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秋山草堂〇〇七部屋・小説「新・私を愛したスパイ」

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新・私を愛したスパイ

1977年度作品
クリストファー・ウッド著

あらすじ

イギリス海軍の原子力潜水艦レンジャー号が、南大西洋上で突如消息を絶った。
手掛かりを追ってカイロに飛んだボンドの前に現れる怪しい影。
敵はソ連か、それとも……。

解説

「私を愛したスパイ」の映画化に際してタイトル以外は使ってはいけないというイアン・フレミングとの契約で、一から物語を作らなければならなくなった為、小説家クリストファー・ウッドがオリジナルストーリーを執筆。
それを、脚本家リチャード・メイボウムと共同で脚本化する傍ら、ウッド自ら小説化したのがこの作品。
ただのノベライズと舐めてかかると、その面白さ、完成度の高さに驚かされます。

同じプロットでありながら、映画版はのんきな音楽とコメディタッチのアレンジで軽い雰囲気の仕上がりでしたが、小説版はフレミングっぽさを意識した文章で、細かいディテールの積み重ねが、荒唐無稽な内容に地に足着いた現実感を与える事に成功しています。
ストロンバーグやジョーズの生い立ちの描写や、ゴーゴルの粘着質な性格、ボンドの拷問シーンなどの、フレミングっぽさのツボを巧く押さえてあって見事です。

小説と映画は同時進行で製作されていたらしく、細かい相違点がありますが(人物等の名称のみ翻訳の際に映画版に合わせてある)、断然この小説の方が面白いです。
フレミングの贋作として、非常に完成度の高い作品だと思います。

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