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秋山草堂〇〇七部屋・小説「ワールド・イズ・ノット・イナフ」

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ワールド・イズ・ノット・イナフ
〈原題:THE WORLD IS NOT ENOUGH〉

1999年度作品
レイモンド・ベンスン著

あらすじ

石油王ロバート・キング卿の300万ポンドもの大金を、テロリストから取り返したボンド。
しかし、密かに現金に仕込まれた爆弾によってキング卿は殺されてしまった。
キング卿の娘エレクトラを誘拐した前科のあるテロリスト、レナードの仕業と睨んだボンドは、エレクトラ自身が次のターゲットになる危険を懸念する。
Mは、エレクトラ警護の為、ボンドを派遣するが……。

解説

ニール・パーヴィスとロバート・ウェイドの書いた脚本を元に、レイモンド・ベンスンが書いた、同名映画のノヴェライゼーションです。
映画版に比べてレナードやエレクトラの内面描写が増えている分、物語の構造をより理解しやすくなっているのは良い点でしょう。
特に、映画版では影の薄かったレナードですが、感覚がない事の悲しみや、愛するエレクトラの為に自分の残り少ない命を捧げようとするひたむきさが描写される事で、ちゃんと存在感のある悪役になっています。

冒頭の「書類を買って」「お金を取り返して」の件も、映画とは少し違った経緯になっていて、映画版と比べると矛盾は少なくなってます。
それでも、かなりこじつけっぽい事には違いないのですが。

とは言え、前回「トゥモロー・ネバー・ダイ」と同様、シナリオに毛が生えたような感じで、小説としては正直物足りない出来です。
Mの台詞「世の中には、火山を刳りぬいた秘密基地に胸の大きな女たちを集め、核兵器で世界を脅迫するような狂人ばかりが住んでいるわけではないのよ」には、笑っちまいましたが。

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