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秋山草堂〇〇七部屋・小説「わたしを愛したスパイ」

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わたしを愛したスパイ

1962年度作品
イアン・フレミング著

あらすじ

わたし……ヴィヴィエンヌ・ミシェルは、あらゆるものから逃げ出してきた。
イギリスから。自分の少女時代から。世間知らずの生娘だったわたしを女に変えた男たちから。
そして辿り着いたアメリカの安モーテルで、わたしは獣のような男たちに狙われる羽目になってしまった。
しかし、追いつめられ絶体絶命のわたしの前に、あの人は現れた……。

解説

原作第10作。
シリーズで唯一、一人称で語られる異色作です。
主人公は、語り手であるヴィヴィエンヌ・ミシェル(ヴィヴ)で、我らがボンドは物語の中盤を過ぎてからやっと登場する脇役になっています。
女性が性体験を語ると言うポルノチックな内容を含んでいる為か、作者フレミングはこの作品を気に入ってなかったらしく、映画化に際して「タイトル以外は使うな」と言ったらしいのですが、なかなかどうしてこの作品、傑作だと思います。
平凡な一人の女性の視点でボンドや悪党を描く事で、如何にボンド達が現実離れした特殊な世界で生きているのかを浮き彫りにさせ、同時にリアリティを出す事にも成功しています。

ヒロインのヴィヴもセクシーでいいですね。
節度と冒険心、気丈さと弱さを合わせ持ち、ヒロインとしてとても魅力的です。
恐ろしい一夜の出来事と決別し、自分を救ってくれた一人のスパイの事を胸に秘めながら、また平凡で自由な日常に戻って行くラストシーンがとても印象的です。

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