自動車免許更新の時期がきた。私は2期連続でゴールド免許を継続しており、あと数日頑張れば3期目を迎えることができる。
しかし、若い頃はやんちゃな運転をしていた。もう時効なので、洗いざらい告白するが、私は3度免停を経験している。

20代は山でよくバーベキューをやり、飲酒運転して帰った。 |
1度目は、20歳の頃、原付バイクでのスピード違反の累積やヘルメット非装着によるもの、2・3度目は20代後半の酒気帯び運転によるものである。
1度目について、元気な若者が原付の制限時速30kmで走るはずがない。また、当時はヘルメット装着が義務づけられたばかりで、法律が施行されたにも関わらず、ヘルメットを買い渋り、しばらく被らずに走行していたため、反則キップを切られた。
後者の酒気帯び運転は、現在では重罪だが、当時はまだまだ認識不足の運転者が多く、さらに私は自営業者だったので、もし捕まっても会社を首になることもなかったため、遠慮なく飲酒運転をやっていた。我が家は電車の駅もバス停も近くにないので、夜飲みに行くときは当然のごとく車で出掛けていた。また、昼間は飲酒検問がないため、渓流釣りや登山に行った時は、現地に到着すると缶ビールをまず1本、釣行中・登山中にも数本、終了後にも1本と、今考えるとむちゃくちゃをやっていた。
また、最初のランクルを買った当初は、塾の授業後23時ごろから、オフロードドライブの練習のつもりで琴南の林道へ通い、ラリーさながら(当時はパリダカが流行っていた)、夜な夜な爆走していたものだ。
ある夜、飲み会中に友人たちと車の話で盛り上がり、12時ごろ、大雨の中、前述の林道に走りに行った。当初、その林道は工事中だったため5kmほどで行き止まりになっており、往路は走り慣れている私が自慢げに見事なハンドルさばきとアクセルワークを披露した。復路は運転自慢の友人(ユーノスロードスター所有)に替わったが、スポーツカーと4WDでは勝手が違う。ヘアピンカーブで、当日の大雨により深さ20cmほどになったぬかるみにタイヤをとられ、路肩に駐車していたブルドーザーに吸い寄せられるように車体右側面から激突。幸い、我々に怪我はなかったが、運転席横のガラスは砕け散り、右前部のフェンダーはグシャグシャ、右前輪のタイヤはパンク、アルミホイールも変形した。それでも、さすがはランクル。大雨に濡れそぼり、ぬかるみに足をとられながらもとりあえずスペアタイヤに交換すると、なんとか自走できた。しかし、警察を呼んで事故証明をとらなければ保険が使えないが、まだ酒が残っている。そこで、一旦帰宅して仮眠し、酒気を抜いてから再び現地に向かうことにした。

飲み会後も飲酒運転常習だった。 |
午前5時、酒気が若干残っていたが、少しでも早く処理をした方が良いと考え、牛乳を飲んだりガムをかんだりしながら現地に向かった。途中の駐在所に寄ったものの駐在さんは不在。机の上にあった電話機で、最寄りの警察署に連絡すると、警察署から駐在さんの寝室直通の電話をかけてくれたのか、奥の部屋から目をこすりながら駐在さんが出てきた。見るからに不機嫌そうな表情で、「こんな時間に何をしとったんや」と。さらに、本署からひとり応援が駆けつけてくれて、窓にゴミ袋をガムテープで張り付け、右側面がグシャグシャになった見るも無残なランクルがパトカーを引き連れて現地に向かった。雨は小降りになっていたものの、靴が埋まるほどのぬかるみと「ここはうちの管轄外」という警察官のますます険しくなる表情に、平身低頭しながら、実況見分に応じた。ブルドーザーの弁償が心配だったが、見たところ若干私の車の塗料が付着していただけで大きな損傷はなく、「こんなところに駐車しておくのが悪いから、放っておけ」と警察官らしからぬ言葉に一安心した。また、若干残っていた酒気にも気づかれずホッと胸をなでおろした。保険の申請は、私が運転していたことにして私の保険を使い(修理費約50万円)、約1か月で修理が完了。
そんなことがあったにも関わらず、若気の至りか、その後もしばらく飲酒・酒気帯び運転は続き、3年間隔で2回酒気帯び運転で捕まり、合わせて約10万円の罰金を支払った。30歳過ぎてさすがに罰金が20万円を超えるようになると、この悪癖はおさまったが、今考えると本当に反省しきりだ。
話は変わり、30歳半ばを過ぎて、ネズミ捕りや駐車違反の取り締まりが行われる日中の街中に車で出掛けることが減り、車で出掛けるといえば里山作業や渓流釣り、登山といった早朝や田舎道・山道のドライブが増えたため、交通違反がほとんどなくなった。
40歳過ぎたころ、ゴールド免許取得を意識し始めた。ところが、ゴールド免許取得予定の免許更新の10日前に事件は起こった。自宅近くの、しばしば事故が起こる交差点でのことだ。どちらもセンターラインのない1.5車線同士の交差点で、優先車線の両方から私の走行車線に向かって曲がろうとウインカーを出しながら2台の車が停車していた。車線が狭いので、私の車が交差点を通過しなければ、その2台が曲がりにくいので、私は徐行しながらも一時停止はせずに交差点を通過した。すると、何やらうしろから声がする。まさか自分とは思わず、もう2・300m走ると、今度は派手なサイレンの音とともに、再び拡声器の大きな声がしたので、バックミラーをのぞいた。すると、ものすごい勢いでパトカーが追ってくる。ここで、やっと「自分かな」と思い、慌てて停車すると、50歳がらみの警察官が急いで私の車に駆け寄ってきて怒鳴った。「なんで、すぐに止まらんのや」と。私は、まだピンと来ず、不得要領で「どうしたんですか」と尋ねると、その警察官はますますエキサイトして、「早く降りなさい」と強制する。「自宅が見えるところで、近所の人に見られたら恥ずかしいなぁ」なんて気楽に考えながら、事情を聞くと、一時停車違反だという。私は一瞬で逆上し激しい口調で反論。「両側の車が待っていたから、少しでも早く通過してあげようと思って、あえて一時停止せずに通り抜けたんや。それに、あの交差点は皆そうしている」と。しかし、当の警察官は「もし、横から歩行者や自転車が出てきたらどうするんや」とか、「法律だから守らなければいけない」などと理屈を並べる。「歩行者や自転車なんて見たらわかるわ」に加え、「あの交差点での行き違いはああするのが普通や。なんでも法律が通用するとは限らん」と繰り返し、一歩も譲らなかった。しばらく押し問答していたが、警察官の携帯が鳴り始めたため、「ちょっと忙しいけん、あとから派出所に出頭してくれ」と言い残して、その場を去っていった。
その後冷静になっても、納得がいかない。さっさと解決しようと、2時間後に派出所に向かったが不在、その後も1時間ごとに2度のぞきに行ったが相変わらず不在なので、当日はあきらめた。翌日の9時頃再訪すると、やっと例の警察官がいたので、堂々と中に入ると、当の警察官が開口一番、「なんで、昨日来なかった」と利口気に言うので、私の湯沸かし器が一瞬で沸騰。「昨日3度も来たんやけど」。
当の警察官は「ちょっと待っといて」と言って、別室で取り調べの準備をして、私を招き入れた。机の上には、『○○調書』とか『交通六法』とか仰々しい書類を並べ、若い警察官を伴い二人がかりで私を威圧するが、私はへっちゃら。裁判になって負けてもいいから(当然負けるだろうが)、堂々と自分の主張を述べてやる気で取り調べに応じた。

ネズミ捕りイメージ写真。 |
最初は相変わらず昨日と同じ問答の繰り返し。ついに、業を煮やした警察官は「裁判になったら、前科がつくで」と脅しにかかる。私は、「裁判になっても、負けてもかまんで。私は人として当然の事をしただけや」と、ひるまない。そして、とうとう私の究極の言葉が発せられた。「法律、法律言うけど、両側の車を待たせておいて、少しでも早く通してあげようと思うのが人情でしょ。法律と人の思いやりの心とどちらが大事なんですか」。すると、当の警察官、言葉につまった。若い方の警察官は居づらくなったのか、そっと席を離れた。そして当の警察官、腕を組んでしばらく考え込んだ後、「そこまで言うのなら、今回はなかったことにしよう」。さすがに、これ以上持論を展開しては元の木阿弥になる恐れがあったので、「今後気を付けます」と言って席を立った。その際、「法律を守るのが我々の仕事やけんな」と、小声の負け惜しみが聞こえた(笑)。後日、晴れて私は初めてのゴールド免許を手にした。さらに後日、警察官の妹に一部始終を報告すると、「私なら、何を言われようと許さないわ」と言われ、苦笑いした。
さて、その後の運転歴には大過なく、その間1度のゴールド免許更新を経て、現在に至っているが、今月3期目のゴールド免許取得を控えたここ1か月半で、デイサービスの送迎中にこんな出来事があった。
7月末に、初めてのルートで利用者を5人乗せて送っている際、細い路地で転回しようとバック中に、車体左後部を水銀灯のポールに当ててしまい、修理代が25万円ほどかかった(会社の自動車保険でまかなった)。過去30年余りの運転歴において人身事故や修理が必要なほど車を破損したことのない私にとって、非常にショックな出来事だった。しかし、利用者に怪我もなく、人身事故や対物事故などにならず、不幸中の幸いであった。

路上をはう亀のイメージ写真。 |
8月末には、朝のお迎え中、送迎車で対向もままならない狭い箇所を通過後、センターラインが現れ、急に道幅が広くなる県道を走行していた。制限速度は40kmだが、普通のドライバーなら50km以上は出して当然のシチュエーションだ。私はたぶん55kmは出していたと思う。すると、私の走行車線前方を亀がのんきにはっているのを見た。センターライン付近だったので、そのままの速度でかわすことも可能だったが、重度の認知症の利用者さんがひとり乗っていたので、ちょっと脳の活性化になると思い、しばらく停車してその亀が道を渡り終えるまで一緒に観察した。そして、発車するとすぐに、なにやら三脚カメラのようなものを前に男が椅子に座っているのが目に入った。すぐには気が付かなかったが、さらに100mほど進むと、路肩の広場で車4台にまとわりつく警察官とパトカーが見えて、やっと納得した。スピード違反のネズミ捕りだったのだ。亀が現れず、そのままのスピードで走行していると、確実に捕まっていた。もし、そうなれば減点かつ罰金でゴールド免許取り消し、さらに送迎が遅れて利用者さんに迷惑を掛け、その後の業務に支障をきたすところだっただけに、本当にラッキーであった。それもこれも、神様ならぬ亀様のおかげであると喜びもひとしおだった。
今月中に免許更新に出掛けるが、3期目のゴールド免許獲得は目前である。若い頃は無茶な運転をしていたし、その後もいろいろ危ない場面もあったが、ここ15年ほどはなんとか交通違反を回避してきた。しかし、これらの幸運におごらず、今後も安全運転を心掛けたいものである。
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