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秋山草堂〇〇七部屋・その他書籍〈関連作品・パスティーシュ等〉「ヤング・ボンド」

DATA

ヤング・ボンド
〈原題:SILVER FIN〉

2005年度作品
チャーリー・ヒグソン著

あらすじ

13歳のジェイムズ・ボンドは、イートン校に入学した。
奇妙な校則、尊大な教師、質素な食事、そして上級生の虐め。
多かれ少なかれどこの学校にもある、そういった欠点に戸惑いながらも、同級生や信頼出来る一握りの大人達に囲まれ、ジェイムズは次第にイートンでの生活に慣れていった。
やがて、彼を待ち受ける過酷な試練。
ジェイムズ・ボンドは、生まれて初めての死の恐怖に直面する…。

解説

若き日のジェイムズ・ボンドを描いた「ヤング・ボンド」シリーズの第一作。
……と言っても、(2008年11月現在)二作目以降は残念ながら翻訳されておりません(二作目も翻訳される予定にはなっていたようですが、音沙汰無し。例によって売れてないのでしょうなぁ……)。

フレミングの原作に繋がる小ネタ(ボンドの頬の傷や、紅茶嫌い、車好きの由来など)は色々仕込んであるのですが、楽屋オチ的な浮かれた印象がしないのは、全体的に品の良いジュブナイルとして纏めてあるからなのでしょう。
フレミングの原作と相容れない設定(ボンドのイートン校入学の年齢や、叔父のマックスの存在など)があったりしますが、そんなのは些細な事で、面白ければオールオッケーなのです。
特に、叔父のマックス・ボンドがとても魅力的です。
フレミングの原作(007は二度死ぬ)では、両親の死後、チャーミアン叔母さんが女手一つでジェイムズを育てたというように書かれていますが、ボンドの少年時代を描くにあたり、作者はジェイムズの男性としての理想像となる父性の存在が必要だと考えたのだと思います。

あと、日本語版に関して、良い点と悪い点を。
まず、装丁が良い事。
日本版のジェイムズ・ボンド関連書籍の中では、出色の出来だと思います。
上品なイラスト、センスの良いレイアウト、帯の惹句「ジェイムズ・ボンド、カジノ・ロワイヤルのその前。」も心憎いですな。
あと、翻訳そのものは問題ないのですが、誤字脱字、ルビの間違いが多いのが玉に瑕です。

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