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秋山草堂〇〇七部屋・小説「女王陛下の007」

DATA

女王陛下の007

1963年度作品
イアン・フレミング著

あらすじ

かつて一つの愛を失ったロワイヤル・レゾーで、ボンドは新しい愛と出会った。
犯罪組織ユニオン・コルスの首領マルク=アンジュ・ドラコの一人娘、トレーシー。
二人は次第に惹かれあい、仲を深めていく。
一方、杳として行方が知れなかった宿敵ブロフェルドがスイスにいると言う情報を掴んだボンドは、准男爵になりすまし単身敵地に乗り込んでいくが……。

解説

原作第11作。
前作「わたしを愛したスパイ」で、ヒロインであるヴィヴに「(ボンドを愛した女の)だれひとりとして、彼(ボンド)を自分のものにすることはできない」と言わせた舌の根も乾かない内にフレミング、ボンドを結婚させてます。
可哀相なヴィヴ……。

しかしまあ、冒頭、ボンドにロワイヤル・レゾーでヴェスパーの墓参りをさせた上で、トレーシーと出会わせ、死別させる、その周到な御膳立てと言うか、「やっぱそれしかないよなー」感は、ラストシーンを知っていても胸に迫るものがあります。
結婚が決まってからのボンドとトレーシーの会話など、晩飯に何を食べたとかどうでもいい話題だったりな所が、恋人同士のありふれた日常会話な雰囲気が出ていて、とてもいいですね。
もっとも、それも全てラストで壊される平凡な幸せと言うヤツの振りの一つなんでしょうがねえ。

二度目の登場となるブロフェルド氏は、相変わらず凄みを見せつつも前回登場時(サンダーボール作戦)のような有無を言わせぬ存在感はありません。
陰謀を企みながらも、一方で爵位を欲しがる俗物っぽさが、貫録を弱めているように思えます。
女の子達に催眠術をかけたり、一人だけボブスレーで逃げたり、小悪党っぽささえ感じさせるのは如何なものか。
ま、そんな所も楽しいのですが。

あと、ボンドの秘書が代わった事も、なにげに重要です(個人的に)。
長年、秘書を務めたローリア・ポンソンビー嬢が寿退社したとの事で、新しくメアリー・グッドナイト嬢がボンドの秘書に。
映画と違い有能で(笑)、快活な雰囲気が可愛くて魅力的です。
ポンソンビー嬢のお堅い所も好きだったんですけどね。

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