ホーム〇〇七部屋 > 映画「スカイフォール」

秋山草堂〇〇七部屋・映画「スカイフォール」

DATA

スカイフォール

2012年度作品
監督 サム・メンデス
脚色 ニール・パーヴィス
   ロバート・ウェイド
   ジョン・ローガン
音楽 トーマス・ニューマン
主題歌「SKYFALL」アデル

出演
ジェームズ・ボンド
 …ダニエル・クレイグ

 …ジュディ・デンチ
シルヴァ
 …ハビエル・バルデム
ギャレス・マロリー
 …レイフ・ファインズ
イヴ
 …ナオミ・ハリス
セヴリン
 …ベレニス・マーロウ
キンケイド
 …アルバート・フィニー

 …ベン・ウィショー
ビル・タナー
 …ローリー・キニア
パトリス
 …オラ・ラパス
クレア・ダワー議員
 …ヘレン・マックロリー

あらすじ

テロ組織に潜入しているNATO情報部員のリストが奪われた。
リスト奪還の任務中、ボンドは仲間の誤射により重傷を負い行方不明になってしまう。
一方、ロンドンではMI6本部が爆破され、Mに脅迫めいたメッセージが届いた。
謎の敵による復讐が始まったのだ。
奇跡的に命をとりとめていたボンドは、MI6に復帰。
敵を追って上海に飛んだ……。

解説

シリーズ23作目。
ダニエル・クレイグのボンドとしては、三作目になります。
クレイグのボンド作品は、毎度毎度物議を醸すといいますか、賛否両論巻き起こす作品ばかりなのですが、今作は6:4か7:3で“賛”の方が多い様な印象。
「とにかく完璧な映画」と大絶賛の声が多く聞こえてくる一方で、「コレジャナイ」という意見も少なくない作品です。
私個人的には「コレジャナイ」の方だったりするのですが(笑)。

【注意! 以下、重要なネタバレを含みます!】
「007らしさ」や「007に求める物」って、007ファンが100人いれば100種類の「007像」があるんじゃないかと思えるほど、人それぞれだと思うのですよ。
原作も含めれば60年の長きに渡って、様々なスタッフや役者の手で様々なテイストの作品が作られてきて、何か最大公約数的な007像というものはあっても、その共通している部分って意外と少ないんじゃないかと。
これが「男はつらいよ」シリーズなら、ファンがイメージする所に大差は無いと思うのですが、007は違う。
この「007に求める物」の差違が、この作品に対する評価の、一番大きな分かれ目になっているんじゃないかと思うのです。

「007らしさ」って色々あると思うのですが、例えばアストン・マーティンDB5だったり、気の利いたジョークだったり、Qの秘密道具や「ボンド、ジェームズ・ボンド」の名乗り等の小ネタというかフレーバーてのも代表的な物だと思うんです。
で、スカイフォールには、そのあたりのフレーバーは結構あって、普通それだけで嬉しくなってしまったり、盛り上がったりしてくる物なのでしょうが、個人的には全然盛り上がれなかった。
何で盛り上がれなかったのかと言えば、物語が「007」らしくなかったから。
「007」らしくない深刻な物語の上で、そのような「007」らしいフレーバーが浮いていたように感じられたのです。
(余談ですが、物語は「007」の範疇だけど、フレーバーから「007」らしさを削ぎ落とした前作『慰めの報酬』とは対照的だと思います。)

あと、ダニエル・クレイグのボンドについての違和感がありました。
念のため書いておきますが、前作と前々作のクレイグ=ボンドは大好きです。
歴代のボンドの中でも、一番のお気に入りと言っても良いくらい。
では、この作品のボンドのどこに違和感を感じたのかと言えば、前作までは、00に昇格したてのまだ若いボンドだったのが、今作ではいきなりロートル扱いされている事に馴染めなかった事が1つ。
なんとか頭を切り替えて前作とは切り離して考えてみても、結局は今作のボンド像に前二作ほどの魅力が感じられない。

それに、この物語のボンドは、ピアース・ブロスナンであるべきだって、どうしても思っちゃうんですよね。
ジュディ・デンチのMが初めて登場したり、ボンドが自身の分身ともいうべき元諜報部員と対決した『ゴールデンアイ』や、Mが過去に復讐される『ワールド・イズ・ノット・イナフ』、それに何ヶ月にも渡ってボンドが敵に捕らえられる『ダイ・アナザー・デイ』など、ブロスナン作品には今作との共通点が沢山あり、今のブロスナンならロートル呼ばわりされるボンドにもピッタリはまっていただろうと思えるのですよ。
それに、敵に捕らえられMに見捨てられそうになったという同じ経験を通して、正義の側に“レザレクション”出来たボンドと、“レザレクション”出来ずに怨霊となってしまったシルヴァという具合に、二人の対比もより際立ったのではないかと。
ま、これは言っても仕方のない事ですが(笑)

で、上記のような不満点があったとしても、土台となる物語が面白ければ(たとえ「007」らしくない物語だったとしても)、それなりに満足は出来たと思うのですが、個人的には物語にも満足が出来なかった。
テーマ的な部分は、あれはあれで別にいいと思うんです。面白く作ってくれれば。
でも、物語が全然面白くない。
シルヴァはただの逆恨みだし、シルヴァの計画通りに物事が進むあたりもシルヴァの頭が良いと言うより御都合主義にしか見えないし、Qはとんでもないヘマやらかすし。
なんか、こんなのでジュディ・デンチ退場とか言われても、余りスッキリはしませんわな。
まあ、ツッコミどころのある脚本って、007らしいと言えばらしいのですが、ここまでシリアスなお話だと、粗がどうにも目立ってしまいます。

と、まあ、一通り不満点をぶちまけましたが、役者さん達はみんな良かった!
まず、違和感があるとは書きましたが、それでも格好良いダニエル・クレイグ。
あと二作はボンドを演じると言ってくれていますが、それが実現する事を祈ってます(ダルトンの時みたいにならないように)。
シルヴァも脚本的にはそれほど魅力的ではありませんでしたが、役者さんの演技的にはなかなか魅力的だったと思います。
あと、新Qもキャラクター的には面白かったと思います。
美術館でのボンドとの会話とかすごく良かったんですけどね。
シルヴァのパソコンをMI6のシステムに繋いじゃって案の定システムハックされる展開には呆れ返りましたが。
「くそっ」じゃねーよ(笑)
あれ、Mが死んだのQの責任ですよね(笑)
で、そのMというかジュディ・デンチですが、これで最後と思うと寂しい物がありますな。
ブロスナン時代は、正直あまり良いとは思えなかったのですが、クレイグに代わってからのデンチ=Mは、格段に存在感を増していて良かったと思います。
あと、マロリーは良かったですな。
上手い描かれ方だったと思います。

まあ、そんな感じで個人的にはあまり納得出来ない作品でした。
ただ、良かった所もあるし、こういったチャレンジ自体は良い事だと思うので、この作品の成果が以降の作品につながればいいんじゃないかと思います。
仕切り直しはもういいから、次こそ本編と言えるような作品を、是非。
と言うか、次こそクォンタム出して!

TOPページに戻る / 「〇〇七部屋」に戻る