ムーンレイカー
1955年度作品
イアン・フレミング著
イギリスの国民的英雄ヒュ−ゴ・ドラックス卿が国家に寄贈する超大型原爆ロケット、ムーンレイカー。
今や英国中がその話題で持ちきりだった。
そんなある日、ムーンレイカー基地の保安係が謎の死をとげた。
後任の保安係として基地に派遣されたボンドは、恐るべき陰謀に巻き込まれていく……。
珍しく全編イギリス国内だけで物語が展開する第三作。
MI6本部の様子が詳細に描写される冒頭から、全編に渡ってじっくりペースのこの作品ですが、そんな地味さが私は大好きです。
誰が何の目的でどんな陰謀を企んでいるのか、そもそも陰謀があるのかさえ分からない状況で、ほんのわずかな手掛かりを元にロケット基地の陰謀を探るボンド。
数日後に迫ったロケットの発射実験に英国中が注目していると言う状況と、序盤で示されるドラックスの異常な性格が、時限爆弾のカウントダウンのように物語に緊迫感を与えています。
物語前半のブレイズ・クラブでのブリッジ対決が素晴らしく、イカサマを使うドラックスをボンドが同じくイカサマでやり込めるシチュエーションが痛快です。
プライベートでのMとボンドのやり取りも魅力的です。
ネタバレになるので具体的には書きませんが、ラストシーンのボンドとガーラもイイですね。
007シリーズでは珍しい展開ですが、余韻があって印象深いラストシーンだと思います。
ただ、核爆発が……放射能が……(苦笑)。