ロシアから愛をこめて
1957年度作品
イアン・フレミング著
ソ連国家保安省の公式殺人機関スメルシュは、西側諸国の諜報機関に大打撃を与える作戦を計画していた。
西側の英雄的スパイを、醜聞に塗れさせた上で殺害しようというのだ。
そして、その計画の生贄に選ばれたのは、他でもないジェームズ・ボンドだった……。
原作第5作。
開巻100ページほどを費やして、ソ連側の人物紹介と今回の作戦に至る経緯が詳細に描写され、主人公が全く登場しないにも係わらず、徐々に舞台が出来上がっていく期待感と緊張感が見事です。
むしろ、ボンドが登場してからの方が緊張感が薄いのがなんとも(笑)。
しかし、この大胆な構成を見るに、このころのフレミングってよほど調子に乗ってたんでしょうな(良い意味で)。
登場人物も魅力的です。
ことあるごとに顔を真っ赤にして恥ずかしがるタチアナの純朴っぷりが、どこの萌えキャラだと突っ込みたくなる可愛いさです。
ダーコ・ケリムの傑物っぷり、ローザ・クレッブの醜悪さ、レッド・グラントの狂気。
皆、キャラが立っていて申し分なしです。
ただ、映画版の雰囲気&キャストが良かった為、読んでいて映画版のイメージについつい引きずられてしまいました。
ケリムも小説では大柄でボンドより背が高い筋肉質な男に描かれていますが、どうしてもペドロ・アルメンダリスの姿が浮かんでしまって(笑)。