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秋山草堂〇〇七部屋・小説「007 ハイタイム・トゥ・キル」

DATA

007 ハイタイム・トゥ・キル
〈原題:HIGH TIME TO KILL〉

1999年度作品
レイモンド・ベンスン著

あらすじ

英国屈指の研究機関、国防評価研究局(DERA)のトマス・ウッド博士が殺害され、博士が開発した航空機用外装“スキン17”のデータも奪われてしまった。
現場に残った手掛かりから、俄に勢力を増しつつある犯罪組織〈ユニオン〉の仕業である事が判明し、“スキン17”奪還の命令を受けたボンドはベルギーに飛ぶ。
しかし、あと一歩と言う所で奪還に失敗し、データはネパールに持ち去られてしまった。
更に、予期せぬ謎の勢力の介入で、データを乗せた飛行機はヒマラヤ山脈はカンチェンジュンガの海抜8000メートル地点に墜落してしまう。
早速、ボンドを含めた登山隊が編成されるが、“スキン17”を狙う他の複数の勢力もカンチェンジュンガを目指して動き始めた!

解説

ベンスンの第3作(ノベライズの「トゥモロー・ネバー・ダイ」を含めると4作目)。
冒頭から「ナッソーの夜」の総督を再登場させた上に殺しておいて、あまり本編には関係ないってのは、「それってファンサービスになってる?」と少々首を傾げてしまいますが、同じファンとして気持ちは分からなくも無いので良しとしましょうか。

で、内容の方はと言えば、ベンソンもやっと乗ってきたかと思えるなかなか良い出来です。
物語の後半ほとんどを雪山でのサスペンスに割いてあり、複数勢力が同じ目標を目指し、そしてボンドがいる英国の登山隊の中にも、読者に明示されている裏切り者と、それとは別に正体不明の裏切り者まで紛れ込んでいる、そんな中と外の敵の存在に加えて、雪山そのものが持つ危険とが相まって、緊迫感を維持したまま一気に読ませてくれます。
やれば出来るじゃん、ベンスン(笑)。

今回は、キャラクターも魅力的で、まずイートン校時代からのボンドの宿敵、ローランド・マーキスがとても印象的です。
ボンドとの確執から、虚栄心や英雄願望などの卑俗な人間性が垣間見え、悪党なんだけど憎みきれない魅力があります。
さらに、ボンドの頼れる相棒、グルカ兵のチャンドラもイイですねー。
こういうキャラがいてくれると、安心できます。

さてさて、物語的には犯罪組織ユニオンが登場する三部作の一作目に当たるのですが、残念ながら残り二冊は翻訳されておりません。
せっかく面白くなってきた所なので、是非続きを読んでみたいのですが、ベンスン作品の翻訳は中断したまま。
やっぱ、売れてないんでしょうねえ……。

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