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秋山草堂〇〇七部屋・小説「007 ゼロ・マイナス・テン」

DATA

007 ゼロ・マイナス・テン
〈原題:ZERO MINUS TEN〉

1997年度作品
レイモンド・ベンスン著

あらすじ

1997年6月。
中国への返還を間近に控えた香港で不可解な殺人事件が相次ぎ、英中間の緊張が高まった。
一見無関係なそれらの事件の裏には、香港に拠点を置く国際貿易会社ユーラシア・エンタープライズが関わっている事がわかった。
早速香港に飛んだボンドは、ユーラシア・エンタープライズの最高責任者ガイ・サッカリーに接触する。
そして浮かび上がる怪しい存在。
敵は、暗黒街を牛耳る三合会の一派“ドラゴン・ウィング”の首領リー・シュナンか、中国軍の将軍ウォン・チョーカムか、それとも……。

解説

三代目ボンド作家(マーカムやウッドも入れれば五代目か?)レイモンド・ベンスンの第一作です。
ボンド物を手がける前から有名作家だったガードナーとは違い、作家としてはこれがデビュー作になるベンスン。
小説として若干ぎこちない所もありますが、内容的には違和感なく楽しめます。
ベンスン自身、もともと007シリーズの大ファンで、過去の作品からの引用(フレミングは勿論、映画版やガードナー作品まで)がちりばめてあり、ファン心をくすぐります。
悪く言えば“良くできた同人作品”的ではありますが、素直な作風に悪印象は感じません。

ただ、後半、オーストラリアに赴くまで物語がほとんど展開せず、それまで背景設定を説明するためだけにボンドが右往左往させられている印象が強いのが難点です。
あと、ボンドが麻雀の勝負をするのですが、麻雀漫画や阿佐田哲也の小説等の高度でバラエティに富んだ日本の麻雀物に慣れている目で見ると、レベルの低い勝負に思えてしまいます。
特に勝負の最後、ボンドが一発逆転の手として“翡翠のドラゴン”という高い役を作るのですが、どう考えてもボンドの待ち牌が索子以外あり得なく、且つ場に二索と七索と八索の刻子が晒されている状況で、相手が超危険牌の一索を振り込んでしまう展開には、相手が間抜けなだけにしか思えません。

映画版でもそうなのですが、予知能力でもあるかのようなQの用意周到ぶりには笑ってしまいますな。

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