作り直して、直径8mほどの滝壺の核心部分に投入した。1投目は1分ほど流していたが、反応なし。2投目は投入してから30秒後に仕掛けがゆっくりと水流と反対方向に移動した。これまた、しばらく置いてから「ビシッ!!」と合わせを入れると、「ズシッ」とした重みが手に伝わった。最初は浮いてこなかったが、重みからして確実に尺はありそうだ。30秒ほどで初めて姿が見えたが、「デカいっ」。その後も何度か浮き沈みはあったが、浮いてくるたびに「ゴボッ、ゴボッ」と音がして、テンションマックス。ここは先ほどのポイントとは違い、広々とした滝壺、やり取りするスペースは十分にある。唯一の懸念は玉網がないことだ。とにかく、水流の強い流れ出しの方へは行かないように心掛けながら、3分以上かけて疲れさせようとした。しかし、意外にも2分ほどで寄ってきて、そのまま川岸にずり上げた。
 すぐに検寸すると、幅広の36.5cm。丸いヘビのような断面のイワナ型ではなく、丸々と肥えたサバのような魚体で、過去最大の41cmには及ばないが、見事な大イワナ。よくもまぁ、こんな源流でここまで大きくなるのが不思議でたまらない。やはり、原生林を流れる清流のたまものか。

 最源流の滝壺で釣れた36.5cmの大イワナ。この渓は期待を裏切らない。

 時間が余ったので、調子に乗ってもう一段上の滝壷もやってみたが、反応なしで納竿。納竿地点でおにぎりを食べ、午後12時30分退渓にかかる。

 納竿の滝。

 退渓もペース良く、1時間ちょっとで車止めに帰還。午後1時40分。15分後にきゅう太郎が戻ってきたが、私が開口一番、「言うたとおりだったやろ」と言うと、きゅう太郎は「7寸1匹のみ。おかしいのぉ」と疲れ切った表情で答えた。私が申し訳なさそうに釣果を述べると、「ほらっ、俺がそっちの谷を薦めたんが正解やったやろ」と、今度は逆に鬼の首を取ったように言うのが面白かった。
 午後5時、帰宅。最大イワナ以外はきゅう太郎にプレゼントした。
 まとめ。今日の釣果は尺上1匹、9寸2匹、8寸1匹、7寸4匹、7寸未満4匹の12匹。釣った距離も時間も短く、水量少なく、晴天下だったので、数は少ないが、なにしろ36.5cmを含めた尺、9寸、8寸、7寸のサイクルヒットが出たので大満足だ。

 まな板の幅ぴったりの大アマゴ。色が変わったがホレボレするような魚体だ。翌日、香草焼きにして食べたが、淡白な肉質で非常においしかった。

 やはり、苦労しなければ良い思いはできないのが世の常か。

【本日のデータ】 イ:イワナ
月日(曜日) 場 所 時 間 天 気 同行者 釣果
(匹)
キープ
(匹)
24cm
以上
(匹)
最大
(cm)
釣行記
タイトル
7 6月18日(土) 穴吹川 午前8:10
~午後1:40
晴れ (きゅう太郎) イ12 イ8 イ4 イ36.5 大物必釣の谷