慰めの報酬
2008年度作品
監督 マーク・フォースター
脚色 ポール・ハギス
ニール・パーヴィス
ロバート・ウェイド
音楽 デヴィッド・アーノルド
主題歌「Another Way To Die」アリシア・キーズ&ジャック・ホワイト
出演
ジェームズ・ボンド
…ダニエル・クレイグ
カミーユ
…オルガ・キュリレンコ
ドミニク・グリーン
…マチュー・アマルリック
M
…ジュディ・デンチ
ルネ・マチス
…ジャンカルロ・ジャンニーニ
ストロベリー・フィールズ
…ジェマ・アータートン
フェリックス・ライター
…ジェフリー・ライト
グレゴリー・ビーム
…デヴィッド・ハーバー
ミスター・ホワイト
…イェスパー・クリステンセン
エルヴィス
…アナトール・トーブマン
ビル・タナー
…ローリー・キニア
メドラーノ将軍
…ホアキン・コシオ
「カジノ・ロワイヤル」の物語から1時間後。
ヴェスパーを陰で操っていた組織の一員、ミスター・ホワイトの身柄を確保したボンド。
しかし、MI6内に潜入していた裏切者の手によって、ホワイトは行方をくらましてしまう。
裏切者が所持していた紙幣から手掛かりを掴んだMI6は、ボンドをハイチに送るが……。
シリーズ22作目。
前作「カジノ・ロワイヤル」のラストシーンから物語が直接繋がる、シリーズ初の続編となっています。
「前回のあらすじ」的な説明も一切無く、「カジノ・ロワイヤル」の物語が頭に入っている事前提で話が進むので、未見の方は御注意を。
前作でも、映画007シリーズの定番要素(マニーペニーやQ等)をかなり排除していたのですが、今作はそれ以上で、「ボンド。ジェームズ・ボンド」言わない、「シェイクン。ノット・ステア」言わない、ガンバレル・シークエンスも一番最後、前作同様マニーペニーやQも出ない、代わりにビル・タナーは出るよ、ってタナーが出て喜ぶのは原作ファンだけでしょうけど(笑)。
そんな感じで、映画007シリーズのお約束世界を愛する方々の中には、今作を受け入れられない方も少なからずおられるようですが、個人的にはフレミングの原作小説と映画シリーズをひっくるめたのが「007」ってイメージなので、前作同様原作の雰囲気に近い今作も全然アリな訳です。
物語的にも今までに無い要素が多く、例えば、以前の映画007シリーズなら基本的に善と悪は明確に区別され、裏切者がいてもそれは「善を装った悪」という単純な存在だったのですが、今作では善と悪の境界が曖昧で、善悪よりも利害が優先される、より現実的な世界として描かれている点が挙げられます。
その結果、あらゆる所に敵がいる「後ろにも気をつけろ」状態で、敵組織の手強さはスペクターの比じゃないんですが、だからこそ独断専行、首輪の外れた猟犬の様なクレイグ・ボンドの殺し屋的性格が活きてくるって事なのでしょう。
他にも、ボンドの目的があくまで敵組織の情報を得る事であって、敵の計画を阻止する事はついでと言うか結果的にそうなっただけ、ってのも今までに無かったのではないでしょうか。
あと、ヒロイン(カミーユ)とベッドを供にしなかったのもシリーズ初でしょうなあ(原作ではありましたが)。
「女王陛下の007」と「カジノ・ロワイヤル」のヒロインが死んでしまっている二作は別として、ラストがヒロインとイチャイチャしてるシーンで終わらないのも初めてですね。
そういう意味では、Mとボンドのシーンで終わるというのも、今作の実質上のヒロインはMと言えるのかも知れませんな。
キャストもいいです。
何と言ってもダニエル・クレイグが格好良過ぎます。
人を殺すシーンの冷酷な表情とかゾクゾクしますね!
任務の面では四面楚歌状態でも揺らぐ事なくひたすらに敵を追いつめていく強さを見せる一方で、ヴェスパーの事をずっと引きずり続けている人間臭さがあるのも、クレイグ=ボンドの魅力だと思います。
カミーユ役のオルガ・キュリレンコもいいですね。
日本人好みで個人的にも好みのルックスなんですが、少女っぽさと女らしさを合わせ持っていて役柄にも合っていたと思います。
その他のキャストもみんな良いのですが、やはりマチス役のジャンカルロ・ジャンニーニの渋さが良いですねー。
前作以上に可哀相な結末もまた……。
あと、何気に生き残っているミスター・ホワイトもいい感じで、クォンタムの幹部としてこのままレギュラー出演して欲しいですな。
多少強引な所があるのも確かだし、お約束排除とかアクの強さで合わない人が多いのも仕方ないかなとも思います。
でも、カット、シーン、ダイアログ全ての点で無駄という無駄を削ぎ落としたストイックな作風と、渋い色使いの美術と映像、そして超ハードボイルドな物語に、個人的には大満足な作品でした。
それこそ、「こんな007が見たかった!」とさえ思ったほど。
トスカのシーンの格好良い事と言ったら!!