ホーム〇〇七部屋 > 小説「メルトダウン作戦」

秋山草堂〇〇七部屋・小説「メルトダウン作戦」

DATA

メルトダウン作戦
〈原題:LICENSE RENEWED〉

1981年度作品
ジョン・ガードナー著

あらすじ

原子物理学者にして世界有数の実業家アントン・ミュリックは、国際原子力調査委員会を除名させられるほどの偏狭で危険な思想の持ち主だった。
そのミュリックが国際的テロリストと接触したとの知らせに、英国の警察及び諜報組織に緊張が走る。
MI5、首都警察との共同作戦の下、Mは007=ジェイムズ・ボンドを派遣した。
ボンドは、ミュリックが待つスコットランドの古城に潜入するが……。

解説

十数年ぶりに復活した小説007シリーズ(ノベライズを除く)。
ジョン・ガードナーの文体は、フレミングとは大きく異なり、最初は強く違和感を感じましたが、中途半端に似ていないのが良かったのか、後半は別物として割り切る事が出来ました。
作風的にも、フレミングの原作のプロットラインを押さえながらも、映画シリーズ風のアクションシーンを盛り込み、両方の中間的な物になっているのが特徴です。
ただ、文体の簡潔さと、舞台となる80年代という時代そのものが持つ軽薄さから、フレミング作品と比べ軽く薄っぺらい印象を受けてしまう事は否めません。

とは言え、プロット的にはオーソドックス且つ隙の無いボンドストーリーで、なかなか楽しませてくれます。
特に後半、ボンドが空港で逃亡してからの展開は緊張感に満ちていて申し分ないです。
クライマックス、飛行機の後部ハッチでのケイバーとのシーンは、映画「リビングデイライツ」のネクロスとボンドのシーンの元ネタでしょうな。
“ウォーロック”の謎解きもイイ感じです。

キャラクター的には、悪役ミュリックはオーソドックスですが存在感があって悪くないです。
ただ、時代に合わせて牙を抜かれた感のあるボンドには物足りなさを感じますし、ヒロインのラヴェンダーにフレミング作品のヒロインほどの個性と魅力を感じないのは残念なところです。

TOPページに戻る